EC利用率は高いのになぜ売れない?バーチャル体験で越える“体験の壁”とOMO戦略

ECは生活者の購買行動に深く浸透している一方で、アクセス数が伸びても購入につながらないブランドは少なくありません。特に、コスメ・ファッション領域では「試せないこと」が購入の障壁となり、オンラインとオフラインで購入率に差が生じてしまいます。

本記事では、その背景にあるECの課題を整理しながら、バーチャル体験を中核としたOMO戦略が、どのようにして購買行動を動かすのかを解説いたします。

この記事の執筆者

磯崎 順信
パーフェクト株式会社
日本事業責任者

テクノロジー関連の外資系企業にて営業職を中心にキャリアを積み、複数社で事業成長を牽引。2007年にロヴィ(現 TiVo)に入社し、セールス・バイス・プレジデントを歴任。2013年にはOoyala Japan(オンライン動画プラットフォーム事業)のカントリー・マネージャーに就任し、日本市場での事業展開を主導。2015年よりパーフェクト株式会社 代表取締役社長を務め、2025年より現職。

URL:https://www.perfectcorp.com/ja/business

EC利用率は高いのに、なぜ購入につながらないのか

日本では、多くの消費者が日常的にECサイトを訪れ、商品を検索したり比較したりすることが当たり前になっています。

一方で、日本におけるECの利用率(ECサイト訪問・検索)と実際の購入率(ECサイトでの購入)には大きなギャップが存在します。日本人は買い物で失敗したくないという心理が働きやすいので、ECサイトの訪問・検索頻度は他国と比べて比較的高いと言われています。ですが、化粧品や衣類・服飾品のように、「試すこと」が購入の判断に直結する商品では、オンラインで情報を集めても最終的には実店舗で購入する傾向があると考えられます。

グラフ

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。
生活者のEC利用実態調査2024(いつも社調査

また、いつも社の調査では、美容品・コスメはAmazonなどの総合ECよりも、ブランドの自社ECで購入される割合が高いことも特徴です。これは、ブランドECが一定の集客や関心を獲得できている一方で、消費者が「納得して購入に踏み切るための体験」を十分に提供しきれていない可能性を示唆しているといえるでしょう。

利便性だけでは超えられないECの限界

ECでの購入率を上げるため、これまで多くのブランドがUI改善や決済フローの最適化など、利便性の向上に注力してきました。もちろんこれらは大切な取り組みですが、必ずしも購入につながるとは限りません。それは、消費者がECに求めている価値は「スムーズに買えること」だけではないからです。

特にコスメ・ファッション領域においては、

  • 実際に試したい
  • 自分に似合うかを確認したい
  • 失敗しないという安心感が欲しい

といった、実店舗では自然に満たされる体験が、オンラインでは十分に補完されていないのが現状です。この体験価値の不足、いわば“体験の壁”こそが、ECでの購買を躊躇させる大きな要因となっています。

バーチャル体験でOMOを強化し“体験の壁”を越える

こうした課題に対して、有効な解決策の一つとして注目されているのが、バーチャル体験を中核に据えたOMO戦略です。OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインを単に連動させるのではなく、それぞれの特性を生かしながら、顧客にとって一貫性のある体験を設計していく考え方を指します。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション, Teams

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。
バーチャル体験のイメージ

バーチャル体験を取り入れることで、これまで実店舗でしか得られなかった「試せる」「自分に似合うか確かめられる」「失敗しにくいという安心感」を、オンライン上でも提供することが可能になります。

さらに、バーチャルならではの付加価値を組み込むことで、商品理解や納得感が深まり、購買判断を後押しするだけでなく、実店舗への来店意欲を喚起する効果も期待できます。OMOの視点において、バーチャル体験はECと店舗をなめらかにつなぐ、極めて重要なタッチポイントとなる存在だといえるでしょう。

OMO設計における重要なポイント

OMOを成功させるうえで重要なのは、店舗とバーチャルを単に「つなぐ」ことではありません。それぞれの強みや役割を明確に定義したうえで、顧客視点で一つの体験として設計することが不可欠です。

オンラインとオフラインが相互に補完し合うことで、購買前の情報収集から検討、購入、購入後のフォローに至るまで、一貫性のある顧客体験が生まれます。OMO設計とは、チャネルを横断する導線を整えるだけでなく、体験の質そのものを高める取り組みだといえるでしょう。

店舗の役割

実店舗は、商品を実際に手に取り、質感や使用感を確認できる「タッチ&フィール」の場であると同時に、プロのスタッフによる専門的なアドバイスや、対面ならではのコミュニケーションを提供する重要な接点です。

消費者に安心感と納得感を与え、購入の最終判断を後押しする「最終体験の場」としての役割を担います。さらに、購買という行為を単なる「購入」で終わらせるのではなく、そのプロセス自体を楽しめる体験として設計できるかどうかも重要なポイントとなります。

ECの役割

一方、ECやバーチャル体験は、パーソナライズされた体験への入口として機能します。トライオンや診断を通じて消費者の好みや特徴を把握することで、商品選びを早い段階からスムーズにサポートできます。さらに、AIレコメンドやAIエージェントを活用することで、来店前後も店舗スタッフの接客を補うような体験を提供でき、同時に購買行動のデータを蓄積する重要な接点にもなります。

ビジネス成果につながる「質の高いバーチャル体験」

黒いシャツを着ている女性

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

質の高いバーチャル体験は、単に「試せる」体験を提供するだけのものではありません。体験の精度や設計次第で、ブランドの印象を左右する要因となり、さらに売上や業務効率といったビジネス成果にも直結します。

店舗で得られる「納得感」をオンラインでも実現

テクノロジーの進化により、これまで実店舗でしか得られなかった体験に近い価値を、オンライン上でも提供できるようになりました。メイクアイテムのカラーや質感、アパレルの素材感やディテールまでを高精度に再現することで、消費者は使用後のイメージを具体的に想像でき、購入に対する不安が軽減されます。

さらに、AIレコメンドやAIエージェントといったパーソナライズ機能を活用することで、店舗スタッフに近いアドバイスをバーチャル上で提供することも可能に。複数のラグジュアリーブランドのアイテムを同時に試すなど、店舗では実現しにくい体験を提供できる点もバーチャルならではの強みです。

数値で見えるバーチャル体験の成果

質の高いバーチャル体験は、「楽しい」「便利」といった感覚的な評価にとどまらず、明確な数値としても成果が表れやすい点が特徴です。バーチャルトライオンや診断機能を導入することで、ECサイトの滞在時間やお気に入り登録数の増加が期待できます。

さらに、ユーザー一人ひとりに合わせた情報提供が可能になることで、これまで関心のなかった商品やカテゴリにも自然と興味を持ってもらいやすくなり、購買検討の幅を広げる効果も生まれます。

接客品質と業務効率を同時に高める

事前にトライオンや診断を済ませた状態で来店することで、店舗での接客は一人ひとりの状況に即した、より的確でパーソナライズされたものになります。その結果、顧客満足度を高めながら、スタッフは必要な提案に集中できるようになり、人的リソースの最適化や業務効率の向上が可能に。

さらに、バーチャルトライオンによって購入後のミスマッチを未然に防ぐことで、返品率の低下にもつながり、店舗・ECを含めたオペレーション全体の効率向上に寄与します。

データ活用による中長期的な価値を創出

バーチャル体験を通じて得られるトライオン履歴や診断結果といったデータは、マーケティングにおける貴重な資産となります。これらのデータを分析・活用することで、顧客ニーズや嗜好をより深く理解でき、マーケティング施策の精度向上や商品企画への反映が可能に。バーチャル体験の向上は、単なる体験改善にとどまらず、継続的な価値創出を支えるデータ基盤としても機能していきます。

バーチャル体験を軸にしたOMO成功事例

株式会社コーセーが展開する肌チェックツール「KOSÉ HADA mite(ハダミテ)」は、AIによる肌診断や肌色分析・バーチャルメイクを搭載した総合肌分析サービスです。肌状態を高精度に可視化し、その診断結果に基づいた最適なスキンケアを提案します。

導入後は旧サービスと比べて利用者数が約4倍に拡大。さらに、利用者の約41%が店頭でKOSÉ化粧品を購入するなど、ECと実店舗それぞれの強みを生かしたOMO施策として、幅広い世代の購買行動を促しています。

OMOがもたらす中長期的なビジネス価値の創出

購入をためらわせる“体験の壁”は、価格や利便性だけでは解消できません。バーチャル体験を軸にしたOMO戦略は、オンラインと店舗の体験をつなぎ、顧客に納得感のある購買体験を提供します。

さらに蓄積されるデータは、短期的な売上だけでなく中長期的な価値創出にもつながります。商品提案や売り場設計の最適化にもつながり、継続的なビジネス価値の創出を支えていくでしょう。

パーフェクト株式会社
URL:https://www.perfectcorp.com/ja/business

あわせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ