【ゲストスピーカー】
谷治 大典さん
有限会社谷治新太郎商店 代表取締役 6代目当主
卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
業界常識を覆す小ロット販売、コロナ禍でEC利用が拡大
柳田さん:ECの成長という観点では、コロナ禍が大きな転機になったのかなと思いますが、いかがでしょうか?
谷治さん:コロナ禍で、ネット通販で物を買うハードルが非常に下がったことは、当社にとって大きな追い風になりました。お客様であるご住職は50〜70代の方が中心で、これまでネットショップを利用したことがないという方も多かったのです。
コロナ禍で外出しづらくなり、Amazonや楽天市場などでネット購入を経験したことで、「ネットは簡単に買えて便利だな。卒塔婆もネットで買ってみよう」と考える方が増えたように感じています。
柳田さん:ネット通販で購入することへのハードルが下がったとしても、数十年から100年単位で付き合いのある取引先から、購入先をECに切り替えるのは、それなりにハードルがあったのではないでしょうか。それでも谷治さんのところで購入する理由があったということですよね。
谷治さん:私は卒塔婆業界のことをまったく知らない状態でビジネスを始めています。妻の実家に初めて行った際、「卒塔婆を作っている」と聞いても、「卒塔婆って何?」というレベルでした。当然、業界の常識もわかっていませんでした。
業界では、1回あたり500本、1,000本という大きなロットで販売し、年間の取引回数を少なく抑えるという商習慣がありました。しかし、ロットが大きいと購入金額も高くなりますし、保管場所も必要になるため、導入のハードルが高くなると感じました。
当社でも当初は50本単位で販売していましたが、「もっと少ないロットで販売したほうがお客様に喜ばれるのではないか」と社内で話し合い、思い切って1本単位で購入できるバラ売りを始めました。
一方で課題になったのが送料です。バラ売りの場合、商品代金より送料のほうが高くなるケースもあります。それでも、まずはやってみようということで、1本単位で購入できる形にしました。
柳田さん:送料のほうが高くなったとしても、実際に購入される方はいらっしゃったのですか?
谷治さん:試してみたところ、送料について大きな問題にはなりませんでした。1本単位で購入される方も多くいらっしゃいます。
当社のお客様は檀家さん向けに利用されるケースが多いため、送料をご負担いただいても会計上でコストを吸収しやすい面があります。また、お試しでさまざまな種類を購入していただき、気に入ったものを次回以降まとめて購入されるケースもあります。
初めてネットショップを利用される方は、「どのようなものが届くのか不安」という気持ちも強いので、サンプル代わりにバラ売りを利用いただき、最終的に継続して使う商品を選んでいただいています。
柳田さん:送料は購入者にご負担いただいているのですね。最近は送料込みの商品も増えていますが、特に小ロットでは送料を適切にいただくことも大切ですよね。
頻繁な注文が関係を育てる!社員の発想から始まったバラ売り戦略
柳田さん:これまでの商習慣を考えると、バラ売りについて社内から反対の声が上がりそうですが、その点はいかがだったのでしょうか?
谷治さん:意外にも社員から、「5本や10本ではなく、いっそバラ売りにしてしまったらどうですか」という声がありました。例えば最小単位を5本にしても、後から他社がさらに少ない本数で販売すれば、「先を越された」と感じることになります。ただ、1本であればそれ以上小さな単位にはできません。
柳田さん:すごい発想ですね。そこまでやり切るというのは。しかも社員さんから出てきたアイデアだったのですね。
谷治さん:そうですね。バラ売りを始めたことで、お客様にも利便性を実感していただけた部分があります。以前は「バラ売りしてほしい」という要望をいただいたことはありませんでしたが、実際に導入してみると、「多少割高でも在庫の無駄が減る」という声を多くいただきました。
柳田さん:お寺さんも経営ですから、使わないものを大量に抱えるより、必要な分だけ購入できるほうが結果的に無駄なコストを抑えられますよね。
もう1つ良い点は、発注頻度が増えることだと思います。例えば500本単位で販売していた場合、年に1回程度の発注で済むかもしれませんが、小ロットであれば月に1〜2回注文するケースもあります。継続的に思い出してもらえることは、ECショップにとって非常に重要です。
接点が増えることで、お客様との関係性も深まりやすくなります。ECは効率的に受注・出荷できる点が強みですが、質問への対応や電話でのやり取りなど、直接コミュニケーションを取る機会があると、お客様との距離も縮まる印象があります。
谷治さん:私も、お客様との関係性を深めることを重視していて、電話でのコミュニケーションを大切にしています。以前は電話対応を減らす方向に舵を切っていた時期もありましたが、最近はその考えを変えています。
実際に電話でお話しすると、お客様が抱えている背景や悩みを知ることができます。電話対応を負荷と捉えるか、お客様理解の機会と捉えるかで大きく変わると思っています。そこには多くのヒントがあるため、最近はできるだけお客様と直接話をするようにしています。
柳田さん:ECを運営していたら、一度は「できるだけ電話を受けないようにしよう」と考えることがあると思います。短期的には効率化できますが、一方で、お客様との直接コミュニケーションから得られるヒントや気づきが減ってしまう面もありますよね。
5,500件のお寺とつながるECショップ、業界をつなぐオンラインサロンへ
柳田さん:最初はご自身で軽トラックに乗って営業していたものの、すべて断られていたというお話でしたが、現在はどのくらいのお寺とお付き合いされているのですか?
谷治さん:およそ5,500件ほどです。
柳田さん:それだけのお寺さんに利用されているということは、従来の取引先とは異なる価値を感じていただけているということですよね。お客様視点で販売方法を見直してきた成果だと思います。
コンテンツによる流入や口コミでの認知拡大に加えて、最近は新たなコミュニティづくりにも取り組まれているとうかがいました。
谷治さん:コロナ禍の頃、お客様から「オンライン法要をやりたいが、ノウハウもなく、実施して良いものか判断がつかない。他のお寺はどうしているのか」と相談を受けたことがありました。
ちょうど懇意にしていたお寺さんがInstagramでオンライン法要について発信されていたので、「実際に取り組んでいるお寺もありますよ」とお伝えしたところ、安心された様子でした。その後も、「他のお寺はどうしているのか」という相談をいただく機会が増えていきました。お話を伺う中で、宗派を超えた横のつながりは意外と少なく、お互いの取り組みについて聞きづらい部分もあると感じました。
そこで、当社がハブとなってお寺同士をつなぐ場が作れないかと考え、Facebookグループを立ち上げ、オンラインサロンを始めました。まだ活発な状態とは言えませんが、宗派を超えてコミュニケーションできる場として育てていければと考えています。
柳田さん:新しい取り組みに関心のある方が集まる場として面白いですね。特にご年配の方が多い業界では、まず安心して参加できる空気づくりが大切だと思います。オンラインだけでなく、リアルで交流できる機会があると、さらにコミュニケーションが活性化するかもしれませんね。一方で、この取り組みは直接的な売上にはつながりにくい部分もあるのでしょうか?
谷治さん:オンラインサロンは無料で参加いただいているため、直接的な売上を目的にしているわけではありません。期待しているのは継続的な認知です。
これまで取引のあった卒塔婆店が廃業した際や、何か困りごとが起きた際に、「そういえば」と当社を思い出していただき、ご利用につながるケースが多くあります。そうしたタイミングで思い出していただける存在になれればと考えています。
柳田さん:最後に、今後中長期的に取り組んでいきたいことを教えてください。
谷治さん:EC販売はもちろん継続していきますが、今後はもう少し裾野を広げ、お寺が抱える課題を解決できるコンテンツや、異業種も含めて課題解決につながる企業を紹介していきたいと考えています。
コンサルティングという形ではありませんが、お寺にとっての相談役やアドバイザーのような立場を目指していきたいですね。
おわりに:販売にとどまらない、お寺を支えるECショップへ
谷治新太郎商店は、卒塔婆という専門性の高い商材を扱いながら、時代の変化に合わせて販売方法や情報発信のあり方を見直してきました。バラ売りの導入や、顧客同士がつながるオンラインサロンの開設など、従来の商習慣にとらわれない取り組みを進めたことで、5,500件規模のお寺との取引につながっています。
ECでの販売にとどまらず、お寺が抱える悩みや疑問に寄り添う姿勢は、継続的な認知や信頼構築にもつながっていることがうかがえます。お寺の相談役のような立場へと役割を広げていく考え方は、伝統産業に限らず、多くのEC事業者にとってヒントになる取り組みと言えそうです。
EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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