ワールドとTSI、なぜ経営統合?ブランドの個性を残し、共通化するものとは

株式会社ワールド(以下、ワールド)とTSIホールディングス(以下、TSI)は2026年10月14日、共同持株会社を設立する経営統合に合意したと発表しました。統合予定日は2027年3月1日。両社が掲げるのは、ブランドごとの創造性を維持しながら、商品の生産・調達から物流、販売に到る事業基盤を共通化・相互活用する構想です。
今回の発表では、物流・システムの共通化に加え、顧客情報の統合やOMOを前提とした販路戦略が示されています。経営統合の背景や目的、ECに関わる具体的な取り組みをまとめました。
参照:ワールド・TSIホールディングス「共同持株会社設立(株式移転)による経営統合に関するお知らせ」(2026年10月14日)
2027年3月に共同持株会社を設立する計画
新会社の名称は「インフィニティ・ユナイテッド」。共同株式移転という方法で、ワールドとTSIの完全親会社となる持株会社を新設します。両社は新会社の完全子会社となり、その傘下で事業を展開する形です。
すでに経営統合契約を締結していますが、統合の実施には株主総会や関係当局の承認などが必要です。2026年12月24日に両社が臨時株主総会を開催し、株式移転計画の承認を求めます。
その後、2027年2月25日に両社が上場廃止となり、3月1日に新会社が東証プライム市場へ上場する予定です。これらの日程は現時点のもので、許認可の取得状況などによって変更される場合があります。
統合の背景にある重複コストと顧客の変化
両社が共通の課題として挙げたのは、国内ファッション市場の供給過剰です。店舗やブランドの供給過剰が続くなか、ECサイト、物流、システム、在庫なども重複し、産業全体のコストを押し上げていると説明しています。
商品を消費者に届けるまでの事業基盤にも、重複する投資や費用が生じている状況です。さらに、調達コストや物価の上昇、国内人口の減少への対応も求められています。両社は、企業の枠を超えて経営資源を共有することで、コストを適正化できると判断しました。
もう一つの課題は、顧客ニーズや購買行動の変化への対応です。デジタルを介した顧客接点が増えるなか、変化に対応してきたグローバルSPAや大規模小売企業への市場集中が進む一方、新たなビジネスモデルを持つ企業も台頭していると捉えています。こうした事業環境を背景に、両社は2026年6月頃から経営統合について協議してきました。
経営統合を選んだ理由の一つが、事業の相互補完です。両者が保有するブランドは顧客層や販路、商材、価格帯の重なりが少なく、互いを補完する関係にあります。TSIのストリートやアメカジに広がるブランド創造力と、ワールドが外部企業にも提供している事業基盤や循環型事業のノウハウを組み合わせることで、相乗効果を期待しています。
TSIは、2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルの経営統合によって誕生した企業です。当時の統合でも物流・ITシステムの共通化やEC投資の負担分散を狙い、その後はブランドの自主性を重視してきました。今回も、ブランドの個性を維持しながら事業基盤の共通化を進める考えです。
統合の目的として掲げる「第3極」も、この考え方につながっています。ワールドは、グローバルSPAを第1極、大規模な小売・供給企業を第2極と位置づけ、それらとは異なる、多様なブランドやサービスが集まる集団企業を第3極としています。今回の統合には、多様性を強みとする事業基盤を構築する狙いもあります。
ブランドの創造性を保ち事業基盤を共通化

統合後に共通化を目指すのは、情報システムや物流など投資規模の大きい業務基盤と、コーポレート機能などの間接サービスです。複数の組織で個別に整備・管理してきた機能を共通の基盤として運用し、重複する業務やコストの削減につなげます。
対象は、商品の生産・調達から物流、販売までの一連の事業基盤に及びます。それぞれの基盤を相互に活用するほか、購買や決済の一体化によるコスト削減も見込んでいます。
一方、ブランドごとの創造性は維持します。個々のブランドが持つ独自性を尊重しながら、その活動を支える仕組みを共同で活用する考えです。ブランドの個性と運営基盤の共通化を両立させることが、今回の経営統合の中心となっています。
こうした効率化によって生まれる投資余力は、成長分野や人材への再投資に充てられます。M&Aや海外展開などへの投資を拡大するとともに、人材育成も強化し、新たな商品や事業の創出につなげる構想です。
また、両社は大量生産・大量値引き・大量廃棄を前提とした事業の持続性にも課題があるとしています。長期的には、再生・再活用を前提とした循環型のビジネスを広げ、環境負荷の低減と収益拡大の両立を図る方針です。
顧客情報の統合とOMOで販売面の連携も進める
EC事業に関連する取り組みとして注目されるのが、顧客情報の統合です。各ブランドや事業が保有する顧客情報を統合し、デジタルマーケティングを拡充につなげます。企業の枠を超えた顧客情報の活用により、販売促進を強化する狙いです。
あわせて掲げたのが、両社の顧客接点を相互に補完し、OMOを前提とした販路戦略を進めることです。OMOとは、オンラインとオフラインを一体として捉える考え方です。両社が持つ顧客接点を組み合わせることで、販売機会の拡大を図ることができるでしょう。
販売面の連携は顧客情報にとどまりません。商品・コンテンツの相互供給や、地方・海外を含む販売チャネルの共同開発も計画しています。それぞれが持つ商品と販路を相互に活用し、新たな成長機会につなげる計画です。
一方、ECサイトの一本化や、共通会員ID・ポイント制度の導入など、個別サービスに関する具体策は、今回の発表資料には示されていません。現段階で明らかになっているのは、顧客情報の統合や販売チャネルの連携を進めるという方向性です。具体的な施策や実施時期については、今後の発表が待たれます。
具体的な計画や業績見通しは今後公表
今回の経営統合では、事業基盤の共通化や顧客情報の活用による相乗効果が期待されています。ただし、共同持株会社の経営方針、計画、業績見通しについては、今後両社で検討し、確定次第公表するとしています。
ブランドの創造性を維持しながら、どの基盤を共通化し、どれだけの効果を生み出すのか。今後公表される具体的な計画が、経営統合による成果を見極めるうえで重要になります。
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