記事の概要

楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、有限会社谷治新太郎商店の代表取締役である谷治大典さんに「コンテンツ×EC」をテーマにお話いただく回をご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
谷治 大典さん
有限会社谷治新太郎商店 代表取締役 6代目当主
卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)

卒塔婆をECで販売。伝統工芸の老舗が挑んだ新しい販売の形

柳田さん:谷治新太郎商店という社名からは取り扱い商材が想像しづらいのですが、どのようなものを販売されているのでしょうか。

谷治さん:弊社は、お墓の後ろに立てる卒塔婆をECで販売している会社です。

柳田さん:6代目ということで長い歴史をお持ちですが、これまではECではなく、従来の商習慣に則った販売が中心だったと推察します。なぜECでの販売に踏み込まれたのでしょうか。

谷治さん:卒塔婆を取り扱っていたのは妻の実家で、私は婿養子として入り、2012年に代表取締役に就任しました。この業界は、いわゆるどんぶり勘定な側面もあり、代表就任後に帳簿を確認したところ、売上が急激に落ちるのではなく、徐々に減少していることがわかったのです。

売上減少の背景には、1寺院あたりで使用される卒塔婆の本数が減っていることがあります。そのため、既存取引だけでは販売本数を伸ばすことが難しい状況でした。まずは自らトラックで寺院を一軒ずつ訪問し、2〜3か月ほど営業活動を行いましたが、新規契約には至りませんでした。卒塔婆の業界は歴史が長く、100年単位の取引関係が続いているケースも珍しくなく、新規参入のハードルは高いと感じました。

そのような中で、販路拡大の手段として「インターネットで販売する」という選択肢を検討します。卒塔婆をネットで販売することに対しては、当初は需要に対する不安もありましたが、まずは試してみようと考え、ECを始めるに至りました。

社内や同業他社からは「需要があるのか」という声もありましたが、2013年にネットショップを立ち上げ、現在で約10年が経過しています。

柳田さん:立ち上げ当初から売上は伸びましたか。

谷治さん:最初の3年ほどは、ほとんど売れませんでした。

突破口はコンテンツ。老舗が見つけた成長のきっかけ

柳田さん:売上が伸びなかった3年間で、改善に向けた取り組みはどのようなことをされていたのでしょうか。

谷治さん:広告出稿を試したり、EC関連のセミナーやコミュニティに参加したりと、情報収集と施策の実行を繰り返してきました。EC関連のメディアも参考にしながら、サイトデザインや販売方法の見直しなど、さまざまな試行錯誤を行っています。その結果、徐々に認知が広がっていったと感じています。

柳田さん:広告施策については、そもそも卒塔婆に関心がある層が限られると思います。認知を広げるための取り組みが重要になりそうですね。

谷治さん:最近では「お寺のインボイス対応」に関する記事を専門家に執筆いただくなど、寺院関係者にとって有益なコンテンツを蓄積してきました。情報発信を継続することで、「あのコンテンツを出している会社が卒塔婆を販売している」と想起してもらえる状態を目指しています。その結果、狙い通りコンテンツ経由の流入が増加しています。

柳田さん:以前は「1日10件の問い合わせがあれば良い」というお話もありましたが、現在の状況はいかがでしょうか。

谷治さん:扱っている商材の特性上、一般的なBtoC商材のように大量の注文が入るわけではありませんが、2015年当時の月商規模が、現在では日商に相当する水準まで伸びています。2016〜2017年頃から、売上は大きく成長するフェーズに入りました。

柳田さん:その成長のきっかけは何だったのですか。

谷治さん:コロナ禍も一つの要因ではありますが、それ以前から売上は伸び始めていました。背景としては、寺院間での紹介、いわゆるクチコミの影響が大きかったと考えています。実際に、ある住職の方が複数の寺院をご紹介くださり、短期間で顧客数が増えたこともありました。

柳田さん:寺院同士のつながりは強いのでしょうか。

谷治さん:宗派ごとのつながりはありますが、全国的に横断的なネットワークがあるわけではなく、比較的限られた範囲での関係性が中心だと認識しています。

柳田さん:そのような環境でもクチコミが広がったというのは興味深いですね。

谷治さん:住職の方々は、檀家からの相談に対応することには長けていますが、ご自身が直面している課題、例えば檀家離れや少子高齢化による減少といったテーマについて、相談できる相手が限られているケースも多いのではないかと感じています。

コンテンツ×ECで成長。自社ドメインへステージアップ

柳田さん:日本では宗教意識が比較的強くないことや、永代供養の選択肢が広がっていることもあり、卒塔婆の利用機会は減少傾向にあるように思います。他社にとっても厳しい市場環境だったかもしれません。

谷治さん:そのような状況にある企業も多いのではないかと感じています。

柳田さん:ECでの販売については、谷治さんが先駆けだったのですかね。

谷治さん:厳密には、私より前にECで販売していた事業者も存在します。ただし、卒塔婆製造業者というよりは、仏具店が仕入れての販売や、木工品を扱う事業者が一部商材として取り扱っていたケースが中心でした。製造業者としてECに取り組んだのは、早い段階だったと認識しています。

柳田さん:従来は地域密着型のビジネスが中心だったということですね。ECに取り組む中で試行錯誤を重ねた結果、コンテンツ施策が効果を発揮したとのことですが、具体的にはどのような取り組みをされていますか。

谷治さん:現在、購入者の流入経路として最も多いのはコンテンツ経由です。特に、ECサイト内に組み込んでいるワードプレスで公開しているブログ形式の記事が伸びています。そのほか、SNSやYouTubeも活用しています。

また、今年(2023年)5月に全面リニューアルを行いました。売上の拡大に伴い、既存のカートシステムでは実現が難しい要件が増えてきたためです。

柳田さん:事業の成長に合わせてシステムを見直されたということですね。これまで継続的に情報収集をされていたことも、適切なタイミングでの移行判断につながっているのかもしれません。

伝統工芸の分野では従来の手法を踏襲するケースも多い中で、コンテンツ発信やシステム刷新など、複数の取り組みを組み合わせて事業を拡大されている点が印象的だと思いました。

おわりに:伝統産業の認知を高める、ECとコンテンツの力

卒塔婆というニッチかつ需要が縮小傾向にある市場において、谷治新太郎商店は「情報提供」を軸に販路拡大を進めてきました。ECへの参入やコンテンツ発信を通じて認知を高め、結果としてコンテンツ経由の流入や寺院間の紹介につながっています。

また、EC基盤の刷新やSNS・動画の活用など、複数の施策を組み合わせて取り組んできた点も特徴的です。これらの取り組みは、ローカルビジネスや専門性の高い商材を扱う事業者にとって、販路開拓の一つの参考事例といえるでしょう。

市場環境が厳しい中でも、情報発信や販売チャネルの見直しによって接点を広げている点は、既存の商習慣に依存しない取り組みとして注目されます。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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