記事の概要

楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、株式会社レトロスペクトの代表取締役である杉下峻吾さんに、「Web接客」をテーマにお話いただく回をご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
杉下 峻吾さん
株式会社レトロスペクト 代表取締役
フルーツギフト専門店「蝶結び

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)

「食べ比べギフト」で見出した、自分たちにしか出せない価値

柳田さん:まず、レトロスペクトではどのような事業をされているのかお聞かせいただけますか。

杉下さん:フルーツギフト専門店「蝶結び」を運営しています。年間を通して、さまざまな産地の旬のフルーツを取り寄せ、自社で組み合わせやラッピングをアレンジし、ギフトとしてお客様にお届けしています。

柳田さん:元々は百貨店で展開されていたと伺っています。

杉下さん:叔父がデパ地下で、お客様と相談しながらフルーツのギフトをお渡しする店舗を運営しており、私もそこで7〜8年ほど働いていました。

経営者である叔父は高齢だったため、私が事業を引き継ぐかどうかという話が出ていたのですが、ちょうどその頃にコロナ禍になり、緊急事態宣言の影響で百貨店はしばらく休業することになってしまったのです。再開しても回復には時間がかかるだろうと予想される中、叔父は閉店を決断。私の仕事も同時になくなる状況でしたので、「ネット販売でフルーツギフトを届けられないか」と考え、「蝶結び」を立ち上げました。

柳田さん:立ち上げ当初から売れたのでしょうか。

杉下さん:最初は苦労しました。自分たちの“色”を出さなければ売れないと考えていたので、ECモールで勝負しようとは思わず、お客様とより近い距離で仕事ができる自社サイトを立ち上げることに。

私たちは産地でも農家でもないため、フルーツの組み合わせによって価値をつくるしかありません。そこで、「全国からフルーツを集められる環境にいる私たちだからこそ出せる強みは何か」を考え、「1つのギフトセットで食べ比べができる」商品を販売し始めました。

ECサイトをオープンしてから4〜5か月ほど経った頃です。コロナ禍で外出や旅行ができない状況の中、「毎年楽しみにしていた友人とのいちご狩りに行けないから、その代わりにいちごを送るね」といった理由でご購入くださる方が多数いらっしゃいました。

これが1つの転機となり、食べ比べや、さまざまな産地の組み合わせを届けることこそが、私たちが提供できる価値だと気づいたのです。そこから空気が変わり、今日まで続けてこられています。

ネットだから伝えられる「違い」を楽しむ食べ比べギフト

柳田さん:さまざまな品種のフルーツを組み合わせるのは手間がかかりそうですね。

杉下さん:すべてのフルーツを自社の出荷作業場に仕入れ、全て検品したうえで、お届け希望日の前日に出荷するというのが基本のスタイルです。フルーツは鮮度が命ですので、前日に自分たちの目でしっかり確認したものでなければ安心してラッピングができません。また、配送に耐えられるよう専用の容器も用意しています。

柳田さん:実店舗で品種の組み合わせを販売している例はあまり見ない印象です。

杉下さん:そうですね。私も百貨店で働いていた時代には、そうした発想はありませんでした。

柳田さん:ネットショップを始めたことで、ただ包むだけでは売れないと考え、工夫として品種の組み合わせに挑戦されたのですね。

杉下さん:市場から仕入れる際には、各地のさまざまなフルーツが集まってきます。その環境が身近だったので、品種を組み合わせること自体は、私にとってあまり特別なことではなかったんです。

柳田さん:いくつかの品種をレコメンドするようなイメージですよね。

杉下さん:そうです。例えばイチゴでも、しっかりと味が濃い品種もあれば、少し酸味を感じる品種もあります。お客様には食べ比べを通じて好みの品種を見つけてもらい、次にスーパーでお買い物をされるときに「これは私の好きなイチゴだ」と手に取っていただけるようになったら嬉しいと、果物屋として思っています。

イチゴだけでなく、桃、ブドウ、柑橘など、年間を通してさまざまな産地・生産者のフルーツを詰め合わせ、食べ比べていただくことが商品の軸になっています。

柳田さん:お客様にとっては“試せる”のが魅力ですが、販売側はかなり手間がかかりますね。

杉下さん:フルーツやギフトの業界で仕事をしている以上、このくらいの手間はある意味“普通”なのかなと思っています。

イチゴを4種類組み合わせるといっても、百貨店時代からメロンとイチゴなど異なる果物を組み合わせること自体は一般的でしたので、手間としてはそこまで変わらないと感じています。

実店舗にもネットショップにも、種類の異なるフルーツを組み合わせてギフトにしているお店は多数あります。その中で名もない私たちがどう違いを出していくか悩む中で、「食べ比べ」というジャンルは面白いかもしれないと感じ、たどり着いたのが今のスタイルです。

柳田さん:苦しい状況でなければ、逆に思いつかなかった発想かもしれませんね。

杉下さん:そうですね。ネットショップを始めれば“自動販売機”のように売れていくのでは……という甘い期待がどこかにあったと思います。

でも実際にオープンしてみると、見ていても「これはつまらないお店だな」と感じるし、売上も伸びない。そこから「特徴を出さなければ」と考え抜いた結果、今の食べ比べスタイルに行き着きました。

フルーツには多様な表現がありますが、同じイチゴが並んでいるよりも、色や形が少しずつ違うイチゴが並んでいる写真のほうが一目で違いがわかります。これはWebならではの強みだと思います。

柳田さん:ギフトを贈る側としても、話題になって良いですね。

杉下さん:「食べ比べて、どれがおいしかったか教えてね」というメッセージを添えて贈られる方も多く、贈り主にも楽しんでいただけていると感じます。

一人ひとりに合わせたギフト提案。対面販売の経験をECに活かす

柳田さん:Web展開するにあたって、どのような工夫をされているのでしょうか。

杉下さん:フルーツは「ブドウは◯◯円です」と単純に説明できるものではありません。同じブドウでも10,000円のものもあれば3,000円のものもあり、スーパーでは1,000円で買えることもあります。

そこで、私たちはチャットを活用し、お客様のご希望や予算を伺いながら、要望に合わせてギフトを用意するようにしています。これが、Web接客という意味での私たちのもう一つの特徴です。

ECサイトを訪れるとチャットが立ち上がるように設定しており、「この商品はカスタマイズできます」「ご予算に合わせてご用意できます」といった案内もサイト内の随所に掲載しています。

現在は、約15種類の食べ比べセットをパッケージ化しているため、注文の大半はパッケージ商品です。チャットでは「桃が好きな方に贈りたいので桃を多めにしてほしい」「みんなで贈るので、送料込みでこの金額にできませんか」といったご要望をいただくことが多くあります。

こうした個別のご希望を伺いながら、お客様に最適なセットをつくり上げていくプロセスは、百貨店時代に行っていた接客と同じだと感じています。それを今はWeb上で再現しているイメージです。

柳田さん:それをチャットで実現されているわけですね。

杉下さん:何度もリピートしてくださる方は、毎回チャットでご相談いただくことが多いです。「先日はありがとうございました。今回はこういうタイプのご家庭なんですが……」といった会話から始まり、やり取りを重ねて一つずつオリジナルのオーダーを作成します。最終的には専用のURLを発行し、そちらから決済いただく形で、すべてチャットで完結します。

柳田さん:そこまで対応してもらえると、リピーターになりますね。ECサイトでここまでやっている事業者は多くないと思います。元々ECに詳しかったわけではないと伺っていますが、百貨店での接客経験とうまく融合されているように感じます。

おわりに:オンラインから広がる、“贈る”文化の新しいかたち

百貨店の閉店をきっかけに誕生した「蝶結び」は、産地や品種の“違い”を楽しむ食べ比べギフトを軸に、対面接客の経験を活かした丁寧なWeb接客を展開し、リピーターを獲得しています。鮮度と品質にこだわりながら、チャットを活用して一人ひとりに合わせた提案を行うスタイルは、EC上でも顧客との距離を縮める仕組みとして機能しています。

リアルで培った強みをECに融合させ、顧客の状況に応じたきめ細かな対応につなげている点は、ギフトECにおける1つの取り組みの形といえます。“贈る体験”をオンラインでどのように再構築するかを考える上で、参考となる事例といえるでしょう。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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