Amazon、2025年第3四半期決算:生鮮EC拡大と広告収益の好調で成長加速、AWSはAI基盤を強化

Amazonは、2025年第3四半期(7〜9月期)の決算を発表しました。リテール事業では、生鮮食品を含む当日配送の対象エリアを全米2,300都市へ拡大し、利用頻度の高い日用品と組み合わせた「日常的な購買体験」の提供を強化しています。これにより、従来の「週に一度まとめ買いする」購買行動から、より高頻度でAmazonを利用するスタイルへと変化が進んでいます。

加えて、オーガニック食品スーパー「Whole Foods Market」や、都市型小型店舗「Daily Shop」などのリアル店舗も拡充し、オンラインとオフラインを融合させた新たなリテール戦略を展開しました。Amazonは“日常的に使われる購買プラットフォーム”として、食品・日用品領域での存在感を一段と高めています。

業績概要:リテール・広告・AIが三本柱で牽引

Amazonの2025年第3四半期(7〜9月期)は、売上・利益ともに堅調に拡大しました。売上高は前年同期比12%増の1,802億ドル、営業利益は174億ドルとなっています。

中心となるリテール事業では、配送スピードの改善や品揃え強化を背景に北米・海外とも2桁成長を維持。クラウド事業「AWS」はAI関連需要の拡大を受けて20%増と再加速し、広告事業もPrime VideoやDSP(広告配信プラットフォーム)の拡充により3四半期連続で成長率が上昇しました。

リテールを軸に、広告とクラウドが連動して成長をけん引する構造がより明確になり、Amazon全体として収益力を着実に高めた四半期となりました。

リテール事業:配送網の最適化と品揃え強化で収益性を改善

Amazonのリテール事業は、北米・海外ともに堅調に推移しました。四半期売上は前年同期比10%増の1,472億ドル(北米+11%、海外+14%)と、全体の成長を支える中核事業となっています。

配送効率の向上により、同日・翌日配送の対象商品が大幅に拡大。特に米国では主要都市圏での「当日配送」比率が引き続き上昇し、Prime会員の購買頻度を押し上げました。これにより、消耗品や日用品など“日常購買”の定着が進み、Amazonのリテールは一過性ではないリピート構造へと深化しています。

さらに、生鮮食品カテゴリーが事業の新たな成長軸として浮上しています。アンディ・ジャシーCEOは「生鮮分野での再購入率が予想以上に高く、米国内1,000都市で展開中、年末までに2,300都市へ拡大予定」と述べ、生鮮ECの取り扱い地域が急速に拡大していることを明らかにしました。

また、オーガニック食品スーパー「Whole Foods Market」の店舗網も引き続き拡充しており、都市型小型店舗「Daily Shop」の展開も始動。オンラインとオフラインを組み合わせた食品リテールモデルを磨き込み、消費者の日常購買のシェアをさらに高めようとしています。

物流・サプライチェーン事業:リテールを支える地域密着型ネットワークの拡充

Amazonは、第3四半期も引き続き「地域密着型配送ネットワーク」の拡張を進めました。この取り組みにより、配送距離を短縮し、顧客への“翌日・当日配送”の提供エリアをさらに拡大しています。現在、米国の注文の約4分の1が当日または翌日配送で完結しており、同社は「過去最も迅速な配送網を構築できた」と説明しています。

このネットワーク再構築の成果として、1件あたりの配送コストが前年同期比で改善。特に「同一都市圏内で完結する配送比率」が上がったことで、燃料費や労務コストの最適化が進みました。物流コストの抑制は、リテール事業の営業利益率の改善にも寄与しています。

また、外部企業向けの配送・フルフィルメント事業「Amazon Shipping」も着実に拡大。中小事業者がAmazonの物流網を利用して出荷できる仕組みとして、欧州を中心にサービスを拡充しています。特にイギリスとドイツでは法人出荷件数が前年から倍増し、Amazonは“自社+他社”を取り込むハイブリッド型ロジスティクス事業としての存在感を強めています。

このように、Amazonは物流を単なるコストセンターではなく、顧客体験と収益性を同時に高める事業インフラとして再定義しており、EC事業者にとっても今後の参考となる運営モデルを提示しています。

AWS(クラウド事業):生成AI関連サービスが企業導入を後押し

クラウド事業「AWS」は、AI関連需要の拡大を背景に成長が再加速しました。売上高は前年同期比20%増と、過去11四半期で最も高い成長率を記録。特に生成AIのトレーニング・推論向けインフラ需要が増加し、顧客企業のクラウド移行も再び活発化しています。

アンディ・ジャシーCEOは「AWSは1,320億ドルの年換算売上を基盤に、依然として業界最大規模のクラウド事業」と述べ、AI関連の大型契約が新たな成長ドライバーになっていることを強調しました。

AI特化チップ「Trainium 2」はすでに完売状態で、Anthropicが次世代モデルClaudeの学習に50万個規模で採用。2026年初頭に投入予定の「Trainium 3」では、さらなる価格性能比の向上(前世代比+40%)を見込んでいます。

また、AWSはAIエージェント開発向け基盤「AgentCore」を発表。セキュアでスケーラブルなエージェント構築を支援する新たな“基盤レイヤー”として注目を集めています。企業が生成AIを実務に統合する際の“開発環境”として、AWSエコシステムの中核を担う見通しです。

広告事業:Prime Video広告とDSPが新たな成長エンジンに

Amazonの広告事業は、引き続き全社の成長をけん引する主要セグメントとなっています。2025年第3四半期の広告収入は前年同期比24%増の177億ドルに達し、3四半期連続で成長率が加速しました 。成長の大きな要因は、Prime Videoへの広告導入とDSPの拡張です。

Prime Videoでは年初にスタートした広告モデルが順調に定着し、視聴者データを活用したターゲティング広告が好調。既存の検索・ディスプレイ広告とのクロス運用により、広告主のROI改善を支えています。

さらに、広告主が購買データをもとに成果を分析できる「Amazon Marketing Cloud(AMC)」や、外部連携を強化する「Measurement API」の活用も進んでいます。ブランド広告からパフォーマンス広告までを統合的に管理できる仕組みを強化し、広告プラットフォームとしての競争力を高めました。

アンディ・ジャシーCEOは「広告事業はリテール、エンターテインメント、クラウドをつなぐハブ」と述べ、メディア事業との統合的な価値創出を重視する姿勢を示しました。

今後の見通し:AIとオムニチャネル戦略を軸に中長期成長へ

Amazonは今後、AIを基盤にリテール・広告・クラウドの三事業を一体化し、顧客体験の高度化と収益性の両立を図る方針を示しています。

リテール領域では、AIによる在庫最適化や需要予測を通じて、「欲しいものが最短で届く」購買体験の精度をさらに高める計画です。物流ネットワークの地域化を進める一方で、AIによる配送計画の自動最適化も推進し、継続的なコスト削減を見込んでいます。

クラウド事業(AWS)では、生成AIの利用拡大を最大の成長ドライバーと位置づけ、独自チップやエージェント開発基盤「AgentCore」を通じて企業のAI導入を支援。AIモデルの開発から運用、顧客接点への実装までを包括的に提供する体制を整えつつあります。

さらに、Prime Video広告をはじめとするメディア事業では、動画・音声・ECサイト内の購買データを横断的に活用する“フルファネル戦略”を強化。リテールと広告の連動によってブランドの販促活動を支援し、Amazon独自のオムニチャネルエコシステムを拡張していく構えです。

同社はこうしたAIとオムニチャネルの融合を通じて、「消費者が求める体験の最適化」と「事業者の販売機会最大化」を両立させるビジネスモデルを描いています。

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