りんごECサイトで考える!指名検索増加施策の計測手法
この記事の執筆者

野嶋 友博
株式会社オプト

2015年新卒でオプトへ入社。SNSを中心とした広告運用に携わり、幅広い業種のクライアントを担当した後、2021年よりEC・教育・人材業界を専門とするアカウントプランニング組織に異動し、十社十色のマーケティング施策創出に向け日々邁進中。LINEマーケティングサービスの認定講師「LINE Frontliner」資格を保持。

株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/

指名検索マーケティングの潮流

指名検索(ブランド検索)が重要であることは、あらゆる企業が認識しているところでしょう。しかし「どうすれば指名検索が増えるのか?」「増えたとして、それをどのように評価すればいいのか?」といった課題は、マーケターなら一度は頭を悩ませたことがあるはずです。

本記事では、指名検索がもたらす価値と、それを正しく評価するための手法についてわかりやすく解説します。さらに、評価を行ううえで大きな注目を集めるアスキング調査や、オプトが提供するONE’s Dataの「ビジュアルメジャー機能」というオプト独自のソリューションについてもご紹介します。企業のブランド力向上やマーケティング投資の最適化を考えるうえで、ぜひお役立てください。

指名検索がもたらす3つの価値

まずは「指名検索が重要」といわれる理由を整理しましょう。企業やサービス名、ブランド名を直接検索していただくことは、企業にとって以下のような大きなメリットをもたらします。

  1. 質の高さ(歩留まり効率の良さ)
     指名検索を行うユーザーは、すでに自社ブランドへの興味・関心が高い状態です。そのため、他の広告流入と比べて成約率(問い合わせ後の契約や購入率)が高いケースが多くみられます。
  2. 他社が介入しにくい検索領域
     他社が競合ブランド名で検索連動型広告を出稿することは不可能ではありませんが、多くの場合「違和感」が拭えず、費用対効果が伴わないことがほとんどです。結果として、自社ブランドでの検索は自社だけが“独占的にメリットを得やすい”領域となります。


このように指名検索数の増加はビジネス上の“攻め”にもなり、同時に競合が入りにくい“守り”としても機能します。攻防一体となる強みを持つ指標が、指名検索の魅力といえるでしょう。

指名検索を増やすうえで、つまずきがちなつのポイント

指名検索数の伸びは、ブランド力や認知度の向上を計測するうえで有力なKPIとなります。一方で、実際に取り組む際には、多くの企業が以下のような壁にぶつかります。

A. 何が効いているのかわからない(評価方法の難しさ)

テレビCMをはじめ、YouTube広告や交通広告など、複数のブランディング施策を同時期に走らせるケースは珍しくありません。すると「どの施策がどの程度、指名検索の増加に寄与したのか?」が、わかりにくくなる課題があります。直接クリックやコンバージョンが測定しにくい施策ほど、その効果を正確に評価することは難しいのが現状です。

B. 短期的な費用対効果が悪く見えがち(ROIの問題)

仮に「これが指名検索に寄与している」と、影響を与えている施策が特定できたとしても、即効性のある広告施策(例:検索連動型広告やSNSでのコンバージョン成果追及型広告)と比べると、短期的な売上増加に直接的につながりにくい傾向があります。テレビCMやYouTube動画などのブランディング目的の施策は、ユーザーの購買行動に至るまでのリードタイムが長いため、ROI※1を厳密に見ると「投資対効果が低い」と判断されがちです。

※1:ROI(Return On Investment)とは、投資した費用に対してどの程度利益が出たのかを示す割合で、「投資収益率」「投資利益率」のことを指す。

指名検索の効果を測る一般的なアプローチ

上記の難しさを少しでも解消するため、よく用いられるアプローチに、コーザルインパクトMMM分析、そしてアスキング調査があります。ここでは、SNS広告を活用して指名検索数を増やそうとしている地方農家のりんごECサイトを例に、解説します。

コーザルインパクト

【りんごECサイト×SNS広告の例】

  • 「りんご詰め合わせキャンペーン」をSNS広告でリリースした週から指名検索数がどう変わったかを分析する。
  • 何も広告を出稿しなかった場合の想定値(ベースライン)と、実際の指名検索数を比較して、その差分を広告施策の効果として算出する。

たとえば、SNS広告を配信開始した直前の指名検索数の推移と、配信開始後の指名検索数の推移を比較し、増加分を測定します。もし広告施策以外に大きな変動要因(ニュース露出や季節変動など)が少なければ、その増加分はSNS広告の効果とみなせるわけです。

MMM分析(Marketing Mix Modeling)

【りんごECサイト×テレビCM+SNS広告+その他】

  • テレビCM、ネット広告、屋外広告など、複数チャネルの過去データを統計手法で分析し、それぞれがどの程度売上やブランド指標(指名検索数)に寄与しているかを評価する。
  • 結果をもとに翌年の広告予算配分を検討し、効果の高いチャネルへより多くの投資を行う。

たとえば、1年間の指名検索数とそれぞれの広告投資額を時系列で整理し、売上や検索数の変化に最も影響度が高いチャネルを割り出します。りんごECサイトなら「秋の収穫期にテレビCMを集中的に行う」、「SNS広告は、オフシーズンでも一定量を配信して指名検索数を維持する」など、季節性や需要期を踏まえた施策検討が可能となります。

アスキング調査

【りんごECサイト×購入者アンケート】

  • 指名検索によってサイトを訪れ、りんご詰め合わせを購入したユーザーに対して、購入完了画面やメールで「どの広告や情報を見てブランド名を検索しようと思ったか?」を、直接尋ねる。
  • 選択肢をあえて提示せず、純粋想起を促すことで、ユーザーの頭に残っている“本当に見た広告”を把握できる。

具体的には、りんごの購入完了画面で「検索する前にどの広告をご覧になりましたか?」とフリー回答形式でヒアリングします。たとえば、下記のような回答が得られる場合があります。

  • 「友人のSNS投稿がきっかけで、『○○リンゴ農園』と検索した」
  • 「YouTubeの動画CMをよく見ていたので、翌週にどんな商品があるか調べた」

このように、“ユーザーが思い出せる”範囲で回答していただくことによって、助成想起(広告のリストを提示して「どれを見ましたか?」と聞く場合)と比べて、より正確なデータが集まります。実際に、ユーザーが印象を受けた広告が何だったのか、その広告が指名検索へとつながった理由が明確になります。

原点回帰:アスキング調査の重要性

前述のとおり、コーザルインパクトやMMM分析は長期的なデータが必要となり、結果が出るまで数か月かかる場合があります。また、複数の分析を組み合わせると「どの結果を優先すべきか?」といった迷いが生まれやすいのも事実です。

こうした複雑な分析に対する1つの対処策として、アスキング調査が改めて注目を浴びています。アンケートやインタビューで「実際にどの広告を見たか」をヒアリングする手法は、データだけでは見えにくい“顧客の心の動き”を知ることに適しているためです。

  • 定量データ(クリック数やコンバージョン数)では測れない顧客心理が把握できる
  • 純粋想起により、本当に印象に残った施策がどれかが浮き彫りになる

指名検索に特化したアスキング調査ツール「ビジュアルメジャー」

オプトが提供しているONE’s Dataの「ビジュアルメジャー機能」は、指名検索によるコンバージョン後にフリー回答形式のアンケートを表示し、「どの広告・情報接触がきっかけでブランドを検索したか?」を直接聞く仕組みを実装できるソリューションです。

仕組みの概要

  1. ユーザーが指名検索から自社サイトを訪問し、商品の購入や問い合わせなどのコンバージョンに至る。
  2. コンバージョン後のサンクスページに、フリー回答形式のアンケートを表示。
  3. 回答者から寄せられた自由記述の内容を集計し、「本当に指名検索を後押しした広告や施策」を洗い出す。

得られるメリット

  • 純粋想起をベースとした高精度のデータ
    ヒントを与えずに回答していただくため、実際にユーザーが強い印象を受けた広告だけが抽出される。
  • 投資アロケーションへの活用
    結果を分析することで、「ブランド認知を強化するにはテレビCMなのか、SNS広告なのか?」など、次期施策への予算配分をより合理的に判断できる。

指名検索数を増やす取り組みはROI評価が難しい一方で、アスキング調査のように“ユーザーの生の声”が得られるデータをしっかり集めれば、マーケティング全体の精度を高めるうえで大いに参考になります。

まとめ:指名検索が示す“ブランド価値”の捉え方

指名検索は「ブランド力」や「顧客のロイヤルティ」に直結する、非常に重要な指標です。しかし、その増減を左右する要因や、ROIを正しく評価する方法は複雑で、なかなか一筋縄ではいきません。

  • 指名検索が持つ主な価値
    ・成約率の高さ
    ・独占的な検索領域
    ・攻防一体の強み
  • 増やすうえでの2つの課題
    どの施策が効果を生んでいるかわかりにくい
    ・短期的なROIが悪く見えやすい
  • 評価手法
    コーザルインパクトMMM分析で定量的に効果を把握
    アスキング調査で純粋想起による定性的データを収集
  • ビジュアルメジャーによる指名検索特化型のアスキング調査
    コンバージョンしたユーザーへのフリー回答アンケートで純粋想起を引き出す
    ・明確なエビデンスをもとに次期施策へ予算配分

指名検索は「すでに興味を持ってくれているユーザー」が起点となるため、CPA(Cost Per Acquisition)の観点でも安定した収益が見込める有望な領域です。その分、ブランディング施策や複数チャネルのシナジーが大きく絡み合うため、成果を客観的に把握する仕組みづくりが欠かせません。

コーザルインパクトやMMM分析といった既存の定量分析に加え、アスキング調査で得られる定性的な“生の声”が合わさることで、ようやく全体像がクリアになります。指名検索数を増やしたいと考えている企業こそ、評価方法を再検討し、施策への投資配分を見直す絶好のチャンスといえるでしょう。

ブランド価値を高めるために、指名検索に注力した正しい評価設計を整える――その一歩目として、ビジュアルメジャーのようなアスキング調査ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/

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