
Shopifyが2025年11月4日に発表した第3四半期(7~9月期)の決算では、売上高が28億4,400万ドル(約4,350億円)、流通総額(GMV)が920億1,300万ドル(約14兆円)となり、いずれも前年同期比で+32%の大幅な成長を記録しました。
これまで「ストア構築ツール」として知られてきたShopifyですが、いまや決済や融資、物流など、事業運営全体を支える総合プラットフォームへと進化しています。中小事業者から大手ブランドまで幅広く利用が進むなか、Shopifyがこの四半期で示した成長の方向性は、今後のEC運営やツール選定を考えるうえでも示唆に富む内容といえます。
この記事の目次
成長続くShopify、第3四半期は売上・GMVともに+32%
Shopifyは第3四半期において、新規店舗の増加と既存マーチャントの取引拡大の両面で成長を実現しました。特に近年は、ストア構築だけでなく決済・融資・物流など事業運営全体を支援する領域へ拡張しており、プラットフォームとしての価値が一段と高まっています。
同社は、「私たちは作り、届け、成長する。その循環がいまフルスピードで回っている」とコメント。世界中で26秒に1件、Shopify上で新たな取引が発生しているとし、事業者の販売活動を支えるインフラとしての存在感がさらに強まっていることを示しました。
決済・融資・物流を包括 マーチャント支援領域が拡大
今期の成長を最も大きく支えたのが、決済や融資、配送といったマーチャントソリューション事業です。売上は21億4,500万ドルと前年同期比で+38%増加し、全体売上の約4分の3を占めるまでに拡大しました。
この領域には決済サービス「Shopify Payments」、融資サービス「Shopify Capital」、物流サービス「Shopify Fulfillment Network」などが含まれます。Shopify Paymentsはオンライン決済のほか、リアル店舗向けPOSやサブスクリプション課金にも対応し、複数チャネルをまたいだ決済インフラとして存在感を強めています。
また、Shopify Capitalは、売上データをもとに自動で与信を行う仕組みで、運転資金を必要とする中小事業者の資金調達を後押ししています。
さらに、物流ネットワークの最適化や配送サポートを行う機能も拡充。オンラインだけでなく店舗・倉庫・顧客を横断して取引を最適化することで、Shopify上で“売って終わり”ではない、事業の持続的成長を支える仕組みが整いつつあります。
このように、Shopifyは「販売支援」から「事業運営支援」へと軸を広げ、マーチャントのビジネス成長を包括的に支援する方向に進化しています。
サブスクリプション事業も堅調、中堅・大手ブランドの導入が進む
Shopifyのもう一つの柱であるサブスクリプション事業も、引き続き安定した成長を見せています。第3四半期の売上は6億9,900万ドルで、前年同期比+15%の増加となりました。
この領域では、Shopify Plusを中心とした中〜大規模ブランドの利用拡大が顕著です。既存ユーザーの継続率も高く、月次経常収益(MRR)は1億9,300万ドル(+10%)に到達しました。中堅・大手企業がグローバル展開や複数ストア運営を目的にShopifyを採用するケースが増えており、スモールビジネス向けプラットフォームから、企業の成長段階に合わせてスケールできる基盤へと進化しています。
また、Shopifyはアプリやテーマを提供するエコシステムの拡充も進めており、事業者は必要な機能を柔軟に追加できる拡張性を手に入れています。これにより、特定業種や市場に特化したストア運営も容易になり、導入後の定着・アップグレードを促す構造が形成されています。
こうしたサブスクリプションの安定成長は、Shopifyが単なる「サイト構築ツール」ではなく、事業成長のための長期的なパートナーとして認識されつつあることを示しています。
あらゆる販売チャネルを統合、コマース基盤としての優位性
Shopifyがここまで高い成長を維持できている背景には、「あらゆる販売チャネルを一元管理できる」コマース基盤としての強みがあります。
オンラインストアだけでなく、実店舗やSNS、マーケットプレイス、そして最近ではBtoB取引までを同一の管理画面上で運営できる点は、他のECプラットフォームにはない特徴です。
加えて、Shopify PaymentsやShopify POSによってオンラインとオフラインの売上データを統合できるため、チャネルをまたいだ購買データの一元化が進み、マーケティングや在庫最適化の精度を高めています。
また、同社が掲げる「Shopify Editions」を通じて、生成AIを活用した商品説明文の自動生成、注文データをもとにした需要予測など、AI技術の実装が実務レベルで進んでいる点も注目されます。これにより、日常的な業務負担を軽減し、事業者がクリエイティブやブランド体験の設計に時間を割ける環境を整えています。
Shopifyの成長は、単に新しい機能を追加しているのではなく、事業運営全体を効率化するインフラとしての完成度を高め続けていることに支えられています。
今後の見通し:Shopifyが示す“次の標準形”
Shopifyは第4四半期について、売上成長率を前年同期比で「20%台後半」と見込み、引き続き堅調な拡大を予想しています。
年末商戦は、Shopifyにとって年間でもっとも取引が集中する期間です。第3四半期のGMVが前年同期比+32%と高い成長を示したことからも、プラットフォーム上での購買意欲と取引量の勢いが引き続き強いことがうかがえます。
Shopifyはこの繁忙期に向け、決済処理・在庫管理・配送システムの最適化を進めており、特に物流領域でのサービス拡張が事業者の競争力を左右する重要なテーマになりそうです。
一方で、Shopifyは今後もAIやデータ分析を活用した自動化を加速させる方針を示しています。商品登録や説明文生成、レコメンドなどの分野でAIを活用し、少人数でも運営効率を高められる仕組みづくりが進んでいます。
Shopifyの今回の決算は、単なる数字の好転にとどまらず、「ツールからプラットフォームへ」という同社の進化が確実に進んでいることを示す内容でした。EC事業者にとっては、Shopifyの方向性そのものが、今後のオンラインビジネスの標準形を示す一つの指標になりそうです。
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