Amazon vs Walmart、アメリカ越境ECで売上を伸ばすなら?

日本からWalmart出店への軌跡

今回の投稿では、現在のUS向け越境ECにおいて、世界中で非常に熱い議論をされているAmazon vs Walmartについて少し解説をさせていただきます。

2022年8月、株式会社Wave CorporationのブランドであるSpa Treatmentが、当社経由で日本のブランドとしては初めてWalmartでの出店を開始しました。その後いくつかの国内ブランドが当社経由でWalmartへの出品をします。当社以外では、いくつかの国内販売店がWalmartへ出店をしていると聞いています。

Amazonの広告費が高騰!新しい販路へ

Amazonと異なりWalmartへ出品をするには、非常に高いハードルがありました。当社がWalmartと交渉を始めた2021年12月時点では、Walmartへ出店できる海外セラーは中国、インド、香港、そしてUKの一部のみからが許可された地域となっており、現地法人を持たない日本のセラーがWalmartへ出店することは許可されておりませんでした。

正直、日本のブランドにとって、アマゾンアメリカで各国から出店されているセラーと戦っていくことは簡単ではなく、価格競争はもちろん、カスタマーサービス、アマゾン外部でのリスティング広告、ソーシャルネットワークやインフルエンサーを活用したブランディング、返品対応などやらなければいけないことは多数です。その中で、Amazonのスポンサードプロダクト広告の入札単価は高騰し、CPCを+30%上げても、CVRは+30%改善しないといった、利益という観点からは、先の見えない洞窟に彷徨い込むような感覚です。

もちろんそこでもチャレンジを継続する必要はあるのですが、ブランドの立場からすると、リスクも大きいのは間違いなく、そこで2021年10月頃に浮上したのが、Amazon以外でも販売をしていくというもので、当社も2021年10月からWalmartへの出品をするための調査を開始しました。

Walmart幹部への直談判で出店許可へ

実はこの10月に調査を開始した最初の2週間で、Walmartへの出品は早速暗礁に乗り上げました。それまでWalmartから出ていた海外からの出品に関する記事は、英語と中国語で書かれたものしかなく、当社でそれらの記事を読み漁りました。

Walmartへの出品の方法を十分理解し、早速出品の手続きを開始したのですが、どうしてもシステムの問題で前に進めない。ガイドライン通りにやっても先に進めないことがあり、Walmartへ問い合わせをしたところ、「日本からの出品は許可されていない。ガイドラインも日本からの出品を視野に入れたものではなく、日本からの出品は現時点では一切受け付けていない」という回答。

相手はここ数十年世界一の座に君臨してきていた大企業。我々のような外部の、日本の小さな会社からのお願いで、ルールを変えることなどは不可能なので、実は僕自身はすぐに諦めようと言いました。

しかしながら、これまで多くの記事を読んでいたProject Managerは、Walmartはアマゾンへの対抗心が高く、また中国と香港を許可しているのであれば、中国で非常に人気である日本の商品が許可されないことはおかしいという判断でWalmartの回答には納得せず、直接Walmartの幹部に交渉を開始しました(※どうやってコンタクトしたかは記載しませんが、まぁかなり泥臭い、昭和の日本的なやり方です)

いろいろな方々を通じて、ようやくある程度責任のあるポジションの方にたどり着いた結果、なんとその担当者も同じ国の出身でアメリカに在住していることがわかり、当社のPeoject Managerと意気投合。また、実は某企業経由でもう少し上のレイヤーで日本からの出品のテストをしても良いのではないかという議論がなされていたということもあり、結果、なし崩し的に当社経由で日本からの出店も許可されたという、何とも強引且つ運とタイミングの良さによって、急加速で日本からの出店も許可されたという背景があります。

少し当社の話が長くなってしまいました。

Amazon vs Walmart、今から挑戦するなら?

未経験では難しいアメリカアマゾンの現実

さて、先に記載した通り、アメリカアマゾンで他セラーと戦うには体力(資本力)、知恵、経験、我慢強さの全てが必要です。最近サッカーのワールドカップが開催されていますが、個人的な感覚としては、そのチーム戦といったような感覚や、毎日の緊張感はそのような感じです。

また、これはどこまで記載して良いかわからないのですが、アメリカアマゾンのテクニカルサポートといったら、本当にいろいろありまして。。。内部を知っている我々からすると、絶対に間違えているアナウンスを平気でしてきます。それは、審判が後ろからスライディングをしてくるような感覚。そして我々が審判に文句を言おうものなら、その審判はすぐにレッドカードに手をかざすような感覚。。。←これはわかる人にはわかると思います。

そんな中で、最も効果が高いといわれるスポンサープロダクト広告の入札単価はカテゴリーやキーワードによっては想像の遥か上を行きます。例えば2022年のサイバーマンデーのシーズンで、最も競争が激しいスキンケアカテゴリーで、その中でも最も検索ボリュームの大きいキーワードの入札推奨単価は38 USDです。商品の販売価格は30 USD。商品販売価格より、1クリックの入札単価の方が高い状態です。

どうやれば、その市場でTotal AcoS(広告費売上高比率) 10%以下を維持できるのでしょう。。。(※最近UKの提携会社と会話していますが、USでのTotal ACoSの目標は 20%にしているとのことです)

再度ですが、経験が少ない中で、アマゾンアメリカに飛び込むのはおすすめしません。当社へご依頼いただくケースの多くは、「自分達でやってみたけど、全く前に進まない」「他の方にアドバイスをもらいながらやってみたが、全く上手く行かない」というケースが非常に多いです。

規模は小さいが伸びしろが大きいWalmart

さて、上記とは異なり、Walmartはどうでしょうか。感覚的には天使です。Walmartはまだまだこれからセラーを獲得しなければいけない状態ですので、何もかもサポーティブです。わからないことがあればすぐに回答を探してくれますし、内部で交渉もしてくれます。

ただし、Walmartで難しいのは、Amazonと比較するとTraffic量はまだまだ低く、体感的には10分の1程度というところで、構築できる売上もまだまだ低く、こちらもAmazonの10分の1といったところでしょうか。Walmartに出品してすぐにトップラインを大きく上げるのは、簡単ではないです。

ここで忘れていてはいけない非常に重要なことは、USで中長期的にビジネスを展開し、売上を上げていくためにアクションを開始するべきタイミングかと思います。

例えばここ数年で日本国内でも非常に有名になったブランドを見ると、10年以上前に、まだまだAmazonの知名度はそこまで高くなく、かつ家電カテゴリーでは東芝やシャープといった国内ブランドが圧倒的な力を持っていた時代に、そのカテゴリーでアマゾンジャパンに大きな投資を行っていることがわかります。

現在では日本国内ではAmazon以外に楽天市場はもちろん、自社路面店も多数持っている家電ブランドや、最近日本の企業が買収したアメリカのブランドも、同様にAmazonの創世記にAmazonに投資をしてきました。

WalmartはまだまだAmazonと比較すると小さいです。ただし、Walmartの成長スピードは圧倒的です。例えば、2022年のWalmartのオンラインの売上着地予測は47.8 Bil USDと、コロナの影響で非常にECの売上が伸びたといわれた2020年の約2倍に成長しています。また、もちろんブランドも自社で成長の努力をする必要はありますが、Walmart自体もECシステムや、新しい広告プログラムに莫大な金額の投資をしています。

WalmartもAmazon同様、WFSと呼ばれるフルフィルメントサービスがあるので、指定の倉庫に在庫を送ればWalmartが商品の発送を代行してくれます。

広告もどんどん多様になってきており、Amazon同様スポンサードプロダクト広告が存在しています。なお、上記のAmazonのカテゴリーで同じキーワードへの入札単価は、2 USD ~ 3 USDで、一般的なキーワードであれば、50セント ~ 1 USDの間といったイメージです。(もちろん、今後それが上がらないとは言いませんが)

アジアに積極投資!Walmartに挑戦するなら今がチャンスか

先日WalmartのVice Presidentが来日し、日本のセラー並びにUS越境ECに関しての意見交換をしました。日本からみたアマゾンアメリカのポジショニングや役割、Walmartに対して今後期待したいこと、非常に真剣に聞いていただき、多数の質問もいただき、Walmartの本気度が伝わってきました。

今後アジアに関していえば、現在インドと中国を中心にセラーとして出品できる対象国を広げており、現在は日本と韓国、そして今後はシンガポールや台湾、マレーシアなどと、どんどん拡大をしていくとのことです。また、中国にはセラーを誘致するために180人のWalmart社員を採用し、今後日本においても、すでに提携している楽天グループや、我々のような代理店なども含めて、日本のセラーを獲得していくための戦略を決定し、具体的に行動をしてくとのことです。

また、非常に魅力的な点としては、仮にWalmartのオンラインで商品が注目されれば、アメリカ全土に広がるオフライン店舗に一気に拡大する機会は十分にあるという点です。

Walmartに出店しても、今すぐに大きな売上を期待することは困難かもしれません。ただし、5年後、10年後を見据えた際に、現時点からWalmartを勉強しておくことは非常に期待できる投資かと考えます。

アマゾンアメリカ越境EC、Walmart越境ECにご興味がある方は、こちらよりいつでもご連絡いただければと思います。

また、Walmart越境ECに関してのより詳しい情報は、以下の当社のブログにありますので、こちらもご参照いただければと思います。
https://www.picaro.co.jp/blog-tags/walmart

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