
2024年10月、リングロー株式会社(以下、当社)は中古PCブランド「R∞PC(アールピーシー)」を扱うECサイトを「R∞PC(アールピーシー)ダイレクト」としてリニューアルしました。現在では、リニューアル前と比べて月商は約20倍に成長を遂げました。
ただし、この成果はリニューアル直後に得られたものではありません。むしろ、リニューアル前だけでなくリニューアル後も一貫して、新規のお客様に、商品の価値がうまく伝わらないという課題があり、この克服が最も大変な点でした。
本記事では、R∞PCというブランドの考え方と、その価値が「伝わらない状態」からどう抜け出したのか。リニューアル前後の停滞も含めて振り返ります。
佐藤 鴻地
リングロー株式会社
EC課
青山学院大学を卒業後、リングロー株式会社に入社。卸営業を経験後、車中泊で全国の自治体を巡り、廃校を利活用する地域密着型の業務にも従事。現場で培った視点をもとに、現在はEC事業を担当。自社ECサイトである「R∞PCダイレクト」の運営責任者として、サイトリニューアル後の売上成長を推進。良い商品でも伝わらなければ売れないという前提のもと、価値の言語化と見せ方の設計を追求している。
R∞PCダイレクト:https://rpc.ringrow.co.jp/
この記事の目次
まずR∞PCとは何か|中古PCを“売り切り”にしない考え方
R∞PCは、当社が展開する無期限保証付きの中古PCブランドです。

当社では元々、中古PCの卸売り販売をメインに、業界トップクラス(※1)の生産台数を誇ります。一方で、” パソコンを購入するなら新品”という考え方は根強く、中古PCには
- すぐに壊れそう、汚れていそう
- 前の人のデータが残っていないか心配
- アフターサポートがなく素人には難しい
というイメージが強いのが現状です。
そんなイメージを払しょくするとともに、新品以外の選択肢を持つ人が増えるよう、
- 保証期間を設定しない(※2)
- 業界初、お客様原因の故障も保証対象
- 回数無制限の相談サポート
- 明確な整備基準で見た目にもこだわり
といった、お客様が新品よりも安く、中古よりも安心して使えるパソコンを追求した結果、誕生したのがR∞PCです。
※1:当社比
※2:現在は2年保証(R∞PC LIGHT)も販売しています。

リニューアル前|商品数が少なく、期待値も低かった
リニューアル前のサイトは、あえて商品ラインナップ数を絞って提供していました。
ありがたいことに、一度R∞PCを購入したお客様のリピート率が非常に高かったことから、リピーターの受け皿となるサイトとして運用していたことが理由です。
パソコンは、3年~5年のサイクルで買い替えることが一般的と言われていることから、リピーターのためのサイトとして、最小限の運用コストに抑えられていました。
その結果、集客に大きな力を注ぐ必要がない状態が続いていました。
リニューアルで考えたこと|「初見のお客様に検討してもらうにはどうしたらいいか」
リニューアルにあたって、最初に考えたのはシンプルに、売るためには、何を変えなければいけないのかという問いでした。
そこで、まず取り組んだのが商品ラインナップの拡充です。
- 在庫リスクは多少覚悟する
- お客様の要望に応えられる幅を持たせる
この判断のもと、商品点数をリニューアル前の約10倍まで広げました。
あわせて、SEO対策としてブログ記事の作成にも着手し、徐々にアクセス数が伸び始めます。
それでも売上が伸びない原因|「事業者目線」から抜けられていなかった
商品数を増やし、アクセスも増えました。それでも、売上は思うように伸びませんでした。この時点でようやく、「売れない理由は、商品数や流入ではない」という仮説が浮かびました。
振り返ってみると、私たちは商品ページを作る際、
- どうすれば早く出品できるか
- 撮影工数をいかに減らすか
- 情報入力を簡略化できないか
といった、社内オペレーションの効率を最優先していました。
その結果、商品ページは
- 画像は、スペックが記載された商品サムネイルが1枚と、別機種の状態サンプル画像が1枚の計2枚
- 説明欄も、最低限の情報(CPUやメモリ、ストレージなど)しか掲載しない
という構成がほとんどでした。


しかし、お客様が本当に知りたいのは、
- その型番の具体的なイメージ
- 実際の質感
- どんなポートが、どこについているのか
- 中古の程度
といった手に取れない不安を埋める情報でした。
商品ページの作り直し|とにかく「見せる」ことに振り切る
そこから、商品ページの考え方を大きく変えました。具体的には、
- 角度を変えた複数枚の写真
- 接続ポート(インターフェース)の詳細な掲載
- 実物を確認しているかのような情報量
- キズなどの使用感を言語化・可視化したサムネイル画像
などを掲載するようにしました。
正直、工数はかなりかかりました。ただ、実際に触れないお客様にとっては大きな納得材料になると判断しました。



数字に表れた変化
この改修の効果は、すぐにエンゲージメント率にも表れました。商品ページをきちんと見てもらえるようになり、CVRも向上していくことで、購入前の不安が軽減されていった実感がありました。
カスタマーサポートの声が、次の一手を教えてくれた
もう一つ大きかったのが、カスタマーサポートとの連携です。日々のお問い合わせの中で、「下取りはできないのか」という声が多い、という共有がありました。
そこで、R∞PC購入者を対象とした下取りキャンペーンを実施したところ、 特典設計も相まって、想定以上の反響を得ることができました。

TikTokでの発信が、想像以上の広がりを生んだ
このキャンペーンの告知には、TikTokも活用しました。これが想定していなかった大きな効果につながり、それまで5,000回再生されれば上出来という感覚だった投稿が、 本キャンペーンでは約16万回再生まで伸びました。
結果として、指名検索の増加やブランド認知の向上といった副次的な効果も生まれています。
売上が伸びなかった理由は、意外とシンプルだった
ここまで振り返って思うのは、当初売上が伸びなかったのは、「施策の量が足りなかったからではなく、お客様の見ている景色を想像できていなかったから」という理由でした。
- 事業者としての効率
- 在庫やオペレーションの都合
それらを一度横に置き、「お客様は何を見たくて、何を知りたいのか」に向き合ったことが、結果として数字につながったのだと思います。
今回ご紹介した取り組みは、一度やって終わりの改善ではありません。
- 商品の見せ方を見直す
- カスタマーサポートの声を拾う
- 不安を減らす体験を積み重ねる
そうした考え方は、現在の施策にも引き継がれています。
その一例として、 R∞PCダイレクトでは「8周年記念キャンペーン」を実施中です。これは単なる値引き企画ではなく、「買ったあと、不要になったPCをどうするか」「必要なソフトを、できるだけ負担なく揃えたい」といった、実際に多く寄せられてきたお客様の声をもとに設計したものです。
買取りキャンペーンやOfficeソフトの特別価格、購入者向けのプレゼント企画などを通じて、購入前から購入後までの体験を、より納得感のあるものにできればと考えています。

今後のリングロー社のECについて|価値訴求のビジョン
まだまだ価値の訴求は道半ばではありますが、これまでさまざまな施策に取り組む中で、少しずつ「次に向かうべき方向」が見え始めてきました。
例えば、反響のあったTikTokでの発信を起点に、今後はより多様なチャネルを使ってR∞PCの魅力を伝えていくことも考えています。
また、オンラインに限らず、お客様との接点そのものを見直すことも視野に入れています。リユース経済新聞の「リユース業界の市場規模推計2025(2024年版)」によると、国内のリユース市場規模は3兆円を超える水準まで成長し、 環境省は2030年に4.6兆円もの市場規模を目標としています。その中でもIT機器は、法人・個人を問わず需要が底堅く、 今後も利用シーンの広がりが期待される分野の一つです。
一方で、「中古=不安」「品質がわかりにくい」といった印象から、 本来の価値が十分に伝わりきっていない側面があるのも事実だと感じています。R∞PCの価値は、単にスペックや価格だけで語れるものではありません。 実際に商品に触れたときや、サポートを通じて安心を実感したときに、 初めて伝わる部分が大きいと考えています。
「R∞PCダイレクト」という名前には、お客様と直接向き合い、声を受け取りながら、 商品やサービスを磨き続けていきたいという想いを込めています。人を介して知り、体験を通じて理解し、必要なときに思い出してもらえる存在になること。そして、役目を終えたパソコンが、次の誰かのもとへとつながっていく。
そんな循環を感じられる世界観を、大きな可能性を持つ中古市場の中で、少しずつ形にしていきたいと考えています。

終わりに
今回のリニューアルと試行錯誤を通じ、「価値がない」のではなく、「伝わる形になっていない」だけというケースが多いことを強く感じました。
もし読者の皆様で
- 商品には自信がある
- 施策もやっている
- それでも新規のお客様に選ばれない
という状況にある方がいれば、お客様はどんな悩みがあるのかを一度見直してみると、意外とシンプルな答えが見つかるかもしれません。
R∞PCダイレクト
https://rpc.ringrow.co.jp
リングロー株式会社
https://www.ringrow.co.jp/
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