
新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で、盛り上がりを見せるお菓子作り業界。かっぱ橋に実店舗を構える馬嶋屋菓子道具店は実店舗の売上こそ下がってしまいましたが、オンラインの売上は伸びているそうです。現在、オンラインでは楽天市場の売上が最も高いものの、これからファンを増やして自社ECサイトに力を入れようと考えています。馬嶋屋菓子道具店の今までの歩みからこれからに向けて副社長兼WEB統括責任者の櫻井裕さんにお話を伺いました。
この記事の目次
指名検索を増やすことを重要視したきっかけ
―― 本日はよろしくお願いします。櫻井さんが馬嶋屋菓子道具店に入社されてから、今までの歩みについてお話いただけないでしょうか。
櫻井さん:私が馬嶋屋菓子道具店に入社したのは、約6年半前の2015年3月です。入社当時の通販事業体制は、社長と店長、受発注担当、私の4名でした。また、実店舗もあるため、実店舗の人員が足りない場合は、通販事業の方からヘルプに入りながらネット通販の運営をしていました。
馬嶋屋菓子道具店が楽天市場に出店してから今年で17年目になります。私が入社したときは、通販の売上は右肩上がりで、伸びていた時期で最高月商3,500万円ほどでした。しかし、その後、競合参入などの影響で売上が低迷しています。
2019年の新型コロナウイルスの影響により、実店舗へ来店いただくお客様は激減したものの、おうち時間を過ごされる中、お菓子作りが浸透し、ネットの売上は現在まで好調を維持しています。今はアフターコロナを見据えて、自社ECサイトに力を入れています。
―― 自社ECサイトに力を入れている理由は何でしょうか? また、そのきっかけについて教えて下さい。
櫻井さん:コロナ禍を迎えるまで、弊社のネット通販の売上は2016年頃を境に低迷しました。競合参入が増えたことが主な理由でお菓子作りが広まったことは嬉しい反面、価格競争が今以上に激しくなると思います。
そんな中、実店舗のリニューアル(立て替え)をしたところ、新店舗の目玉である「クッキータワー」を見に、一般のお客様にも多くご来店いただけるようになりました。それまで、実店舗の顧客層はプロの料理人やパティシエの方が中心だったのです。


櫻井さん:そのことから実店舗に来ていただける明確な理由があるように、ネット通販でも「馬嶋屋」という指名検索をしていただけるようなブランディングが必要だと思いました。馬嶋屋菓子道具店のブランディングで一番重要なのが「馬嶋屋だから買いたい」と思って頂けるファンを増やすことではないでしょうか。それを踏まえた上で、自社ECサイトのリニューアルを考えています。
自社にしか作れない、発信できないコンテンツとは?
―― 自社ECサイトのリニューアルについて具体的に教えていただけないでしょうか。
櫻井さん:デザインは今のページよりもシンプルにする予定です。扱う商品数が多く、商品ページだけで何千という数があります。商品数が多いからこそ、シンプルにとにかく探しやすくする必要があると思いました。
また楽天市場をはじめ、ECモールとの差別化として、弊社ならではの読み物コンテンツを増やそうと考えています。Twitterに「素材が異なるカヌレ型を使って焼き比べた内容」を投稿したところ、多くの反響をいただき、ニーズのあるコンテンツづくりのヒントを得られました。

櫻井さん:お菓子のレシピコンテンツに力を入れていた時期がありましたが、道具の選び方など、弊社だからこそできるコンテンツを提供していくことをお客様は求めていることを実感しています。それは他社では真似できない、弊社だからこそできることです。そういったコンテンツを発信していきたいと思っています。
他にも、物だけではなく、体験もセットで販売する予定です。具体的には、ワークショップだったり、ワークスペースの貸し出しだったりですね。お客様に来店いただくきっかけにもなりますし、体験はSNSなどでシェアしやすいというのもあります。
アルバイトやパートナー、同業者の方との繋がりも重要
―― ファンを増やすにあたって、新たな施策を考え、実行するためにも時間を確保する必要があると思いますが、どうされているのでしょうか?
櫻井さん:実店舗のリニューアルをきっかけに人員が必要になり、Webの制作業務で2名のアルバイトを採用しました。一人は社内で商品登録をメインに、もう一人は在宅にてWebデザイン周りを担当いただいています。
社内にいるアルバイトさんとは朝のミーティングで、やることの確認だけで済むように作業をある程度テンプレート化しています。イベント時にやること、ページの更新作業や商品登録、商品撮影などです。商品登録はスプレッドシートで管理共有しています。
在宅のアルバイトさんには、注力商品ページ作り込み、特集ページ制作、メルマガ作成などを対応していただいています。ミーティングは月1回行い、やることをある程度決めて、後は基本的にメールで質問があったときに答える体制になっています。
この方と出会えたことはとても大きかったです。商品LPの制作経験があったため、通販ページのデザインスキルと顧客心理を意識したページ制作スキルがありました。そのため密なやりとりがなくてもある程度、私の思う提案をしていただけます。
採用や外注選定の時は、スキルがあることは当たり前の時代になっています。ページ制作だけならクラウドソーシングやココナラで安く済ますことは可能ですが、「売るためのデザイン」となるとあまりいないと思います。例えばWebデザイナーであればデザインとコーディングのスキルがあることを前提として、そこにプラスする形でマーケティングや商品を売るための知見があることのように、基本的なスキルにプラスアルファのスキルがあることが大切だと感じています。
―― 櫻井さん自身が課題に感じていること、取り組みたいことについてお話いただけないでしょうか。また、その理由についてお聞かせ下さい。

櫻井さん:コロナ禍にあって特に思うのが人との繋がりです。お客様との繋がりはもちろんですが、最近特に感じているのがネットショップを運営していく上での悩みを相談できる仲間が欲しいと思っていることです。自分と同じようにコロナ禍で苦しんでいる店長さん同士で悩みを共有できたり、お互いに客観的なアドバイスをしあえるような仲間づくりをしていきたいと思っています。
そう思い始めることができたのも自分一人で行っていた作業の手が離れ、今まで以上に馬嶋屋の今後のことや売るための施策のことを考える時間が持てたからです。アフターコロナでは、ネットの売上はまた落ち込んでしまうかもしれない。そう思ったときに新しい施策のアイデアがなかなか思い浮かばなかったのです。
たとえば、他の業界では当たり前にやっている施策でも、自分たちの業界では誰もやっていない施策ということもあります。また、他社の店舗だからこそ、自社の店舗について客観的な意見をもらうことができます。
これまでは自分一人で受注以外のすべての作業をしていたため、常に一番いい状態だと思い込んで作業してしまっていました。そのため自社のネット運営をどうしても客観的に見られなくなっています。
新しい情報も自分が必要だと思わないとインプットしないですし、いざしようと思っても情報も伝手もありません。そこに限界を感じています。だからこそ、苦しいときには相談でき、ときには切磋琢磨できる仲間の大切さを今になってひしひしと感じています。
今はコロナ禍で人員採用の余裕がないショップさんも多いのではないでしょうか。そんなとき、業務の現場の苦労を共有しあえたり、お互いに客観的なアドバイスをしあえたり、そんな仲間や繋がりを作っておくことがとても大切だと思います。もし、一人で悩んでいる店長さんやご担当者さんがいらっしゃいましたらこの機会にぜひ繋がりましょう(笑)
取材を通じて:お客様と継続的に付き合っていくために
新型コロナウイルスにより、ライフスタイルが変わった消費者の影響を受け、オンライン経由での売上が伸びた事業者様は数多くいるのではないでしょうか。トレンドの影響による後押しで伸びた売上を継続させるために、重要になってくるのはお客様一人ひとりと密接に繋がっていくことだと思います。
馬嶋屋菓子道具店では以前からレシピの掲載やSNSのアカウント運用を行っており、お客様に喜んでもらうためにはどうしたら良いのか日々悩みながら、形にして発信しています。お店を知ってもらうこと、そしてお店を知ってくれた方がファンになってくれるために、楽しんで買い物をしてもらうことが、トレンドの後押しが終わってからも継続的にお客様と付き合っていくためには必要なことになるでしょう。
取材の中で櫻井さんがお話しているように、一人で運営をしている方は自分の施策や方向性が合っているか不安になることがあると思います。コマースピックでは一人で悩んでいるEC運営者様が、他の店舗の方と交流できる場を準備しております。準備が整いましたらまずはLINEで情報を共有いたしますので、興味のある方はLINEにご登録をお願いいたします。
▼ 馬嶋屋菓子道具店のTwitter
https://twitter.com/majimayastaff
▼ 櫻井裕さんのTwitter
https://twitter.com/majimaya_tokyo
▼ 馬嶋屋菓子道具店 公式通販サイト
https://majimaya.com/
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