現場の工夫には限界がある?〜アナログな対策とツールが定着しない理由〜【利益を生む梱包DX:第2回】

前回は、梱包サイズの最適化がいかに利益に直結するかをお伝えしました。これを受けて「よし、今日から現場で徹底させよう」と考えた担当者の方も多いはずです。しかし、実はここからが本当の苦難の始まりでもあります。

梱包サイズの最適化は、現場の努力だけでは限界があります。多くの物流現場がこれまで取り組んできた梱包改善の歴史を振り返りながら、その構造的な課題を探ります。

この記事の執筆者

ROMSマーケ・広報担当

国産マテハンメーカー・株式会社ROMSのマーケティング・広報担当。日本の物流・製造現場の課題に真摯に向き合い、現場の声を形にしたプロダクトの価値を広めるべく活動中。現場の方々が抱える悩みや「物流2024年問題」などの社会課題に対し、ユーザー目線に立った実戦的なソリューション情報をお届けできるよう、誠実な情報発信を心掛けています。

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1.現場が積み上げてきた工夫

物流現場は資材価格の高騰に対して決して手をこまねいていたわけではありません。コスト意識の高い現場ほど、以下のような対策を講じてきました。

  • 「この商品は○号箱」という暗記とマニュアル化:単品出荷が多いショップでは、商品ごとに箱を指定するリストを作成し、現場に掲示しています。
  • 熟練者による「目利き」:ピッキングされた商品群を見て、瞬時に「これは60サイズ」「これは80サイズ」と指示を出す「梱包の司令塔」を配置しているケースもあります。
  • 箱の加工(段ボールを折る):高さが余る場合に段ボールの四隅に切り込みを入れ、折り曲げてサイズをダウンさせる。これは最も一般的で、かつ効果的な現場の知恵です。
  • 段ボールサイズの印がついたシート:梱包前の商品をシートに並べるとおおよそのサイズ感がつかめる、オリジナルな工夫が見られる現場もあります。

2.「組み合わせの複雑さ」がマニュアルを破壊する

しかし、これらの工夫は「複数商品の同時購入」が発生した瞬間に限界を迎えます。

単品ならマニュアル化できますが、「A商品2個+B商品1個+C商品1個」という組み合わせになった途端、マニュアルが機能しなくなる、現場の工夫でカバーしきれなくなるからです。

  • 計算の限界:よくあるマニュアル化の方法として計算式を取り入れることがあります。この場合商品の合計容積だけで判断すると、細長い商品が入らないような小さな箱を判定してしまうことがあります。
  • 精度の悪化:とりあえず大きめの箱が指定されるようになったり、逆に小さいサイズが指定されるようになったりと、結局現場で箱を入れ替えるという二度手間が発生。作業効率を著しく下げてしまいます。

3.属人的な運用が最大の問題

現場の工夫をルール化しても、それが長続きしないのには明確な理由があります。

  • 熟練者の離脱:「あの人ならわかる」という状態は、その人が休んだり退職したりした瞬間に物流品質が崩壊することを意味します。
  • 新商品の追加:毎シーズンの新商品が出るたびにマニュアルを更新し、全スタッフに周知徹底するのは、想像を絶する運用コストがかかります。
  • 「とりあえず」の誘惑:出荷締め切り時間が迫る中では、熟練者ですら「考えている時間がないから、確実に入る大きな箱で送ってしまえ」という心理が働くのは仕方のないことでしょう。

4.ソリューション製品の導入ハードル・継続利用が難しい理由

現場の梱包業務に課題を感じた際、次に検討されるのが梱包サイズ判定ツールや自動梱包機などのソリューション導入ではないでしょうか。しかし、現実には「コストが高すぎて導入を断念した」「せっかく導入したのに、結局使わなくなってしまった」という声を多く耳にします。なぜ、効率化を目的としたソリューションが定着しにくいのか。そこには大きく分けて「物理的なコスト」と「判定の精度」という2つの壁が存在します。

ハードウェア導入の極めて高い壁

梱包の自動化を検討する際、まず候補に上がるのが製函機や封函機といった「自動梱包機」です。これらは確かに作業の省人化に寄与しますが、サイズ最適化という観点ではいくつかの課題があります。

  • 目的の不一致と高額な投資:多くの自動梱包機は「箱を組む・閉じる」作業の自動化が主目的です。ダンボールの中身に合わせて高さを変える高度な製品もありますが、導入コストは数千万円、ハイエンドな三辺可変モデルになれば1億円を超えることも珍しくありません。
  • 物理的な制約:これらはあくまでハードウェアであるため、設置スペースの確保やメンテナンスコスト、さらには対応できる箱サイズの制限など、導入までのハードルが極めて高いのが実情です。

ソフトウェアにおける「計算精度」の限界

一方、システム上でサイズを判定するソフトウェア製品も存在しますが、こちらも「現場への定着」という面で大きな課題を抱えています。

  • ルール化が招く精度の低下:多くのツールは商品の「容積」や単純な計算ルールに基づきサイズを判定します。ルール化で計算は早くなりますが、柔軟性に欠けるという弱点があります。
  • 「折れば入る」が判断できない:現場のベテランであれば「これは少し箱を折れば入る」「商品を重ねれば隙間に収まる」と判断できる場面でも、単純なツールでは「入り切らない」と判定され、1サイズ上の箱が指定されてしまいます。
  • 現場の信頼を失う精度の問題:指定された箱に商品が入らなかったり、大きな箱が指定され続けたりすると、現場スタッフは次第にツールの指示を無視するようになります。最終的には「自分で選んだほうが早い」という結論に至り、高価なシステムも機能しなくなってしまいます。

形状が一定の商材であれば簡易的なツールでも機能しますが、アパレルや雑貨など、形が変わるものや組み合わせが多岐にわたる現場では、従来の判定ロジックでは追いつきません。結果として、導入自体がミスマッチとなってしまうケースが少なくないのです。

まとめ:現場の工夫に頼り切らない仕組みづくりを

これまで現場が重ねてきた工夫は、決して無駄ではありません。しかし、近年の複雑化するEC物流において、人間の記憶力や計算力だけで最適解を出し続けることは、もはや限界に達しています。

大切なのは、現場に「頑張らせる」ことではなく、現場が「考えなくても正解に辿り着ける」仕組みを作ることです。次回の最終回では、この「思考の自動化」がいかにして物流のDXを実現するのかについて深掘りします。

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