ウォルマート、2026年度第1四半期決算発表:米国eコマースが初の黒字化、広告事業も成長牽引

ウォルマート(Walmart)は、2026年度第1四半期決算を発表しました。売上高、営業利益ともに前年同期比で増加し、堅調な業績を示しています。特に注目すべきは、米国におけるeコマース事業の黒字化と、広告事業の成長です。以下では、主なポイントを項目ごとに詳しく整理してお伝えします。

業績概要

2026年度第1四半期の売上高は1,656億ドル(約27.6兆円)で、前年同期比+2.5%となりました。為替の影響を除いた実質ベースでは+4.0%とさらに高い成長率を記録しています。営業利益は63億ドル(約1.0兆円)で前年同期比+4.3%(為替一定ベースでは+3.0%)の増加となりました。全体として、取引件数と販売数量の増加が売上成長を支えており、在庫の健全性も維持されています。

米国eコマースが初の黒字化

ウォルマート米国のeコマース売上は前年同期比+21%となり、四半期としては初の黒字を達成しました。これまで、ピックアップ&デリバリーサービスの強化や、ストアフルフィルメントの拡張、サードパーティーによるマーケットプレイス取引の拡大といった施策を進めてきたことで、ようやく収益面で成果が現れた格好です。

また、eコマースの成長は、ウォルマートU.S.全体の既存店売上成長(+4.5%、燃料除く)にも寄与しています。eコマース注文の大部分は店舗を拠点に処理されており、リアル店舗とデジタル施策の融合が進んでいます。ウォルマートのオムニチャネル戦略が順調に機能していることが裏付けられたと言えるでしょう。

広告事業が50%成長、Vizio買収が寄与

同社の広告事業は、グローバル全体で前年同期比+50%の成長を遂げました。米国の広告プラットフォーム「Walmart Connect」単体でも+31%と好調で、広告が同社の利益率を押し上げる成長ドライバーとなっています。

今期は特に、2024年末に買収を完了した米国のテレビメーカー「Vizio(ビジオ)」の業績寄与が目立ちました。Vizioは、インターネット接続型テレビ(Connected TV、CTV)の大手で、自社プラットフォーム「SmartCast」を通じて広告配信を展開しています。ウォルマートは、こうしたCTVを通じた広告と、自社が保有する豊富な購買データを掛け合わせることで、高精度なターゲティング広告を可能にしています。

これにより、同社は小売業の枠を超えた高収益型のビジネスモデルへの転換を図っています。実際、広告や会員制度からの収益はすでに全社利益の約4分の1を占めるまでに成長しており、その戦略的な重要性が一層高まっています。

国際事業も堅調に成長

ウォルマートの国際事業も堅調で、為替の影響を除いた実質ベースで売上は前年同期比+7.8%の伸びを見せました。eコマース売上は+20%と依然として高水準の成長を維持しており、インドのEC大手「Flipkart」や、中国における会員制業態「サムズクラブ」の成長がけん引役となっています。

また、メキシコやチリ、カナダなどの主要地域でも売上成長が続いており、各地域の消費習慣や購買行動に即したデジタル施策や店舗運営が奏功していると見られます。

サムズクラブもデジタル強化で成長

米国で展開する会員制業態「サムズクラブ」も引き続き好調で、既存店売上(燃料除く)は+6.7%、eコマース売上は+27%と高い成長を記録しました。モバイルアプリを使った「Scan & Go」やセルフ精算、カーブサイドピックアップといった非接触型の購買体験が会員の支持を集めており、特にプレミアム会員(Plus会員)の利用率が上昇しています。

店舗運営の効率化と会員満足度の向上を同時に実現している点が、安定成長の背景にあるといえるでしょう。

投資と収益性の両立

ウォルマートは現在、店舗ネットワークの再構築や同日配送網の拡充、広告・メンバーシップ事業の拡大など、成長に向けた多面的な投資を進めています。それと同時に、営業利益率やROA(総資産利益率)、ROI(投下資本利益率)といった指標の改善にも注力しています。

今四半期のROAは7.5%、ROIは15.3%といずれも前年同期を上回る水準となっており、広告やeコマースといった高収益分野の成長が、従来の低マージン型ビジネスモデルからの脱却を支えています。

まとめ:収益性の高い多層的な成長モデルへ

2026年度第1四半期の決算は、ウォルマートが「価格の競争力を軸とした量的成長モデル」から、「収益性の高いサービスを組み合わせた多層的な成長モデル」へとシフトしつつある現状を示しています。eコマースの黒字化や広告事業の躍進は、単なる一時的な成果ではなく、今後の成長をけん引する構造的な変化を裏付けるものと言えるでしょう。

引き続き、同社がどのようにデジタルとリアルを統合し、グローバル市場で競争力を高めていくかが注目されます。

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