【海外ニュース】英国ECが再成長、TikTok Shopに30万社 楽天フランス閉鎖とZalandoのAI物流投資

本記事では、欧州を中心としたEC関連の最新ニュースをお届けします。今回は、現地で注目を集めた4つのトピックを、日本のEC事業者にもわかりやすく紹介します。

TikTok Shop、英国の中小企業30万社が出店 ライブコマースが地域を越えた販路に

新規出店者は前年比3倍に

TikTokによると、英国でTikTok Shopに出店する中小企業が30万社を突破しました。英国における販売者全体の数は明らかにされていませんが、新たに参加する販売者は前年から200%増加しています。

TikTok Shopは2021年末、欧州で初めて英国に導入されました。当初は消費者の反応が想定ほど伸びず、TikTokは欧州本土への展開を一時的に遅らせています。しかし、2024年には売上が前年比180%増加。2024年末時点で20万以上の事業者が販売に参加しており、その後も中小企業を中心に出店者を増やしてきました。

1日6,000件超のライブ配信、売上は55%増

成長を支えているのが、動画やライブ配信を起点とした販売です。英国では1日6,000件を超えるライブショッピング配信が行われ、ライブ経由の売上は55%増加しました。地域の小売事業者にとっては、商圏外の消費者へ商品を紹介し、質問にその場で答えながら関係を築ける販売手段になっています。

TikTokは、プラットフォーム上での露出や販売が他チャネルの成長にもつながる現象を「TikTok Shop halo effect」と呼んでいます。TikTok Shopで注目を集めたブランドが、卸売契約や大手小売への出品、実店舗への進出、取扱商品の拡大につなげる事例も出ているといいます。

SNS内の売上だけで評価しない視点も必要に

TikTok Shopは、単にSNS上で商品を販売する機能ではなく、ブランドを発見してもらう入口として存在感を高めています。特に知名度の低い中小ブランドにとっては、広告から商品ページへ誘導する従来型の集客とは異なる選択肢になり得ます。

日本のEC事業者も、TikTok Shop単体の売上だけで成否を判断するのではなく、検索数の増加、自社ECへの流入、他モールでの売上、卸売の相談なども含めて効果を捉える必要があるでしょう。短期的な獲得効率だけでなく、動画やライブ配信を通じて商品理解を深め、他の販売チャネルへ波及させる設計が重要です。

参照:300,000 small businesses from the UK on TikTok Shop

英国EC市場が再び拡大 オンライン売上は前年同期比11.7%増

EC化率は2021年4月以来の高水準に

英国国家統計局(ONS)によると、2026年第2四半期のオンライン小売売上高は前年同期比11.7%増加しました。6月単月では14.4%増となり、小売売上全体に占めるオンラインの比率は29.4%まで上昇しています。これは、新型コロナウイルスの行動制限が購買行動へ強く影響していた2021年4月以来の高水準です。

オンライン販売の伸びは、小売市場全体にも寄与しています。第2四半期の小売販売数量は0.6%増、6月は1.0%増となりました。小売事業者からは、セール施策と温暖な気候が、無店舗販売や衣料品の売上を押し上げたとの声が出ています。6月にはアウトドア用品、スポーツ用品、扇風機、エアコンなどの需要が高まりました。

長期低迷を経て2桁成長へ回復

英国のオンライン小売は、2021年春以降、長期的な低迷が続いていました。コロナ禍で急拡大した反動に加え、EU離脱後は欧州大陸で見られた越境ECの成長を十分に取り込めなかったとされています。今回の2桁成長は、英国EC市場が再び拡大局面へ入った可能性を示すものです。

一方、英国ではAmazonをはじめとしたマーケットプレイスへの集中も進んでいます。市場が成長しても、すべてのEC事業者が同じように恩恵を受けられるとは限りません。消費者が利用するチャネルや、成長する商品カテゴリーを見極めることが重要になります。

市場平均より自社の需要変化を捉える

今回の成長には、セールや天候による季節需要も影響しています。市場全体の回復を追い風として捉えつつも、一時的な需要増と継続的な成長を分けて見る必要があるでしょう。

日本でも猛暑や大型セール、ポイント施策によって、短期間に売上が大きく動くことがあります。EC事業者には、前年同月比だけでなく、商品カテゴリー、流入元、新規・既存顧客、値引き率、粗利などを分解し、何が成長を生んだのかを把握する姿勢が求められます。市場が伸びる局面ほど、売上増加をそのまま自社の競争力と捉えず、再現可能な要因を見極めることが重要です。

参照:Online retail sales surge in the United Kingdom

楽天フランスが2026年末で閉鎖 買収から16年で欧州マーケットプレイスに幕

買い手が見つからず閉鎖を決定

楽天フランスは、2026年末でオンラインマーケットプレイスを閉鎖すると発表しました。トラフィックと売上の低迷を受けて買い手を探していましたが、複数の候補との協議でも、事業を継続できる条件で合意に至らなかったとしています。フランスと同じ体制で運営されているスペインのWebサイトも閉鎖される予定です。

楽天グループは2010年、フランスのオンラインマーケットプレイス「PriceMinister」を2億ユーロで買収しました。当時はAmazonに対抗する欧州の主要プラットフォームへ成長することが期待されていましたが、2016年には評価額が6,500万ユーロまで引き下げられています。2016年以降、アクティブ顧客数は33%、トラフィックは42%減少しました。

PriceMinister創業者らも買収に関心

買い手候補には、PriceMinisterの創業者であるピエール・コシウスコ=モリゼ氏のほか、Cdiscountの親会社Casino、Carrefour、Pixmania、Back Marketなどが挙がっていました。しかし、楽天フランスは、雇用の維持、財務条件、事業を長期的に存続させる能力などの基準を満たす提案は得られなかったと説明しています。

一方、買収に関心を示していたPixmaniaは、売却手続きの進め方に疑問を呈しています。楽天フランスはその主張を否定しており、雇用維持を重要な判断基準としていたことを強調しました。

マーケットプレイスも継続性を見極める時代に

楽天フランスの閉鎖は、規模の大きな企業が運営するマーケットプレイスであっても、買い手と売り手を集め続けられなければ存続が難しいことを示しています。Amazonなどの大手や、特定分野に強いローカルサービスへ利用が集中するなか、中規模の総合マーケットプレイスが独自の立ち位置を維持する難しさが表れました。

出店事業者にとって、販売チャネルの閉鎖は売上だけでなく、商品レビュー、顧客との接点、広告運用、在庫配置などにも影響します。海外モールへ出店する際は、現在の流通規模だけでなく、成長率、運営会社の投資姿勢、地域内での競争力を確認し、自社ECや他モールへ切り替えられる体制を整えておくことが重要でしょう。

参照:Rakuten France is closing

ZalandoがAIロボティクス企業へ出資 返品業務の自動化を加速

ドイツのSereactへ投資

欧州最大級のファッションECプラットフォームZalandoは、ドイツのロボティクス企業Sereactへ出資しました。Sereactは、AIを活用した倉庫・製造向けロボットを開発する企業です。Zalandoは今回の投資を通じ、EC物流の自動化、とりわけ返品処理の効率化を進める考えです。

Zalandoは欧州で事業地域を拡大しており、新たな市場への進出に伴って物流業務も複雑になっています。取扱量が増えれば、返品商品の検品、再処理、再入庫に必要な作業も増加します。ファッションECでは返品対応の負荷が大きく、事業規模の拡大と収益性を両立するうえで重要な課題です。

AIが現場データから学習し、商品を識別

Sereactの主力製品「Cortex」は、複数のロボットシステムを制御し、実際の作業データから学習するAIプラットフォームです。同社のロボットは、商品を認識して正確につかむことができ、返品された商品の検品や再入庫といった作業の自動化に活用できます。

返品処理は、商品の状態や種類が一定ではないため、単純な反復作業よりも自動化が難しい領域です。個別の商品を認識しながら対応できるAIロボットが実用化されれば、人手に依存してきた工程の処理能力を高め、物量の変動にも対応しやすくなります。

AI活用は顧客接点からバックヤードへ

ECにおけるAI活用は、商品説明の生成、レコメンド、問い合わせ対応など、顧客が直接触れる領域で注目されがちです。しかし、Zalandoの投資は、物流や返品といったバックヤードでもAIの導入が進んでいることを示しています。

日本のEC事業者が同じ規模のロボット投資を行うことは現実的ではない場合もありますが、返品理由の分類、検品基準の標準化、再販売可否の判断、在庫への戻し方など、業務をデータ化する取り組みは進められます。将来的な自動化を見据えて、属人的な判断を減らし、返品業務を可視化しておくことが、物流コストの抑制と再販売までの時間短縮につながるでしょう。

参照:Zalando invests in AI robotics

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