
Shopifyは2025年5月8日(米国時間)に、2025年1〜3月期の決算(第1四半期)を発表しました。売上高は前年同期比+27%の23.6億ドル、営業利益は2.03億ドルと前年の0.86億ドルから大幅に増加しました。営業利益率は9%となり、同社は7四半期連続で2桁のフリーキャッシュフローマージンを維持。成長と収益性の両立を引き続き実現しています。
GMVとサブスクリプションの伸長が売上を牽引
総商品取扱高(GMV)は747億ドルで、前年同期比+23%の成長を記録しました。背景には、導入企業の増加に加え、平均注文単価(AOV)の上昇や新規市場での取引拡大が挙げられます。特に、Shopify Markets Proの展開が進み、北米以外の取引額が大きく増加しました。
売上の内訳としては、サブスクリプションソリューションが6.2億ドル(+21%)、マーチャントソリューションが17.4億ドル(+29%)と、それぞれ高い成長率を記録しています。
なお、サブスクリプションソリューションとは、Shopifyプラットフォームの月額・年額の利用料を中心とした収益で、主にShopifyやShopify Plusといったプランの契約料が含まれます。月間経常収益(MRR)は前年同期比で+20%となる1.82億ドルに達し、上位プランの普及による単価向上が寄与しました。
一方のマーチャントソリューションは、Shopifyを利用する販売者(マーチャント)向けの取引手数料や付帯サービスからの収益で、GMVの成長に比例して拡大する特徴があります。Shopify PaymentsやShopify Capital、POS(店舗レジ連携)、越境EC支援などが主要な構成要素で、取引ごとに収益が積み上がる構造です。
特にマーチャントソリューションの成長には以下のようなサービス群の拡充が大きく寄与しています。
- Shopify Payments
Shopify内でのクレジットカードやApple Pay、Google Payなどの決済手段を一括管理できるサービス。多通貨対応や地域拡張により、グローバルマーチャントの利便性が向上。
- Shopify Capital
中小事業者向けに最短数日で提供される短期融資サービス。申請から入金までが迅速で、キャッシュフローの安定化を支援。
- Shopify Markets(およびMarkets Pro)
為替計算・関税・配送業者選定など越境ECに必要な機能を統合提供。Proでは、Shopifyが輸出者となる仕組みにより、初心者でもリスクを抑えた海外販売が可能に。
- POS(Shopify Point of Sale)
実店舗とオンラインストアの在庫や顧客データを一元管理できる販売ソリューション。レジ機器連携やスタッフ権限管理なども含む。
- Shopify Tax
アメリカ国内で煩雑な州ごとの消費税を自動で算出・徴収する仕組み。税務リスク軽減と業務効率化に貢献。
利益率も改善!コスト管理とスケールメリットが寄与
営業利益は2.03億ドルとなり、前年同期の0.86億ドルから+136%の大幅な伸びを示しました。粗利率は49.5%で、前年の51.4%からはやや低下していますが、粗利額は11.7億ドル(+22%)に増加し、全体として利益の質と量の両面で改善が見られます。
営業費用の内訳を見ると、Sales & Marketing(4.05億ドル)、Research & Development(3.77億ドル)、General & Administrative(1.09億ドル)など、いずれの項目でも対前年増となっています。ただし、売上の成長ペース(+27%)がこれら費用の増加を上回っており、結果として営業利益率が改善しています。
また、同社はプラットフォームの取引規模が拡大することで、サーバー運用やカスタマーサポート、コンプライアンス対応といった固定費が分散される「スケールメリット」を享受しています。さらに、生成AIを用いた業務自動化の進展が、研究開発やカスタマーサポート領域でのコスト抑制につながり、全体の利益体質の強化に貢献しています。
フリーキャッシュフローは3.63億ドルでした。売上に対するフリーキャッシュフローマージンは15%を維持し、7四半期連続で2桁を記録しており、キャッシュ創出力の高さが際立ちます。
今後の展望:2025年Q2以降の見通しと重点領域
Shopifyは2025年第2四半期について以下の見通しを提示しています。売上は前年同期比で25%前後の成長を見込み、粗利益も高い成長率を維持する計画です。営業費用は売上に対して39〜40%程度を想定しており、フリーキャッシュフローマージンについては第1四半期と同水準の15%前後を目指すとしています。
同社は今後の重点施策として、以下の分野に注力する方針を示しています。
- Shopify Plus
大企業向けECプラットフォーム。柔軟なAPI連携や複数スタッフアカウントの管理、独自ドメイン対応など、企業ニーズに応じた拡張性と制御性を提供します。
- Shopify Magic
生成AIを活用した運用支援機能群。商品説明文や広告文の自動生成、顧客対応チャットボット、画像生成など、運営負荷を軽減しながら売上向上に寄与します。
- Shopify Markets(およびMarkets Pro)
越境ECに対応した多言語・多通貨対応、税関・関税処理、現地配送業者との連携といった機能を包括。販売地域の拡大を支援します。
- アプリエコシステムの強化
Shopify App Storeでは2,000以上のアプリが提供されており、決済、在庫管理、物流、広告などを柔軟に組み合わせ可能。特定業種・業態に応じたカスタマイズも進んでいます。
- 提携型物流支援
自社物流事業はすでに縮小していますが、提携倉庫や配送ネットワークを活用したShopify Fulfillment Network(SFN)を通じ、迅速かつ確実な商品配送を支援しています。
Shopifyは、単なるストア構築ツールにとどまらず、販売から決済、税務、配送までを支援する“フルファネル型コマースインフラ”としてのポジション確立を狙っています。今後も外部環境や地域市場の変動に対応しながら、継続的な成長と収益性の維持を両立していく方針です。
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