
株式会社サードプレイス(以下、サードプレイス)が運営する味噌料理専門店「みそら屋」は、年間6万人が訪れる下町の人気店です。新型コロナウイルスの影響をきっかけに、新しい挑戦として加工食品販売、食育ワークショップやイートインスペースを併設した「あさくさ 味噌らぼ」を2022年8月30日にオープンし、同時にECサイトも立ち上げています。今まで飲食店一本だったサードプレイスが食品販売中心の実店舗と未経験のEC事業を同時に始めた背景や、オンラインとオフラインを同時に運用することで感じるメリットや課題などについて、同社の代表取締役である岩本大さんに伺いました。
この記事の目次
コロナで一転した飲食店経営が新しい挑戦のきっかけに
――飲食店を4店舗経営している中、このタイミングで食品販売の店舗とECサイトをオープンした理由を教えていただけますか。
岩本さん:飲食店の「みそら屋」では年間6万人のお客様がいらっしゃいます。それが新型コロナウイルスの影響で営業が難しくなり、今まで受け入れられていたお客様の対応ができなくなってしまったのです。元々ご来店いただいていたお客様のために、こちらからお届けできないかと思ったことが食品販売を決意した最初のきっかけです。
ECサイトだけでなく、店舗を構えた理由は弊社のコンセプトである「味噌の可能性を提案すること」を実現するためでした。味噌の販売をするにあたって、オンラインでは体験できない匂いを嗅いだり、味を比べたりすることで、お客様に喜んでいただきたい想いがあったのです。

世界観を叶えるために大事なパートナーを決める
――飲食店を既に4店舗構えている経験から、店舗を構えることは大きな壁はなかったかと思います。一方で、ECサイトを立ち上げることは完全に未経験とのことですが、まずはどういったことから始めたのでしょうか。
岩本さん:まずは自社のECサイトか楽天市場かAmazonか、どこに出したら良いのか考えました。「味噌の可能性を提案すること」を大きなテーマとして掲げる中で、店舗との互換性を高めたり、SNSやブログを投稿し続けて振り返ったときに歴史を感じられるようにできたりと、「あさくさ 味噌らぼ」の世界観を作るには自社でECサイトを作る必要があると感じたのです。
そう決めてから、ECサイトの構築をしてくれる会社を探し始めたのですが、ネットで検索するとかなりの数の会社が出てきたのです。そこで、制作会社のホームページに掲載されている過去の実績を見て、私の持つ「あさくさ 味噌らぼ」のイメージに近いサイトを作っている会社に問い合わせをしました。右も左もわからない状態だったことからお打ち合わせをした会社はかなりの数になったのですが、その中から最終6社にお見積りを出していただきました。
――制作会社を最終的に1社に絞り込んだかと思いますが、どのような基準で選定したのでしょうか。また、制作会社を決めるにあたって、苦労したことがあれば教えていただけますか。
岩本さん:さまざまなカートシステムがありますが、どの制作会社もShopifyを提案いただいたので、Shopifyで間違いないなと思いました。しかし、同じShopifyというカートシステムでの構築にも関わらず、見積もりの金額が異なっていたのです。
利用するアプリが多い分高かったり、アプリがない分安くなったり、サイトを立ち上げる段階でどの程度機能を充実させる必要があるのか悩みましたね。あと、見積書に載っている見たことのない単語を理解するのには苦労しました。
最終的に決めた会社は見積の内容と説明がわかりやすく、「アンヨを始めるところから立てるところまで一緒にやろう」と言っていただいたことが決め手になっています。その言葉の通り、ECサイトの構築後も日々密にコミュニケーションを取っていただいたり、店舗に来ていただいたりと、アフターフォローが手厚く安心です。
おかげで、InstagramなどSNSの集客の仕方や手書きで対応していた伝票をアプリで簡略化できる方法を教えていただくなど、運用しながら足りないところを補っていただけています。

サイト運用の心構えと立ち上げ時の反省点
――知見がない中で困ったときに寄り添えてもらえて、わからないことを伝わるように解説してもらえるのは安心ですね。ECサイトが立ち上がってから1ヶ月ほどになりますが、この1ヶ月を振り返って感じたことをお聞かせいただけますか。
岩本さん:まず、ECサイトは納品のタイミングで全ての機能が揃っているのが当たり前だと思っていました。100点満点の状態で、ECサイトをオープンするものだと。しかし、運用を重ねることで実店舗と同じように日々改善を行う必要があることに気づいたのです。今の100点満点よりも日々の運用の中で「もっとこうしたい」と思ったことを1ヶ月、2ヶ月先に実現して、良くなっている姿をお客様に見せられることが理想だと思います。
ShopifyはECサイトをオープンしてから必要に応じて機能を後からアプリなどを活用して追加できる点はいいですね。サイト制作をご依頼させていただいた会社には「Shopifyはさまざまな機能を追加できるが、どんな機能が必要かはお店によって変わってきます。運営してみないとわからないため、はじめは最低限必要な機能で、ミニマムスタートが良いですよ」とアドバイスいただきました。そのことを身にしみて感じます。
ただ、店舗では「これをやろう!」と思うとレイアウトを変えたり、商品を追加したりすることが非常にスムーズですが、ECサイトではどうしても専門的な知識が必要になってしまいます。そのため、未経験から始める場合、相談しながら伴走してもらえる制作会社を選択して良かったです。
反省点としては、解像度をもっと高めてから構築をお願いすれば良かったと持っています。例えば、店舗にあるワークスペースでイベントをするときにECサイトから予約できるようにするとか、カメラマンに撮っていただいた写真素材をもっといろいろな角度から撮っておけば良かったなとか。
集客の鍵となる飲食店との連携
――未来に向けてのアクションを取り続けるために、制作会社と上手く伴奏できているのは良いことですね。一方で、解像度を高めきれなかったことを反省点としていますが、特にサイト立ち上げ時に撮影した写真をもっと撮っておけばというお話はよく伺います。ECサイトは立ち上げただけでは人に来てもらえない無人島のような状態だと比喩されることがありますが、集客についてはどのように取り組んでいく予定でしょうか。
岩本さん:Google広告やSNSを運用して集客することが1つですが、緊急事態宣言時と比べ、飲食店にかなりのお客様が戻ってきていただいています。1日あたり200人ほどご来店いただいているので年間6万人を上回るペースです。
テレビに取り上げていただいた目玉商品の味噌プリンは元々「あさくさ 味噌らぼ」の店舗とECサイトのみで販売していました。テレビ放送後に飲食店で扱うようにしたところ1日70個が完売していて、月に2,000個以上売れる人気商品になっています。召し上がっていただいた方から少しでも多くの方にECサイトでお買い求めいただけるような取り組みをしていきたいです。

社内外に新たな価値を示す食品販売事業
――飲食店の集客力を今後どのような形で活かしていくのか期待が高まります。最後に、今後EC事業を通じて、どういったことを実現されたいでしょうか。
岩本さん:飲食店では自分や会社のメンバーが現場に立ち、お客様との対話を通して売上を立てる形でした。ECサイトがあれば、お客様が買い物をする上で場所の制約がなくなり、昼夜問わず注文できるようになります。毎日違った味の味噌を楽しめる味噌のセットや他では味わえない味噌プリン、サバの味噌煮のような味噌を使った料理の加工食品など、全国の方々「味噌の可能性を提案すること」を積極的にしていきたいです。
また、今まで飲食店一本だったサードプレイスではできなかった働き方の選択肢を作れるようになりました。在宅ワークのように時間や場所に縛られない働き方ができる社員を増やしていければ、社内全体のモチベーションにもつながるでしょう。売上を伸ばし、EC事業に携わる人員を増やして行ければと思います。
インタビューを通して:堅実な立ち上げから飛躍的な成長に向けて
岩本さんは最低限必要な機能を搭載し、運用の中で必要な機能を増やす方針でECサイトを立ち上げています。立ち上げ早々追加した機能として、飲食店の経験からお客様とのコミュニケーションを大切にしている岩本さんは、以前コマースピックで取材をした蝶結びさんを参考に、チャットツールを導入したようです。おすすめの味噌の情報など、活発にやり取りできるようになるとお客様が買い物を楽しめる世界観を実現できそうです。
WebやECについて完全に未経験の状態から始まった「あさくさ 味噌らぼ」。現在は実店舗のようなスピード感で施策を回せないもどかしさはあるようですが、日々運用を重ねることで実店舗との互換性を高まり、飲食店を上回る数のお客様から愛されるサイトになるのではないでしょうか。
「味噌の可能性を提案する」をテーマに、「味噌プリン」をはじめ、ゼリー状の味噌汁「味澄汁(みすみしる)」など、ここでしか買えない商品が多数並んでいます。是非一度食べてみてください。
▼あさくさ 味噌らぼ
https://asakusamisolabo.jp/
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