
Alphabet(Googleの親会社)は2024年第3四半期の決算を発表しました。総収益は前年同期比15%増の882.6億ドル、純利益は34%増の263億ドルに到達し、収益・利益の双方で力強い成長を遂げています。この好調の背景には、AI技術への大規模投資とそれに基づく製品・サービスの強化があり、特にGoogle CloudやYouTube、Googleサーチで顕著な成果が見られました。ここでは、その内容をまとめます。
この記事の目次
AI戦略の中核「Geminiモデル」とその広がり
Alphabetはここ数年、AI技術への積極的な投資を行い、AIインフラの構築や世界クラスの研究チームの強化、幅広い製品・サービスへの統合を推進しています。サンダー・ピチャイCEOは、「AI分野での先行投資が実を結び、消費者やビジネスパートナーへの価値提供が一層強化されている」とコメントしました。
特に注目されるのが次世代AIモデル「Gemini」です。このモデルは生成AI(Generative AI)や多モーダルAI(画像・音声・テキストを組み合わせる技術)を活用し、ユーザーがより高度な質問や検索を可能にしています。例えば、画像検索ツール「Google Lens」や新機能「Circle to Search」によって、ユーザーの検索体験が大きく変化しました。これにより、Googleサーチの利用頻度も向上しています。また、GoogleマップにもGeminiが導入され、利便性がさらに高まっています。
Geminiの進化とともにAPIの利用も拡大しており、他社開発者向けに提供されるGemini APIの呼び出し数は、わずか6か月で約14倍に増加しました。この「AI as a Service」の提供により、他企業もAIを利用しやすくなり、Alphabetにとっても新たな収益源となっています。
Google Services – サーチとYouTubeが成長を牽引
Googleの主力事業である「Google Services」セグメントの売上は前年同期比13%増の765.1億ドルを記録しました。この成長を牽引したのはGoogleサーチとYouTube広告です。
Googleサーチでは、AIを活用した「AI Overviews」が新たに導入され、複雑な質問にも応じられるようになり、検索ボリュームの増加が見られました。AI Overviewsはすでに世界100か国以上で展開され、月間10億人以上のユーザーが利用しています。また、広告もAI Overviews内で表示され、広告主にとって新たなタッチポイントを提供しています。
一方、YouTubeの広告収益は前年比12%増の89.2億ドルを達成しました。短編動画「YouTube Shorts」の視聴数は日々700億回を超え、短編動画広告のマネタイズも改善が進んでいます。YouTube TVやYouTube Music Premiumなどのサブスクリプションサービスも順調に成長。さらに、NFLのサンデーチケットやリビングルーム向けの「マルチビュー」機能の導入により、テレビ視聴者向けコンテンツも拡大しています。
Google Cloud – AIとデータ分析で企業ニーズに対応
クラウド事業の売上は前年同期比35%増の113.5億ドルでした。特にAIインフラやデータ分析プラットフォーム「BigQuery」など、企業向けサービスが好調です。ピチャイ氏は「Google Cloudが企業のAI活用を支え、コスト削減や顧客エンゲージメントの向上に寄与している」と語っています。
また、セキュリティソリューションでもAIが活用され、脅威検知プラットフォーム「Mandiant」を導入した企業での利用が拡大中です。保険会社Hiscoxでは、BigQueryを用いてリスクの見積もり時間を数日から数分に短縮するなど、AIによる意思決定支援の事例も増加しています。こうしたAIソリューションの成長が、クラウド利用の拡大と共に収益を押し上げており、Google Cloudの営業利益率も前年同期比で改善し、17%に達しました。
コスト効率と資本配分の見直し
AlphabetはAIへの積極投資を進める一方、コスト効率化にも取り組んでいます。アナット・アシュケナジCFOは、「Alphabetは2025年に向けてさらなるコスト構造の最適化を図り、AIによるプロセス効率化に努めていく」とコメント。コスト構造の見直しや従業員数の管理、施設費の削減も進めています。同社は第3四半期に607百万ドルのオフィススペース最適化費用を計上しており、これは効率化を目指した戦略的な措置です。
さらに、Google Cloudのインフラ拡張に伴うデータセンターやサーバーへの設備投資も続く見通しです。アシュケナジCFOによれば、2024年第4四半期も同程度の投資を行い、2025年にはさらに投資額が増加する予定ですが、効率化でこうしたコストを相殺する方針です。
今後の展望と「Other Bets」部門
AlphabetはWaymoやWingなど「Other Bets」部門でも成果を上げています。特に自動運転事業Waymoは、完全自動運転の有料ライドが月間15万件を超え、テスト運用中のロサンゼルスやオースティンでも拡大中です。ピチャイ氏は「Waymoは技術面でリーダーシップを発揮し、商業化への第一歩を踏み出している」とし、Uberとの提携などを通じ、新たな市場での拡大を図る考えを示しました。
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