実はすごかった…、Googleマーチャントセンター!当たり前に使っているけど、考えつくされた結果なんです

皆さんこんにちは。コマースにまつわるあれこれを紹介するPodcast「コマースわいわいワイド」を配信している井谷です。本コラムでは、これまでの配信で好評だったテーマをダイジェストでご紹介していきます。

本日はEC担当者ならば皆さんご存じの「Googleマーチャントセンター(以下、GMC)」をテーマにしてみようと思います。

「GMCは普段から運用しているから、使い方は知っているよ」という方も多いと思いますし、今ではEコマースにおいて当たり前のように活用されているのですが、現在の仕組みに至るまでにGoogleのさまざまな模索があったことは、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。今日は「GMCができるまで」と「現在のGMCの何がすごいのか」についてお話していきます。

Googleの商品検索エンジンの歴史は2002年、Froogleから始まった

GMCはGoogleが提供するオンラインショッピングのための商品情報データベースで、商品情報を登録(アップロード)しておくことでユーザーが検索結果から商品ページにアクセスし、購入するための仕組みです。データが構造化されていることで商品情報管理が簡易になり、在庫や価格の更新もリアルタイムで反映されます。

Googleマーチャントセンター
https://www.google.com/intl/ja_jp/retail/solutions/merchant-center/

今では当たり前のこの仕組みですが、Googleが2002年に初めて作った商品検索エンジン「Froogle」は全く異なる仕組みで商品情報を収集していました。、事業者に商品をアップロードさせるのではなく、Google側がクローリングしてインデックスすることで情報を取ってくるという形だったのです。

Froogleのページキャプチャ

約2年間のベータ版運用ののち「Froogle」は放置され、その後2007年に「Google Product Search」がリリースされますが、こちらも「Froogle」と同じGoogleが情報を取りに行く形式でした。

その後、2010年に「Google Shopping」へとリニューアルされた際に、ユーザーにアップロードさせる形式へと大転換が図られ、アップロード先のデータベースとして同時にGMCもリリースされ現在の形に至ります。

なぜGoogleは商品検索エンジンの確立に手こずったのか

① 商品データの収集方法の違い

「Froogle」と「Google Product Search」が失敗し、「Google Shopping」が成功した理由とも言い換えられますが、その大きな理由として前述した商品データの収集方法の違いが挙げられます。

「Froogle」や「Google Product Search」で利用されていたクロール型の情報収集モデルは、リアルタイム性が求められるショッピングの場合、以下の点でうまく作用させられなかったのです。

  • 審査
  • 名寄せ
  • 更新
  • 比較
  • 評価

上記モデルだとサイトの情報を更新するタイミングとGoogleが巡回するタイミングがズレる場合があります。例えば、通常価格で掲載しているタイミングでGoogleが巡回し、その直後にセールを開催した場合にサイト上では価格が下がっているにも関わらず、Google上ではショッピング枠に通常価格で表示されてしまう、というズレが生じてしまいます。

更新がズレるから評価もできず、ユーザーは情報精度を信用できないから他商品と比較できないという状態です。

また商品画像に関しても、サイト内には商品画像以外にもさまざまな画像があるので、どの画像が商品画像なのかをGoogle側は判別できません。判別できないから名寄せもできず、審査のしようがありません。

価格や画像以外の部分でもこのような問題が発生していたため、クロール型では商品情報の信頼性が担保しづらい状態でした。そこで発想の転換を図り「Google Shopping」ではユーザーアップロード型に切り替えたことで上記5つの課題がクリアされ、信頼性の高いショッピング体験が可能となったのです。

② Googleエコシステムとのブレンド

何かのサービスを普及させるためには、まずユーザーにそのサービスを認知してもらい、定着化させる必要があります。これはGoogleのサービスも同様で、「Froogle」や「Google Product Search」はGoogle検索とは別のサービスとして作られていたため、ユーザーが馴染みにくい状況でした。

一方「Google Shopping」はGoogleの検索画面上のユニバーサルサーチに組み込まれ、ブレンドされることで、Google MapやGoogle イメージとも連動しています。そのため「ユーザーが検索行動を起こす→Googleエコシステム内のいずれかでGoogle Shoppingタブに気付く」というように、ユーザーの検索~購買の一連の流れの中で非常にスムーズに馴染んだという点も「Google Shopping」が飛躍した要因の一つだと思われます。

※ユニバーサルサーチは2007年より段階的に提供が開始されました。以下のキャプチャの黄色線部分のような枠のことを指します。

デファクト化したGMC

Google Shoppingの登場以降、構造化された商品情報をデータベースにアップロードするという方法が主流になり、審査や名寄せといった行為が可能になったことで商品情報の精度と信頼性が飛躍的に向上したのです。

それを受けて、2010年のGoogle Shopping登場から1年後の2011年より商品リスト広告もリリースされ、日本では2012年より広告出稿が可能となりました。

また、CriteoやMicrosoftはGoogleのデータベーススキーマと全く同じ構造をしており、GMCがデファクト化したことで複数媒体を運用する場合の運用者の負担が軽くなりました。

さらにGoogleは自社では購買データを持っていませんが、2020年以降はGoogleはほとんどのコマースプラットフォームと提携しているため、商品データと購買データの紐づけも容易に。これもGMCがデファクト化したがゆえ成し得たことです。

普段は何気なく利用しているGoogle マーチャントセンターですが、実は何気にスゴイ試行錯誤と、その末のスゴイ仕組みの上に成り立っているのです。

より詳細な内容はブログ「コマースわいわいワイド」にて記事やPodcastで語っているので、ぜひ読んでみてくださいね。

【コマースわいわいワイド】
https://note.com/commerce_waiwai/

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