EC事業者は感情的にならずに不都合な事実に向き合わなければならない

売れない理由を取り除かない限り商品は売れない

ECでは売れない理由がある商品は売れません。

例えば、実店舗での販売の場合、

  • 店員の営業トークに乗せられた
  • 店員がカワイイ/カッコイイ
  • 駅の反対側の店のほうが安いけれども面倒だから近い方で買う

など、手に入る商品自体の価値や金額のような観点では非合理的な販売もありえます。

しかしながら、ECでは対面の営業はできず所在地などの物理的な成約もなくなるため、非合理的な理由での販売の可能性は実店舗と比べると低くなります。なので、ECでは売れる理由を作ることも大切ですが同じくらい"売れない理由をなくす"必要があります。

ところで、"売れない理由をなくす"ということは言ってしまえば"ダメ出しを受け入れる"と近い行為です。

こだわりや自信を持っている点が消費者には何の魅力もなかったり、どの観点で見ても売れる理由がない、つまり詰んでいる状態だったりする、不都合な事実に目を向けなければならない場合もしばしばです。ところが、このような場面に際して、現実を受け入れられずに感情的になってしまうEC事業者が少なくありません。

EC事業者が成功するには、受け入れがたい事実から目を背けずに冷静に事実を正しく把握し、売れない理由をなくしていくことが求められます。

以下、根本的に売れない理由があるケースを具体例を添えてご紹介します。

こだわりの商品でよくあるケース

工芸品のような、物の持つ機能的価値以上の金額で売ろうとしている場合を例にご紹介します。

少々極端な例ですが、職人が手漉きする超高級和紙を利用したクラフトテープを1巻5,000円で売ろうとしているとしましょう。

このクラフトテープが売れるわけがないことは想像に難くないと思います。

その職人がどんなにすごくても、その和紙がどんなに由緒正しいものであっても、使い捨てが前提となるクラフトテープにそのような価値を消費者は求めていません。

観賞用として、使わない前提で購入する消費者はいるかも知れませんが、それは映画やアニメなどの作品とのコラボ商品であるなどの理由や、頻繁に来客があってインテリアでマウントを取りたい人であるなどの理由が必要です。

作品とのコラボは一朝一夕でできることではありませんし、その作品がヒットするかどうかはコントロール外です。また、インテリアで来客にマウントを取りたい人をターゲティングする方法はありません。

型番商品の販売でよくあるケース

大手通販サイトでも取り扱っているのと同じ商品を自社のECサイトで売りたい場合を考えてみます。

型番商品なのでどこで買っても手に入る物は同じです。
大手通販サイトのほうがスケールメリットで安くできたり、送料を無料にできたりします。
また大手通販サイトのほうがオペレーションが合理化されていて早く届きます。
さらに大手通販サイトではポイントが溜まります。

つまり、同じ商品を手に入れるために、高い・遅い・特典もないのに、わざわざ買ってもらわなければなりません。

大手通販サイトよりも高い・遅い・特典もない場所で買うユーザーとして考えられるのは、

  • その会社を応援したいなどの感情的な動機がある
  • 大手通販サイトの存在を知らない
  • 大手通販サイトを使いたくない感情的な理由がある
  • 大手通販サイトで売っているかどうかを調べずに買った

などが考えられます。

  • 大手通販サイトの存在を知らない
  • 大手通販サイトを使いたくない感情的な理由がある
  • 大手通販サイトで売っているかどうかを調べずに買った

これらのユーザーをターゲティングはできませんし、マーケティングによって、ユーザーの記憶から大手通販サイトを消したりユーザーが大手通販サイトを嫌いになったりするように誘導することはできません。

大手通販サイトに価格やオペレーションでは敵わないでしょうから、大手通販サイトでも売っている商品を自社ECでも売りたい場合は、「高くてもこの会社から買いたい」と思ってもらう要素が必要です。

簡単なことではありませんが、これは受け入れなければならない現実です。

そうでなければ、たまたま自社ECを訪問したユーザーが偶然にも大手通販サイトの存在を知らなかったり大手通販サイトが嫌いだったりするラッキーを期待することしかできません。

潰れるEC事業者には自滅が多い

頼れるコンサルタントは、小手先のテクニックでお茶を濁すことなく"根本的に売れない理由がある"ことを指摘します。こだわりを持って商売をされている事業者さんには耳が痛い指摘もあることでしょうし、場合によっては沽券に関わると思う人も少なくないでしょう。

ここで感情をコントロールできない事業者はすべき指摘をしてくれるコンサルタントをクビにしてしまいます。

そして、耳心地の良いことを言ったり、小手先のテクニックでやってる感を出したりしている自称マーケターと契約をしたりします。が、売れない理由が取り除かれないので売れるようにはなりません。そうして立ち行かなくなり潰れてしまうEC事業者が少なくありません。

一国一城の主だからこそ、余計なプライドは捨てて現実を受け入れる姿勢が求められます。

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