なぜメルカリは"事業者締め出し"に踏み切ったのか?2025年10月規約改定の真相とメルカリShopsとの関係

「メルカリの"事業者締め出し"のニュース、他人事じゃないかも…。今後の対策をどう立てるべきか…」そうお考えではありませんか?本記事では、専門家が2025年10月の規約改定の真相と、その裏に隠されたメルカリのビジネス戦略を深掘りします。

プラットフォームの規約変更に振り回されない、持続可能なEC事業戦略の要点が学べます。こちらを読み終える頃には、この変化を好機と捉え、自社の事業を成長させる次の一手が見えているはず!

この記事の執筆者

山本 達巳
つきみ株式会社

静岡市出身、関西学院大学卒。地元医療系の企業で修行後、父親の経営する医療介護系企業に入社。経営とバックオフィス業務を学ぶ傍ら、留学がきっかけで以前から関心が高かった輸入品雑貨のネット販売事業を開始。令和元年に独立し、複数の海外メーカー取引きの経験を経て、自社アウトドアブランドを展開。

その後、自社ブランドを伸ばしていきたい事業者を応援したいという思いから、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。

つきみ株式会社
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突如告げられた「事業者」の退場勧告。2025年10月規約改定で何が変わるのか?

(出典:メルカリ公式

2025年10月22日、多くのEC事業者にとって事業の根幹を揺るがしかねないルール変更が、メルカリで施行されました。これは個人アカウントで商品を販売してきた「事業者」に対する、事実上の退場勧告です。

今回の規約改定の核心は、利用規約第4条に新設された第3項にあります。そこには「弊社が指定した法人以外の事業者はユーザー登録及び本サービスの利用はできない」と明記され、事業者はメルカリShopsへ登録するよう明確に定められました。(出典:メルカリ利用規約改定のお知らせ

これまで実質的な事業活動の温床となっていた、いわゆる「グレーゾーン」が完全に消滅する瞬間と言えるでしょう。(出典:【2025年最新版】メルカリ規約変更で個人の事業者はどうなる?

では、そもそもメルカリが定義する「事業者」とは誰を指すのでしょうか。実は、メルカリの公式発表に売上額や出品数といった具体的な数値基準はありません。(出典:メルカリでハンドメイド作家は匿名販売できなくなる!? 2025年10月規約改定を解説

(出典:インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン

この曖昧さに多くのセラーは不安を覚えますが、EC事業者は特定商取引法のガイドラインを事実上の基準と捉えるべきです。例えば、消費者庁のガイドラインでは「過去1ヶ月に200点以上、または一時点において100点以上」の出品や「落札額の合計が過去1ヶ月に100万円以上」であることが一つの目安とされています。(出典:インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン

重要なのは数値だけでなく、「営利目的」で「反復継続」する販売行為そのものです。継続的に商品を仕入れる「せどり」や、ハンドメイド作品を定期的に販売する作家も「事業」と見なされる可能性が極めて高いのです。(出典:【2025年最新版】メルカリ規約変更で個人の事業者はどうなる?

もし、この新ルールを軽視して個人アカウントでの事業活動を続けた場合、厳しいペナルティが待っています。最初は出品時の警告から始まり、規約違反と判断された商品の強制削除や出品機能の一時停止、そして最終的にはアカウントの無期限利用停止、つまり「アカウントBAN」に至る可能性があります。(出典:メルカリでハンドメイド作家は匿名販売できなくなる!? 2025年10月規約改定を解説

これまで時間と労力をかけて築いた評価やフォロワーといった貴重な無形資産が、一瞬で失われるリスクがあるのです。では、なぜメルカリはこれほど厳しい措置に踏み切ったのでしょうか。その裏側には、プラットフォームが描く今後の未来像が隠されています。

メルカリのC2Cビジネスモデル。規約改定に隠されたの真の狙いとは?

(出典:メルカリ公式

メルカリの厳しい規約改定は、単なるルール変更に留まりません。その裏にはメルカリが描く事業戦略が隠されており、その真の狙いとは何なのでしょうか。

第一の狙いは、メルカリのメインアプリを本来の姿である「C2C(個人間取引)モデル」として再確立することです。

メルカリは個人が気軽に売買できる場として支持を得ましたが、事業者の増加は個人ユーザーから「探しにくい」「価格が不透明」といった不満を招きました。特に悪質な転売行為の横行は、プラットフォーム全体のブランドイメージを大きく損なう要因です。(出典:2025年10月版|メルカリ“転売規制強化”の最新動向:Switch2騒動で何が変わるか?

 そこで、事業者と個人を明確に分離し、個人が安心して取引できるように徹底することで、ユーザー体験と信頼性の回復を図っているのです。(出典:メルカリ/利用規約を改定/事業者は個人アカウントの使用不可に

そして第二の、より巧妙な狙いが、事業者ユーザーを自社エコシステム内に留め置く戦略です。競合のYahoo!フリマや楽天ラクマが規約で事業者を「外」へ事実上排除しているのに対し、メルカリは「メルカリShops」という専用の受け皿を用意しました。

 これは事業者を排除せず、自社が管理する経済圏へ計画的に誘導する戦略です。これにより手数料や取引データを外部へ流出させず、本体の膨大なトラフィックをShopsへの送客に利用できるメリットが生まれます。(出典:フリマアプリ「メルカリ」への法人・個人事業主による登録は禁止を明確化。今後も利用するには?メルカリShopsについても解説

この戦略は、将来的な収益化への布石でもあります。事業者をShopsに集約することで、将来的には高度な分析ツールや広告機能といった付加価値の高い有料サービスの展開が容易になります。

この動きは、混沌とした事業者群を、収益性の高い構造化された顧客セグメントへと転換させる、極めて戦略的な一手なのです。この新たな市場で、EC事業者はどう立ち回るべきなのでしょうか。

事業者メルカリShopsを始めるべき?移行前に知るべきメリットと「評価リセット」の罠

(出典:メルカリ公式

メルカリの戦略を理解した上で、事業者に残された道は「メルカリShops」への移行しかないように見えます。一見すると、CSVでの一括出品やスタッフアカウント機能など、事業者向けの機能が揃った"楽園"のように映るかもしれません。

しかし、その移行を決断する前に、私たちはメリットの裏に潜む重大な課題、つまり"罠"について冷静に分析する必要があります。「匿名性の喪失と法的義務」です。B2CプラットフォームであるメルカリShopsは特定商取引法の規制対象となり、事業者には氏名や住所、電話番号といった運営者情報の開示が義務付けられます。(出典:運営者情報の開示について

個人アカウントの匿名配送に慣れた事業者にとって、これは最も大きな心理的ハードルでしょう。また、中古品を扱う場合は古物商許可証の取得と表示が必須となり、コンプライアンス遵守が厳しく求められます。

そして、事業者にとって最大の罠が「評価リセット」という致命的な課題です。個人アカウントで長年かけて築き上げた数千、数万の評価やレビュー、そしてフォロワー数を、新しいメルカリShopsのアカウントに引き継ぐことは一切できません。(出典:メルカリアカウントの評価やフォロワーをショップに引き継ぎたい

これは、事業の生命線とも言える「信頼」という無形資産がゼロになることを意味します。この一件が私たちEC事業者に与える最大の教訓は、単一プラットフォームに売上の大半を依存することの危険性です。今回の規約改定を機に、私たちは事業のあり方を根本から見直すべきなのです。

まとめ:メルカリ依存からの脱却。規約改定を機にEC事業者が築くべき新たな羅針盤

2025年10月のメルカリ規約改定は、全てのEC事業者に対し「プラットフォーム依存」という構造的リスクを浮き彫りにしました。

メルカリの巧みな戦略を理解し、目先の対応に追われるだけでは不十分です。今こそ、自社ECサイトを事業の核に据え、複数の販路を組み合わせることで、外部環境の変化に揺るがない強固な事業基盤を築くべきです。

この規制を、自立したEC戦略への転換点として、現在の事業をより強固なものにしていくことが求められます。

つきみ株式会社 https://tsukimi.ne.jp/

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