Amazon、2025年第1四半期決算発表:生成AIと外部EC連携で購買の幅を拡張

Amazonは2025年5月1日(米国時間)に、2025年1〜3月期の決算(第1四半期)を発表しました。売上高は1,557億ドルで、前年同期の1,433億ドルから9%増加。営業利益は184億ドルとなり、前年の153億ドルに対して20%増を記録しました。クラウド事業「AWS」および生成AI関連サービスの好調さが業績を支えています。一方で、フリーキャッシュフローは大幅に減少しており、投資活動の拡大による資金負荷も。

北米・国際市場はEC主導で成長も、利益率には差

北米市場も国際市場も売上・利益の面では順調な成長が見られる一方で、利益率の水準には明確な差があります。

北米市場では、売上高が928億ドルで前年同期比+8%、営業利益は58億ドルで+17%の成長を記録しました。営業利益率は約6.3%と前年とほぼ横ばいですが、物価上昇や労務費の高騰、物流インフラの増強が引き続き利益率を圧迫しています。特に米国内では翌日配送の拡大を進めており、それに伴う投資が短期的なコスト増加に直結しています。

一方の国際市場では、売上高が335億ドルで前年同期比+5%、営業利益は10億ドルで+13%と堅調に推移しました。為替影響を除けば売上は+8%と、比較的安定した伸びを見せています。とはいえ、営業利益率はわずか3.0%にとどまり、北米の約半分程度です。これは、国際市場での価格競争の激しさや、地域間で異なる物流・税制・規制コストの違いが影響しているとみられます。

コマース周辺サービスも成長!広告・サブスク・外部連携が拡大

機能別の売上構成を見ると、Amazonは自社直販のEC事業に加え、広告やサブスクリプションといった周辺サービスでも堅調に成長をみせました。

  • オンラインストア直販:574億ドル(前年同期比+5%)
  • 第三者販売関連サービス:365億ドル(前年同期比+6%)
  • サブスクリプションサービス(Primeなど):117億ドル(前年同期比+9%)
  • 広告サービス:139億ドル(前年同期比+18%)

特に広告サービスは、生成AIを活用した検索最適化や「Interests」機能による嗜好性レコメンドなどが貢献し、広告主・消費者双方からの支持を拡大しています。また、外部ECサイトの製品をAmazon内で表示・購入できる「Buy for Me」機能など、新たな購買体験の提供にも注力しています。

AWS事業は営業利益の6割超を支える高収益モデル

クラウド事業「Amazon Web Services(AWS)」は、引き続き堅調な成長を記録しました。売上高は293億ドルで前年同期比+17%となっており、営業利益は115億ドルと前年同期比+23%。営業利益率は39.5%です。

AWSは売上全体の19%にすぎないものの、営業利益全体の約63%を占め、Amazonの収益の柱として存在感を強めています。

今期は特に生成AIや自動化機能の拡充が目立ち、以下のような新技術が導入されました。

  • Amazon Nova Sonic:音声を音声で処理する生成AI基盤モデル。多言語でのコールセンター対応や自動化に寄与。
  • Amazon Nova Act SDK:Webブラウザ操作をAIエージェントにより自動化。オンライン手続きや決済プロセスの効率化に活用。
  • Amazon Nova Premier:動画理解、コード生成、長文要約などに対応したマルチモーダルAI。
  • Bedrock対応の新モデル(Claude 3.7 Sonnet、Meta Llama 4、Pixtral Largeなど):企業のニーズに応じた生成AI導入の柔軟性を提供。

加えて、SageMaker Unified StudioやAmazon Qのアップデートにより、エンジニアやアナリストの作業効率も向上。AdobeやUber、Fujitsu、Mitsubishi Electricなど、多くの大手企業が新たにAWSと契約を結び、採用事例が広がっています。

フリーキャッシュフローは大幅減、積極投資が財務を圧迫

営業キャッシュフローは前年同期比+15%の1,139億ドルに増加したものの、フリーキャッシュフロー(FCF)は259億ドルで、前年同期の501億ドルから48%減少しました。最大の要因は以下のような積極投資です。

  • 設備投資(TTMベース):前年から80%増の879億ドル。主にAWS対応のデータセンター拡張や電力インフラ強化に使用。
  • 物流ネットワーク拡大:2026年までに米国の地方・郊外エリア向けに40億ドルを投資し、配送スピード改善と会員基盤の拡大を目指す。
  • 先端技術開発:AIチップ「Trainium2」や量子計算機「Ocelot」などへの研究投資。中長期での収益回収を視野。

これらの投資は短期的にはフリーキャッシュフローを圧迫していますが、Amazonは市場支配力と技術優位の確保を見据え、将来的なスケーラビリティと収益回収を重視した判断を続けています。

次四半期の見通しと不確実性:関税や消費減退への備えも

Amazonは2025年4〜6月期について以下のガイダンスを提示しています。

売上高は1,590〜1,640億ドル(前年同期比+7〜11%)で、営業利益は130〜175億ドル(前年同期は147億ドル)です。

成長は継続すると予想されていますが、下限値ベースでは減益の可能性も残されています。背景には以下のリスクがあります。

  • 関税リスク:中国製品への関税引き上げが再燃すれば、Amazon内の第三者出品者に打撃。価格競争力の低下も懸念。
  • 消費の減速:インフレと金利高による消費マインドの鈍化が、特に米国市場での売上に影響を与える可能性。
  • 為替リスク:円やユーロの下落が国際事業の収益圧迫要因に。特に欧州・日本市場ではドル建てコストの上昇が続く。

こうしたリスクに対し、Amazonは次のような社内対応を進めています。

  • 在庫配置の最適化による輸入依存度の抑制
  • ダイナミックプライシング精度向上による転換率維持
  • 日本・欧州市場でのPrime特典強化やローカル施策の展開
  • 為替リスクの軽減に向けた現地通貨契約・価格表示のテスト導入

まとめ

Amazonの2025年Q1決算は、EC事業とAWS事業という二軸での成長が明確に表れた内容となりました。特にAWSは高収益・高機能の進化により、今後の事業基盤としての存在感をさらに強めています。

一方で、積極的な先行投資や不安定な外部環境の影響により、キャッシュフローと将来見通しには不透明感もあります。中長期的にこれらの投資をどのように回収し、グローバルでの安定成長を実現するかが、今後の注目点となりそうです。

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