
2022年10月20日(木)、EC領域支援のワンストップサービスを提供する株式会社CARTA COMMUNICATIONS(CCI)が、10月12日にリニューアルした新生「Yahoo!ショッピング」に関するセミナーを開催しました。本セミナーでは、ヤフー株式会社より新生Yahoo!ショッピングに関わる二名が登壇し、リニューアルの経緯と今後の展開、出店者、特にメーカー公式店が今後どのようにYahoo!ショッピングを活用していけるのかが解説されました。本記事では、第2部の「最新メーカー販促トレンド 新生Yaho!ショッピングでの勝ち方」を紹介します。
第1部の「ヤフーコマース領域の概況と新生Yahoo!ショッピングについて」は、下記からご覧ください。
https://www.commercepick.com/archives/26578
▼セミナーのアーカイブ動画はこちら
https://www.commercepick.com/archives/26882
【登壇者】
吉野 開さん
ヤフー株式会社
コマースグループショッピング統括本部営業1本部
フードカテゴリ部飲食・食材兼務
セールスストラテジー本部コマース広告営業部カテゴリ営業
竹内 寛明さん
株式会社CARTA COMMUNICATIONS
メディアソリューション・ディビジョン
Commerce Containerチーム
新生Yahoo!ショッピング主な変更点と強化ポイント
リニューアル後のコンディション

吉野さん(ヤフー):リニューアル後、平日のGMV(流通取引総額)が好調に進捗しています。また、「還元率がわかりやすい」「トップページを見やすい」というポジティブな声を頂いています。
竹内さん(CCI):リニューアルにより、同じスタートラインに立てるところもあり、新規参入しやすいタイミングのように思います。
吉野さん:これまでの良いところを残しつつ新しいモールを立ち上げたような形ですので、ぜひ新しい機能や販促をご活用いただいて、新規参入の機会としていただきたいです。
ポイントルールの変更

吉野さん:ポイントルールの変更により、新生Yahoo!ショッピングでは、誰でもPayPayで支払うと毎日5%還元、プレミアム会員なら毎日2%還元となっています。
竹内さん:これまでと比較すると、一見還元率が減ったようにも思われるかもしれないのですが、ユーザーメリットとしてはどのような点があるでしょうか。
吉野さん:ルールがシンプルにわかりやすくなった点が大きいと考えています。これまでは、どうしたら最大倍率になるのかわかりづらいというネガティブな意見もありましたが、リニューアルにより、毎日お得でより買い物がしやすい環境にアップデートされました。
竹内さん:今後、どのような変化を見込まれていますか?
吉野さん:いつでもお得なモールになったことで、お得な日まで購入を待つ必要がなくなりました。特に、購入サイクルが短い日用品など、ほしいときにすぐほしい需要を取り込めるよう強化していきたいです。
お買い物体験の向上のために何をするか:物流強化

吉野さん:優良配送に関するユーザーアンケートでは、今後も使いたいというお客様が8割ほどとなっており、満足度が高いサービスとなっています。
竹内さん:ストアとしては、優良配送への新たな対応が必要になってくるわけですが、そうするだけのストア側のメリットはどのような点でしょうか?
吉野さん:優良配送は、売上を上げるための重要なポイントです。モールとしては、優良配送によりモールの満足度を高め、購買の継続率や頻度を高めていきたいと考えています。そのために、優良配送の商品が売れるような施策を強化していく方針です。現在、優良配送の商品は売り場で優先して表示されていますが、検索結果やレコメンド枠での優先表示なども検討しています。
お買い物体験の向上のために何をするか:UI改善

吉野さん:新生Yahoo!ショッピングでは、探しやすく買いやすい、お得な商品がわかりやすく安心して購入できる、そして迷わないシンプルなサイト作りを目指しています。
竹内さん:率直に伺いますと、リニューアル後、検索表示に優良店舗バッジが表示されなくなったことが指摘されることもあるかと思います。この点はいかがでしょうか?
吉野さん:その点は多方面からお声をいただいています。現状がゴールではなく、今後のユーザーの動きや数字を見ながら、日々アップデートを行い、改善を続けたいと考えています。
竹内さん:リニューアルにより、検索から商品ページへの導線が主流となり、ストアトップやイベントページなどへの回遊対策がストアにより求められるように感じます。この点はどのように対策が考えられますか?
吉野さん:これまでと同様、トップページでのイベント情報や販促情報の掲載は、回遊対策として有効です。また、商品ページで商品のバリエーションを見せることも効果があると思われます。レコメンドやバナー設置なども引き続き重要な施策です。
プロモーションパッケージに関して
竹内さん:今回のリニューアルに伴い、新たな販促オプションがスタートしました。これらはダッシュボードでご確認いただけますが、変更点や概要について改めてお教えください。
吉野さん:新たな販促オプションは、出店者様の集客アップおよび販売活動サポートのためのものです。すべての出店者様にご利用いただくことができ、検索での露出アップやデータ提供、販促支援などの特典があります。費用は出店者様の売上から3%の相殺となります。

竹内さん:プロモーションパッケージの機能の注目点として、拡充された統計情報を取得できる点があげられます。
吉野さん:こちらの機能では、データ分析の最新情報をいつでも確認できます。たとえば、取扱商品軸では、価格や流出、競合情報をリアルタイムで確認できます。
竹内さん:競合情報ではどのようなレポートをチェックできますか?
吉野さん:モール内カテゴリ別商品/製品ランキングレポートから、商品軸でブランド・カテゴリを選択していただくと、調査が可能です。
LINEのOne-IDに関して
吉野さん:LINE IDとの連携により、今後、ヤフーとPayPayとLINEのユーザーをひとつのIDに集約できるようになり、マーケティングでできることが広がる見込みです。
竹内さん:特に注目すべき施策領域は何でしょうか?
吉野さん:CRMの領域と考えています。ヤフーまたはPayPayのキャンペーンで獲得したユーザーに対してLINEで継続的にアプローチすることが可能になります。フロー型で新規獲得、ストック型でリマーケティングという、グループシナジーを活用した他社ではできない施策の形が可能になるでしょう。
メーカー販促における押さえるべきポイント
ヤフーの特徴/新生Yahoo!ショッピングにおける今後のイベント
吉野さん:直近のイベントはリニューアル後も例年通り開催予定です。11月に超PayPay祭、12月に年末大感謝祭を予定しています。
竹内さん:ポイントルール変更によるイベント・セール方針の変更はありますか?
吉野さん:セールの大方針はこれまで通りで、変更はありません。グループのアセットを最大限活用した新規獲得や既存顧客へのアテンションを行えるよう、セールに向けた準備を行っていただきたいです。モールに常に人がいる状況になっておりますので、各ストアにおける施策が重要になってきます。
竹内さん:一方で、これまでストアの施策がイベントに依存していた部分もあるかと思うのですが、その流れに変化はありますか?
吉野さん:実は、年末以降のスケジュールはまだ見えていません。モール全体の方向性としては、定期的に山を作るよりも、お客様が買いたいときに常にお得にお買い物ができる、生活に寄り添った施策を目指していいます。今後、買い回りなども検討しています。
Yahoo!ショッピングにおけるメーカーの販路

吉野さん:Yahoo!ショッピングにおいても、公式店に注力いただいているメーカー様は増えており、取扱金額・広告売上ともにモール全体で高い推移となっています。
竹内さん:モールとしてはどのような点に注力していますか?
吉野さん:Yahoo!ショッピングとしては、安心安全にご購入いただける商品の取り扱いが増えるのは嬉しいことです。よりメーカー様にご活用いただけるプロダクトや販促のリリースに注力しています。

吉野さん:Yahoo!ショッピングの公式店で獲得したユーザー情報は、二次利用が可能なので、本店との相互送客に活用でき、メーカー様のEC全体へ貢献できます。
Yahoo!ショッピング出店者限定のメニューとなっているのが、LINE公式アカウントです。本店とのカニバリゼーションを懸念されることもありますが、むしろ本店との相互送客につながり、Zホールディングスのユーザーを獲得できるなどメリットが多く、アカウント開設数は順調に伸びています。また、大手10社でテストマーケティングを行ったところ、開封率・CTR・CVRともに高い実績を出すこととなりました。
さらに、新生Yahoo!ショッピングでは、PayPay決済で常に5%還元となっており、PayPayユーザーに来ていただきやすい環境づくりを整えています。中長期目線でPayPayのユーザーによりご購入いただけるような施策を強化していきたいと考えています。
Yahoo!ショッピングが推進しているメーカー方針

竹内さん:Yahoo!ショッピングで公式店を運営しているメーカーの中長期的なゴールとしては、自社ストア売上、自社ブランドシェア、EC起点マーケティング・顧客育成の3つがあげられます。

吉野さん:自社ストア売上拡大で特に重要なのが、UU・CVR・顧客単価というKPI設定です。それに加え、先述の優良配送が公式店の売上を上げるために重要です。優良配送により、露出が高まり、お客様の満足度も高いのでCVRも高まる傾向にあります。そのため、優良配送についてKPIに沿った施策が必要といえるでしょう。

竹内さん:自社ブランドシェアを分析するには、データが必要になってきます。Yahoo!ショッピングとして、この点での優位性があればお教えください。
吉野さん:Yahoo!ショッピングでは、あらゆる角度からデータ提供を行い、メーカー販促にご活用いただけます。たとえば、モールにおける市場データ、カテゴリデータをはじめ、競合とのシェア推移、流入クエリの分析、LTV軸での比較など、営業担当と連携して幅広いデータをご活用いただけるようになっています。また、メーカー限定でブランドオールをご確認いただけるツールもご用意しています。

吉野さん:Yahoo!ショッピングでは、フルファネルでマーケティングのご支援が可能です。IDを通じて購買者を起点に消費活動を可視化し、購買前の行動も分析できます。直近では、そういったデータを活かしてテストマーケティングに取り組むストアも見られます。
コマース領域におけるYahoo!マーケティングの強み
吉野さん:オンラインとオフラインを統合したマーケティングをできることが、Yahoo!ショッピングの強みです。EC化が進むなかでも、現状、オフラインの購入割合が高い状況は続いています。オンラインでの計測に至らない、オフラインで進んでいる購入データもIDベースで取得して、購入者分析ができることは大きな強みです。
販促領域にしぼったプロモーション施策では、施策を実施する際に0次分析で戦略ターゲットの可視化を行い、各ファネルに適したメディアや広告プロダクトを提案しています。また、モール内でどれくらい実績が上がったかという効果検証が深くできることも、Yahoo!ショッピングの特徴です。効果検証に基づきPDCAを回し続けることで、効率的な施策の運用が可能になります。
質疑応答
Q:これまで、Yahoo!ショッピングのイベントは開催期間が長い印象でしたが、今後も同様でしょうか?
A:これまでのイベントは1ヶ月弱の開催が中心で、この方針は大きく変わりません。
開催期間が長い理由は、期間が短いとお客様の買い控えが起こりやすいためです。その対策として、期間以外には、特日以前に買い物をすると特日当日にさらにポイントがもらえる施策などもあります。開催期間が長いと出店者様の負担になることも理解しているため、目的に応じて施策を変えながら、ご意見も参考にアップデートしていきたいと考えています。
Q:PayPayユーザーからの新規獲得を行うために、具体的にどのような施策を予定されていますか?
A:いくつかの施策がありますが、ひとつには、PayPayアプリのバーコード表示画面の下に、Yahoo!ショッピングへの導線の設置を行っています。また、PayPayユーザーはお得なポイント還元への感度が高いため、ヤフー原資でのクーポン配布も積極的に行っています。こういった施策をはじめとして、Yahoo!ショッピングでお買い物いただけるきっかけとなる施策を強く進めています。
Q:優良配送バッジを取得している場合、どの程度検索結果に影響が出ますか?
A:定量的な表現は難しいのですが、影響はかなり大きいです。2022年8月下旬以降、Yahoo!ショッピングでは上位表示されている商品の多くに優良配送バッジがついており、検索順位を決める要素として大きな影響があるといえます。
Q:高価格商品の販促強化ポイントを教えてください。
A:高価格帯はポイント還元額が大きくなるため、PayPay祭などの大きなイベントでは特に大きな売上が立ちます。普段から販促強化しつつ、特にヤフー原資でポイント還元が大きい日には集客を強化していただきたいです。
また、○○時間限定といったゲリラ的なキャンペーンに関しては、モールとしても高価格商品帯を買ってもらいたいという狙いがあり、普段のキャンペーンとは別に金額バーを高く設けていることがあります。ちょっとしたイベントが売れるきっかけになることもあるので、どういった日を狙うと良いのか、ぜひ営業担当と密に連携いただきたいです。
Q:出店店舗が多くなることで競合も多くなると思うのですが、差別化のための施策で効果的なものはありますか?
A:今回のテーマでは、優良ストアと優良配送が非常に鍵になってきます。いろいろな面で露出が強化されますので、優良店になっていただくことがまず大事です。また、メーカー様には、メーカー公式ならではのサポート、補償、在庫面での優位さなどを強く活かしていただき、優良ストアとなり、優良配送を行っていただきたいです。優良配送はすべての商品でなくて良いので、できる商品からで構いません。
Q:LINEとのOne ID化はいつ頃実現しますか?
A:現状、2023年度の実装を目指して進めています。
セミナーに参加して:ヤフーならではの強みで日本のコマース業界を牽引
Yahoo!ショッピングとPayPayモールの2つに分かれていた売り場が、新生「Yahoo!ショッピング」として生まれ変わったことでユーザーの購買体験は向上するでしょう。Yahoo!ショッピング、PayPay、LINEの3サービスが連携することで、オンラインのみならずオフラインとの接点を持つことができると思います。
特にメーカー企業は、より細かい情報がヤフーから提供されます。ブランドシェアの把握により、競合との差分を明確にしながら、ヤフーとともにマーケティング活動を行うことで、ヤフー経済圏の成長とともに飛躍的なブランドの成長が期待できるのではないでしょうか。
▼セミナーのアーカイブ動画はこちら
https://www.commercepick.com/archives/26882
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