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楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、株式会社エアークローゼットで代表取締役社長兼CEOを務める天沼さんに、サブスクリプション事業をテーマにお話いただく回をご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
天沼 聰さん
株式会社エアークローゼット
代表取締役社長 兼 CEO
ファッションレンタルサービス「airCloset

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)

サブスクリプションの本質と事業者の責任

柳田さん:エアークローゼットのサブスクリプションをテーマにお話をお伺いしていきます。ファッション業界は表から見ると華やかですが、ビジネス全般に共通するように、実際はさまざまな課題がある印象です。特にサブスクリプションという仕組みがまだ存在しなかった時代に、天沼さんはバックヤードから全体的を整えてこられました。サブスクリプションは、サービス開始後こそ本格的な課題に直面するビジネスモデルだと聞きますが、その点についてどのようにお考えでしょうか?

天沼さん:私にとって、サブスクリプションはあくまで手段であり、それ自体が目的化するものではないと考えています。一般的な商品行動としては、モノを作って販売をすることが主流ですが、私の定義では、サブスクリプションは「一定の価値や体験を定期的に得られる権利を購入し、それを行使する」という仕組みです。

例えば、エアークローゼットでは、お客様が時間をかけずにコーディネートされた洋服を楽しむことができる権利を購入いただく形になります。私達は、その権利をしっかり活用していただけるようにする責務を負っています。お客様が権利を購入された以上、サービスを確実に提供し続ける責任を背負うのが、サブスクリプション事業者の宿命とも言えるでしょう。

サブスクリプションが「お客様に権利を提供すること」だと最も強く実感したのが、2020年のコロナ禍における不確実な状況の中でした。当時、中国がロックダウンにより、繊維や洋服が日本に入ってこないという事態が発生します。そのときに、サービス継続のために必要な洋服が確保できず、お客様が購入された権利を行使できなくなる可能性があると感じたんです。

柳田さん:たとえ在庫があっても、スタイリストがお客様の好みに合った洋服を届けられない状況も考えられますね。

サービス開始後の課題とチームの重要性

天沼さん:サブスクリプションを「チャリンチャリンビジネス」と表現する方もいらっしゃいます。確かにビジネスモデルとしてはその側面もありますが、お客様が料金を支払っている以上、提供するサービスが伴わなければなりません。そのため、サブスクリプション事業はサービスを開始してからが本当に難しくなると考えています。

サービス開始後は、常に改善を重ねるエンドレスな開発フェーズに入ります。サブスクリプション事業への転換や新規参入を検討している方から相談を受けることがありますが、事業モデルの設計以上に「継続的に改善を進められるチームづくり」が重要だとお伝えしています。改善が止まれば、それはすなわち衰退につながります。

柳田さん:チームビルディングの重要性は、どの業界でも永遠のテーマですね。

天沼さん:経営層が事業の本質を理解し、継続的にメッセージを発信することが重要です。また、サブスクリプションは「何かを体験・経験する権利」だとすれば、その価値をどのように月額料金に見合う形で定義するかも大切です。

エアークローゼットでは、お客様が選ばれた洋服を自由に着用し、ライフスタイルの中で楽しんでいただく権利を提供しています。その価値がしっかり伝わるようにすることが、サービスの持続性につながります。

柳田さん:お客様にとって満足できる洋服が届かない、バリエーションが少ないとなれば、退会のリスクも高まりますよね。サービスが継続するほど、顧客の期待値もどんどん高くなっていくのではないでしょうか。

進化するサービスとPDCAの文化

天沼さん:まさにその通りです。エアークローゼットでは、お客様が多くのアイテムを利用するほど、スタイリストが提案しやすくなる仕組みを構築しています。お客様一人ひとりのカルテ情報が整理されることで、より精度の高いスタイリング可能になります。

柳田さん:最初から備わっていた仕組みではなく、PDCAを回し続けた結果として生まれたものですね。

天沼さん:そうですね。変化し続け、新しい価値をお客様に提供し続けることが、私たちの組織文化の核となっています。お客様の体験を最優先に考え、お客様以上にお客様のことを考えて最適なご提案ができることが理想です。

サブスクリプション事業では、完成された形を一度作って終わりではなく、スピーディーにPDCAを回し続けることが求められます。そのプロセスを楽しめるチームこそ、サブスクリプションに適していると思います。そのため、組織作りや運営体制の構築にも力を入れているのです。

Twitter(現:X)のDMを開放しているので、多くの事業者の方々と議論できたらと思っています。

おわりに:サブスクリプションがもたらす価値を考える

サブスクリプション事業は、単なる収益モデルではなく、顧客に価値体験を提供する責任を伴います。天沼さんの言葉から、EC事業者にとって重要なのは、顧客のニーズに応え続ける柔軟な組織文化と、改善を楽しむ姿勢であることがわかりました。サービス提供は開始がゴールではなく、新たな課題解決の始まりです。顧客との接点を深め、期待を超える体験を提供することで、真のファンを生み出せるのがサブスクリプションの強みです。皆さんのビジネスでも、ただの販売を超えて、顧客と共に進化する価値提供の形を模索してみてはいかがでしょうか。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

■サヴァリ株式会社へのお問い合わせはこちら
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