Google(グーグル)、2025年第3四半期決算発表:AI戦略が拓く次世代の検索体験と広告クラウドの融合

Alphabet(Googleの持株会社)は2025年第3四半期決算で、売上高1,023億ドル(前年同期比+16%)と初めて四半期で1,000億ドルを突破しました。純利益は33%増の350億ドルです。検索・YouTube・クラウドの主要事業がいずれも二桁成長を達成し、AIが事業成長を牽引した点が特徴です。

生成AI「Gemini」を中心に、検索体験の再構築や広告・クラウド領域での効率化が進展しました。本記事では、Alphabetの決算を通じて、Googleの主要事業におけるAI活用と事業変革の進展をまとめています。

Google Services:検索・YouTubeがAIで成長加速

Googleの中核事業である Google Services(検索・広告・YouTube・デバイスなど)は、売上高が前年同期比14%増の871億ドルと堅調に拡大しました。中でも検索とYouTubeの二本柱が、生成AIの導入を通じて利用・収益の双方で成長をけん引しています。

検索:AI OverviewsとAI Modeが商用クエリを拡大

検索領域では、AIを活用した新体験「AI Overviews」と「AI Mode」の導入により、ユーザーの質問や行動がより複雑化・多様化する中でも、検索全体のクエリ数が拡大。特に商用クエリ(購買や比較行動につながる検索)の増加が顕著で、広告配信の新たな接点として重要性が高まっています。

さらに、会話型で商品を探せる「AI Mode内のショッピング機能」や、試着シミュレーションを拡充した「バーチャルトライオン」など、AIを活用した購買体験の改善も進行。企業はユーザーの購買意図をより高精度に捉えられるようになっています。

広告面では、新たに投入されたAI最適化プロダクト「AI Max in Search」が、従来の広告では到達できなかった検索クエリを自動で拾い上げ、関連性の高い広告表示を可能にしました。これにより、広告主が新規顧客との接点を効率的に拡大できる仕組みが整いつつあります。

YouTube:広告とサブスクの“ツインエンジン”が成長を牽引

YouTubeも前年同期比15%増の売上を記録。広告ではショート動画「Shorts」とリビングルーム視聴(TV接続)がともに好調で、AIを用いたレコメンド強化により視聴時間が拡大しています。広告主の獲得効率を高める「Demand Gen」などのAI機能も進化し、中小事業者の動画広告利用が広がりました。

また、YouTube Music・Premium・YouTube TVなどサブスクリプション事業も堅調。広告と有料サービスの双方で収益構造が安定化し、YouTube全体として「双発エンジン型の収益モデル」が定着しつつあります。

Google Cloud:企業向けAIが急成長

Google Cloudは、AI関連需要を背景に前年同期比34%増の152億ドルと高成長を維持しました。AIがクラウド事業の中心的な成長ドライバーとなっており、企業が生成AIを自社プロセスに組み込む動きが急速に進んでいます。

生成AIプラットフォーム「Vertex AI」が導入を拡大

企業向けAI開発環境「Vertex AI」の利用が拡大しています。同サービスはGeminiモデルをベースに、テキスト生成・画像認識・チャットボット構築などを一括で提供できる統合型プラットフォーム。リテール、金融、製造業など幅広い業種で導入が進み、EC領域でも商品レコメンドや問い合わせ自動化、在庫予測などへの応用が進展しています。

Googleは今期、Vertex AI上での新モデル群「Gemini 1.5 Pro / Flash」をリリースし、より高精度かつ低コストでの運用を実現。また、API経由での利用量は「毎分70億トークン処理」と報告され、企業が自社システムに組み込む形での活用が一般化しています。

AI需要がクラウド基盤全体を押し上げる

AI導入に伴うインフラ需要が拡大し、Google Cloudの受注残高(バックログ)は前四半期比+46%の1,550億ドルに到達。GPU(NVIDIA)とTPU(自社開発チップ)を組み合わせたハイブリッド構成が企業から高い支持を得ています。

クラウド利用企業のなかには、AI生成結果を即座に業務システムへ反映させる「生成→実行型ワークフロー」を構築する例も増加。Googleはこうしたワークフローを支えるため、BigQuery、Workspace、Commerce Platformなど既存プロダクトとの連携を強化しています。

インフラ投資:生成AIの急拡大を支える基盤整備

Googleは生成AIの活用拡大に伴い、データセンターとサーバーへの投資を継続しています。AI検索やAI広告、クラウドAIなど事業全体で計算需要が急増しており、「AIインフラの拡張は事業成長の前提」と位置づけています。2025年第3四半期の設備投資は前年同期比で8割以上増加し、サーバーやデータセンターを中心に拡大しました。

こうした巨額投資は、AIサービスを安定稼働させる“見えない競争領域”でもあります。Googleは自社開発のAIチップ「TPU(Tensor Processing Unit)」やクラウド向けGPU環境を増設し、モデルの学習効率とコスト効率の双方を高めています。

また、クラウドサービスではパートナー企業によるAI利用が急拡大しており、Googleは演算資源を安定的に供給するための垂直統合型インフラを整備中です。さらに、データセンター運営では冷却効率の改善や再生可能エネルギーの導入を進め、AI計算とサステナビリティの両立を目指しています。

これは単なるインフラ投資ではなく、AI広告やAIクラウドの持続的な競争力を支える“経営戦略”として位置づけられます。

まとめ:AIを中心に全事業が再構築フェーズへ

2025年第3四半期のAlphabet(Google)は、検索・YouTube・クラウドのすべてでAIが成長を支える構造が明確になった四半期でした。これまでの単一プロダクト中心の拡大から、AIを軸とした“再構築フェーズ”に移行しています。

検索では「AI Overviews」「AI Mode」によってユーザー行動が多層化し、新たな広告面や商用クエリの拡大が進行。YouTubeでは広告・サブスクリプションの両輪が強化され、クラウドではVertex AIが企業のAI活用基盤として存在感を高めています。

特に注目すべきは、これらが個別プロダクトの強化にとどまらず、AIによる全体最適へ向かっている点です。検索データとクラウドAI、YouTubeのレコメンドなどが連動し、広告・購買・分析が一体化していく流れが見え始めています。

こうした変化は、EC事業者やブランドにとっても示唆的です。AIによる広告最適化や検索購買体験の変化は、顧客獲得・CRM・LTV設計の考え方そのものを変える可能性があります。Googleの戦略を理解することは、単なるプラットフォーム動向の把握にとどまらず、自社のデジタル戦略を再設計するための基盤情報となるでしょう。

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