「fracora(フラコラ)」に学ぶ!顧客のハートを掴むライブコマース術【セミナーレポート】
イベントの概要

2022年10月26日、動画DXソリューションのFireworkによる「ライブコマースサミット2022」の第3弾ウェビナーが開催されました。このウェビナーでは、先端美容シリーズfracora(フラコラ)を展開する株式会社協和(以下、協和)のライブコマース術が紹介されました。協和は第6回日本ネット経済新聞賞にて「ライブコマース特別賞」を受賞しており、現在ではFireworkのシステムを利用してライブコマースを活用したマーケティングを行っています。本記事では、このウェビナーの内容を抜粋して紹介します。

【登壇者】
竹腰 泰子さん
株式会社協和
Corporate Officer

【モデレーター】
田中 雄大さん
Firework Japan

ライブコマースの取り組み状況

配信頻度について

田中さん(Firework):フラコラさんではECサイトにライブショッピング専用のページを設けていますが、ライブ配信はどのくらいの頻度で実施していますか?

竹腰さん(協和):少なくとも週2本は商品を紹介して購入できる場を定期的に設けています。配信中に商品ページのリンクを表示できるので、お客様はライブ配信を視聴しながら商品を購入いただくことが可能です。その他にもいろいろなオンラインイベントを行っています。

田中さん:ライブコマースの頻度として、しっかり準備して月1回行うのと、ある程度の準備で週2回行うのでは、どちらが良いでしょうか?

竹腰さん:適切な配信頻度は、業種やリソースによります。少人数で取り組むなら、月1回からスタートして、アーカイブを長めに残すと良いのではないかと思います。商品数が多くリソースがある場合は、頻度を高めて商品を紹介し、アーカイブ期間を調整すると良いでしょう。商品数が少ない場合は、1本の配信に集中して集客を強めるほうが良いかもしれません。

配信日や時間帯について

田中さん:生配信の視聴者が多い曜日や時間はありますか?

竹腰さん:弊社の場合、夕方以降の配信は安定して視聴していただけます。また、YouTubeやサイトのアクセスが多い時間帯なども参考にして、コンテンツごとに効果的な時間をテストしています。無理をせず継続できる時間帯で設計することも大切です。

田中さん:Fireworkはサイトに直接埋め込む形なので、そのサイトのトラフィックが多い時間帯を最初に試してみると良いかもしれません。

竹腰さん:ライブコマースの良さを活かすなら、本当は毎日配信を行うのが理想です。ただ、弊社の場合、専任のライバーがいるわけではなく、社員が他の業務も行いながら配信しているため、現実的ではありません。

また、ライブコマースを始めた当初は、一般的にライブ配信がよく視聴される時間に合わせ、20時頃に配信を行うこともありました。しかし、社員にライバーをやってもらいながらその時間帯で運営を継続することは現実的ではありません。

そこで、日常業務のなかでたとえば30分だけ時間をもらって配信を行うように、無理をせずに続けられるスタイルにしたのです。これはライブ配信を継続するために大事なことだと思います。Fireworkを利用することで、スマホひとつで配信できるのも良い点です。

以前は別のオンライン会議ツールでライブ配信を行っていたのですが、そのときは、お客様にもアプリをダウンロードしていただく必要があり、その説明のための動画やLPを制作していました。Fireworkを利用するようになってからは、お客様にURLのみをお伝えすれば、そこから簡単に視聴いただけるようになったのです。

ライブコマースを始めたきっかけ

テレビの広告では顧客情報を取得できない

田中さん:いろいろな販促手法があるなかで、ライブコマースに行きついた背景はどのようなものだったのでしょうか?

竹腰さん:もともと弊社では、テレビCMやテレビショッピングを行っていました。しかし、デジタルマーケティングに注力するなかで、テレビの広告では顧客情報を取得できないという課題があり、ライブコマースを検討しました。当時、ライブコマースは中国で流行していたのですが、日本での事例はほとんどなかったため、逆に今始めれば第一人者としてナンバー1になれるチャンスだと考えました。開始したのは2021年11月です。

田中さん:Fireworkを利用することになった決め手は何でしたか?

竹腰さん:最初は自社開発も考えたのですが、専門の会社にお任せしたほうが早いと考えました。その後、いくつかのサービスを試したなかで、要望の反映や実装のスピーディーさ、使いやすさからFireworkに決めました。また、ライブ動画を活用しECサイト内へコンテンツを追加しやすかったのも選んだポイントです。    

外部ではなく社員をライバーに

田中さん:フラコラさんのライブコマースの特徴として、社員の皆さんがライバーをされている点があげられます。これはなぜでしょうか?

竹腰さん:インフルエンサーやタレントへの依頼も検討したのですが、商品を紹介するにあたり、商品についてきちんと理解している人が話さないと伝わらないと考えました。

大事にしたのが、それぞれ異なる業務を担当する社員が、全員同じ条件で話せるよう商品について勉強して、お互いの領域をインプットすることです。そうすることで、配信を予定していた社員の都合がつかなくなっても誰かがすぐに代わることができ、全員でローテーションを回せます。カンペなどそのための環境も用意しています。また、結果として、社員同士の横のつながりも強固になりました。

田中さん:ライブコマースの特徴として、双方向のコミュニケーションがあげられます。特に、フラコラさんのライブコマースではチャットの盛り上がりが大きいように見受けられます。

竹腰さん:お客様のコメントがあってこそ企画が成り立ちます。台本はありますが、その通りになることはほとんどありません。お客様と直接コミュニケーションを取って喜んでいただき、盛り上がることがライブコマースの楽しさであり、ライバーの腕の見せ所でもあります。

田中さん:配信を盛り上げるために工夫していることはありますか?

竹腰さん:例えば、ライバーにわかりやすいニックネームをつけて、ニックネームで呼んでもらうことです。そうすることで、ライバーにファンがつき、配信そのものを楽しみに応援してくださるお客様が増えるように思います。それは、社員のモチベーションにもなります。

ライブコマースの体制づくり

配信者+天の声による運営体制

田中さん:ライブ配信は何名で運営されているのでしょうか?

竹腰さん:最低2名です。1名で運営できる場合もあるかもしれませんが、配信画面に映るライバーの他にもう1名がいると、天の声としてチャットでコメント対応を行ったり、掛け合いの相手になったりできます。できれば配信画面にライバー2名、もう1名が天の声として3〜4名体制のほうが良いかと思います。

田中さん:ライブコマースに取り組むにあたり、社員さんの協力をどう得ましたか?

竹腰さん:最初は売上を見ないようにしました。それよりも、集客数や離脱率、お客様に楽しんでいただけたかどうかを重視することにしたのです。ライバーには、「失敗しても大丈夫ですからとにかく楽しんでください」という姿勢でスタートしました。

田中さん:社員さんのモチベーションアップのための取り組みがあればお教えください。

竹腰さん:社員にとって、お客様とコミュニケーションを取り、反応を知ることが喜びやモチベーションにつながっているようで、協力的に取り組んでもらえることが多いです。夜遅くの配信になるときは、お酒とおつまみを差し入れることもあります(笑)。また、ライブ配信で寄せられた声を販促ツールやキャンペーンにも活かしています。

田中さん:なかには人前に出たくないという社員さんもいるのではないでしょうか?

竹腰さん:最初はみんなどうしていいかわからない。というところからのスタートです。また、1人では恥ずかしくても、2人で掛け合いがあると話しやすいようです。間が持たないときは天の声のサポートが重要になってきます。

やっていくうちにだんだん慣れてきて、最初は時間をかけて配信30分以上前から準備していたのが、最近では、日々の業務をしながらそのまま配信に出るという感じになってきています。そういう点でも、スマホで気軽に配信できるのが良いですね。    

最初はKPIを集客人数と滞在時間に

田中さん:社内では売上を見られるかと思うのですが、どう説得しましたか?

竹腰さん:社内プレゼンで中長期的な売上目標は出しましたが、最初はKPIを集客人数や滞在時間としました。その後、半年程度運営を続けていると、売上ペースが見えてきます。

Fireworkを利用したライブコマースでは、お客様のデータを自社の財産として蓄積でき、商品ごとのお客様の傾向などを知ることができます。そういったデータを基に、ライブコマースだけでなく、EC事業をトータルで見て複合的に盛り上げる企画の計画も可能となり、それが売上にもつながります。

田中さん:ライブコマースのターゲットは、商品認知がある人なのか、すでに使っている人なのか、どのようなペルソナをイメージされていますか?

竹腰さん:あえて絞らず、新規のお客様にも既存のお客様にも楽しんでいただけるようなワード選びを意識しています。だからこそ、初回参加のお客様にコメントを返すことを重視しているのです。一方で、定期購入のお客様に他の商品もご購入いただくことや、しばらくご購入のなかったお客様が戻ってきてくださることも増えています。

コンテンツ作りの工夫

チャットを盛り上げるために意識していること

田中さん:チャットの参加率とユーザーの平均視聴時間のデータを見ると、チャットが盛り上がることがライブの成功につながると考えられますが、運営としてはいかがでしょうか?

竹腰さん:チャットが盛り上がる回はそれだけお客様に楽しんでいただけていて、その結果、視聴時間が長くなるととらえています。フラコラの配信は他社に比べて視聴時間が長い傾向にあります。通常は10分程度でユーザーが入れ替わるため、伝えたいことは10分おきくらいで繰り返すなどの工夫をしていますが、啓発系の内容の配信などは15分~30分視聴を続けてくださるお客様もいます。

また、チャットの盛り上がりがすぐに売上につながるわけではないのですが、それで良いと考えています。ライブ配信はファンの育成が目的です。1回で成果を取ろうとせず、2~3回の視聴を経て購入いただけるなど長めのスパンで見ており、結果として年間のLTVが向上することを目指しています。

田中さん:せっかく双方向のツールなので、コメント対応は重要ですよね。コメント対応ではどのようなことを意識されていますか?

竹腰さん:見ている人の気持ちになって対応することが重要です。せっかくコメントしたのに反応してもらえなかったらもういいやという気持ちになりますし、一方通行のライブ配信はテレビショッピングと変わりません。あくまでお客様が主役であり、楽しかった、また見たいと思わせるのが、ライバーや運営者の腕にかかっています。

そのために、初参加やライブ配信から商品をご購入いただいたコメントに対しては、運営スタッフからライバーに対して「初参加」「購入」といった札を見せ、話を止めてでもお礼を言うようにしています。

田中さん:コメントが来るように工夫されていることはありますか?

竹腰さん:「コメントお待ちしています」といったメッセージを置くことがあります。また、「スキンケアで普段なにを気にされていますか?」など世間話のような感じで視聴者に話しかけることもします。2人いるときは台本に沿って掛け合っていると自然とコメントが入ってくることもあります。コメントが来なくても頑張って話し続ける心の強さも大事です。

商品選定と企画作りについて

田中さん:商品選定と企画作りで工夫されているのはどのような点でしょうか?

竹腰さん:ライブ配信のタイトルには、季節やその時々の流行などのキーワードを載せています。その際、買わせようとしている宣伝感が出ないよう、ブランド名や商品名は載らなくても良いと考えています。大切なのは、商品を買いに来るのではなく遊びに来てもらうことです。

企画は3カ月くらい先まで設計して、キャンペーンやライバー、テーマなどの計画を立てています。ライバーが複数いることも大事で、同じ商品について話しても人によって違う切り口になったり、視聴者によって好みのライバーが違ったりします。

田中さん:一回の配信で何個の商品を紹介されますか?

竹腰さん:配信の長さにもよりますが、弊社の場合、いつも30分の設計で1時間程度の配信になっていて、そのなかで紹介できるのは多くて4商品、最近は3商品程度が中心です。

また、10分程度で視聴者は入れ替わると想定して飽きられないようにしています。たとえば、美容液の紹介では組み合わせておすすめの商品、季節のおすすめの商品などの紹介をしています。ライバーがすぐ手に取れる位置に商品を陳列しているのも工夫している点です。

田中さん:配信のなかで特典などはつけられていますか?

竹腰さん:ライブ限定のセット商品を作ったり、喜んでいただけそうなアイテムを付けたりするなど、生ライブを見に来て良かったと思っていただけるような工夫をしています。

田中さん:アーカイブ視聴を意識した配信の工夫はありますか?

竹腰さん:たとえば、連休前には連休中の視聴を想定して、デジタルマーケティングと連動したアーカイブを残すようにしています。休みの間に商品が売れることは、運営にとっても演者にとっても嬉しいことです。

集客と今後の取り組みついて

田中さん:ライブ配信やイベントでは集客に苦戦される話も多いですが、この点はどうされていますか?

竹腰さん:弊社の集客はメルマガがメインです。その他、アプリやSNSでも集客を行っています。広告を使う場合は、セグメントして予算を抑えながら効果的に出稿することが重要です。

田中さん:他店舗や他業界ともノウハウをシェアすることで、新しい方法が見つかるかもしれませんね。

竹腰さん:ライブコマースはまだ日本のEC市場では浸透していない、チャンスのあるジャンルだと思います。ただ、一社でできることには限界があるので、コラボレーションは大歓迎です。一緒にやってみたいという方がいらっしゃったらぜひお声がけいただきたいです。一緒に市場を盛り上げていけたらと思います。

セミナーに参加してみて

「ライブコマース」は、日本のEC市場でも何度か話題になりながら、そこまで普及せずに現在に至っているところがあります。

しかし、InstagramなどのSNSや今回のウェビナーを開催したFireworkのように、動画を作成・配信できるプラットフォームやツールは日々進化しており、ライブ配信はより簡単なものになっています。実際、そういったプラットフォームやツールを活用してライブコマースを行うECサイトも増えている印象です。

ライブコマースを本格的に始める予算やリソースがないと考えているEC事業者も、今回のフラコラの事例を知ることで、ハードルが低くなるのではないでしょうか。日常業務のなかで無理のない範囲で、社員がライバーとしてライブ配信を行うやり方は現実的だと思います。

最近ではSNSでの発信などを通じて、動画投稿にプライベートで慣れている人も増えているので、ライブコマースに取り組みたい、興味のあるスタッフがいないかまずは社内で声をかけてみるのも良いのではないでしょうか。

■本セミナーのアーカイブはこちら
https://jp.firework.com/download/jp-202210-webinar

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