
Meta Platforms(以下、Meta)は2025年第3四半期決算で、売上高512億ドル(前年同期比+26%)と堅調に成長しました。営業利益は18%増の205億ドルと高水準を維持しています。生成AIを活用した広告最適化の進展に加え、AIインフラ投資の拡大が四半期業績を押し上げました。本記事では、主要セグメントの動向とAI戦略の全体像を整理します。
この記事の目次
広告事業:AIによる最適化が収益成長を牽引
主力の広告事業は、Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppなどのアプリ群を含む「Family of Apps(FoA)」で構成されています。第3四半期の売上高は508億ドル(前年同期比+26%)と大幅に増加しました。広告収益が全体の売上の大半を占め、堅調な成長を維持しています。
広告需要の回復と動画シフトの進行
広告主の出稿意欲は全体的に回復基調にあり、とくにリール(短尺動画)やフィード広告が堅調に推移しました。AIを活用した広告配信最適化ツールが効果を発揮し、広告在庫の消化効率とクリック率が改善。中小規模の広告主による出稿も増えています。
地域別では、北米とアジア太平洋地域が引き続き成長をけん引。特にアジア市場では、動画フォーマットやメッセージ経由の広告利用が拡大しています。
生成AIによるクリエイティブ生成と配信自動化
Metaは、生成AIを活用したクリエイティブ制作・広告配信支援ツールを拡充しています。広告主が入力したテキストや画像をもとに自動で広告文案やビジュアルを生成する機能を提供し、キャンペーンの制作工数を削減。広告効果の向上に加え、テスト運用までのスピードも改善しています。
これらのAIソリューションはInstagramリールやフィード内にも統合され、ユーザーの興味関心に基づくレコメンド精度を高めています。AI活用が進むことで、広告主・利用者双方にとっての最適化が同時に進展しています。
VR/AR事業:赤字継続もAIとの融合で新たな成長基盤を構築
Metaのもう一つの主要セグメントである「Reality Labs」は、VR/ARデバイスや関連ソフトウェアを中心とした次世代事業です。第3四半期の売上高は4.7億ドル(前年同期比+74%)と大幅に増加しましたが、依然と赤字が続いています。AI統合を見据えた製品開発や研究費の増加が要因です。
「Quest」シリーズを中心にAI体験を拡張
主力のVRヘッドセット「Meta Quest 3」は堅調に推移し、家庭用デバイスとしての定着が進みました。同社はAIアシスタント機能「Meta AI」を統合し、音声入力やシーン認識を活用した操作性の向上を進めています。
また、ARグラス「Ray-Ban Meta」ではカメラと音声認識を組み合わせ、視界の情報をAIがリアルタイムに解析・説明する機能を搭載。AIを活用した“拡張された日常体験”の提供を目指しています。
長期的なプラットフォーム開発としての位置づけ
Reality Labsは、Metaが掲げる「次世代コンピューティングプラットフォーム」構想の中核を担う領域です。現時点では赤字が続くものの、AIとハードウェアを一体化させた製品戦略を通じて、将来的な事業拡大の基盤を整備しています。特に、AIが生成・理解・対話を担い、デバイスがそれを自然に届けるという構想は、スマートフォン以降の新しいユーザー接点を形成する試みです。
Metaはこれを長期的な“AIネイティブプラットフォーム”として位置づけ、ハードウェア販売にとどまらず、AIを介した広告やコマース、サブスクリプションなどの新たな収益源を見据えています。
AIインフラ投資:急拡大する計算需要への対応
Metaは第3四半期も引き続き、AI関連のインフラ投資を拡大しました。同社はAIモデルの開発・運用を支えるため、データセンターやサーバー設備への投資を加速しており、2025年通年の設備投資は過去最高水準に達する見込みです。
生成AIの活用が広告最適化やレコメンド、コンテンツ生成など全事業に広がるなか、計算需要の急増が背景にあります。Metaはこれに対応するため、AI専用チップ「MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)」やGPUクラスターの導入を進め、自社運用と外部クラウドのハイブリッド構成を最適化。短期的にはコスト負担が増すものの、長期的なAI競争力を左右する重要な投資と位置づけています。
さらに、米Blue Owl Capitalとの合弁事業(JV)によるデータセンター共同開発も進行中です。この取り組みは、自社資産の増加を抑えつつ外部資本を活用する「オフバランス構造」の一環であり、将来的な設備拡張の柔軟性を高める狙いがあります。Metaはこの方式を今後のデータセンター戦略の一部として位置づけ、AI開発のキャパシティ確保と財務健全性の両立を目指しています。
同社のCFOは「AI分野では、開発の速度を優先するために、短期的な利益率よりもリソース確保を優先している」とコメント。AIモデルの研究開発や推論環境の構築を支えるインフラ整備は、Metaにとって“将来の成長を支える投資”として全社戦略の中心に据えられています。
まとめ:AIを軸に進む事業再構築
2025年第3四半期のMetaは、広告・デバイス・インフラのすべてでAIを軸に事業を再構築していることが明確になった四半期でした。
主力の広告事業(Family of Apps)では、AIによるレコメンドや自動最適化の成果が顕在化し、広告効果と利用時間の双方が伸長。一方のVR/AR事業(Reality Labs)では、AIを組み込んだデバイス体験を通じて、ポストスマートフォン時代を見据えたプラットフォーム形成に踏み出しています。
こうした動きの根底にあるのは、AIを単なる機能強化ではなく、事業全体の構造転換の起点として位置づける姿勢です。MetaはAIモデルの開発、生成体験の拡張、そしてインフラ投資を一体で進めることで、「AI×広告×デバイス」という複層的な成長エコシステムの構築を目指しています。
同社は短期的な利益率の変動を許容しながらも、AIによって人と情報・コンテンツ・ビジネスをつなぐ新しいプラットフォームを形成しようとしています。その流れは、今後のデジタル広告・コマースのあり方を再定義する動きとして注目されるでしょう。
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