グロースマーケティングにおける施策がうまくいかない理由と対策:グロースマーケティング戦略でロイヤルカスタマーを育成【第5回】
この記事の執筆者

小嶋 利典
株式会社DearOne
グロースマーケティング部 コンサルティンググループ マネージャー兼 シニアコンサルタント

2012年DearOne参画。企業アプリ黎明期からアプリ開発に携わり50以上のアプリ立ち上げ/グロースプロジェクトに参画。その後、自社アプリ開発サービス「ModuleApps」のプロダクトマネージャーとしてSaaSサービス成長を牽引。現在はそのノウハウをもとに、UI/UXの改善・エンゲージメントツールを使ったアプリのグロース支援・コンサルティングを実施。

施策運用プロフェッショナルサービス
https://growth-marketing.jp/professional-service/

はじめに

本記事では、グロースマーケティングの「サービスと顧客の育成」という視点から、顧客が高い満足度で長期間にわたりサービスを利用し続けるための課題と効果的な対策をお伝えしたいと思います。

企業は消費者の行動変容を促すべくさまざまな施策・打ち手を実施しています。「適切な相手に・適切なタイミングで・適切なコンテンツを・適切なチャネルで伝える」というのは言葉にすると非常にシンプルで当たり前のことのように聞こえます。しかし、これらができている企業はごく一握りです。なぜ有効な施策が実施できないのか?代表的な課題と対策について解説いたします。

課題 ① 配信チャネルごとにバラバラのメッセージ

企業のマーケティング施策はアプリ、Web、メール、広告などそれぞれのチャネルがあり、別々の担当者が別々に運用、配信を行っているケースが多くあります。

一方、消費者の行動はどうでしょうか?

例えば、メルマガに記載されている売れ筋商品ランキングで興味を持ち、移動中にアプリで気になる商品を探して、家に帰りPCからWebサイトでじっくり商品の詳細を確認するといったように、マルチチャネルでのサービス利用が当たり前になっています。ユーザーの嗜好性も多様化し、そのバリエーションは多岐にわたります。

とてもじゃないですが、上記顧客体験を良くするような施策を従来の個別の環境・体制で行うのは難しいことは容易に想像できるかと思います。

消費者の具体的な代表的な利用チャネル
消費者の具体的な代表的な利用チャネル

対策:マルチチャネルでの配信環境を整備する

国内外はじめマルチチャネルでマーケティング施策を行えるツールや環境がどんどんでてきています。アプリのプッシュ通知、アプリ内のコンテンツ、メールのレコメンド、Webのポップアップといった異なるチャネルを一括で管理、配信でき、より効率的な運用が可能になっているのです。

少し前まではそういったツールは利用料が高額だったり、シナリオを増やすごとに開発が必要だったりしましたが、最近ではマーケターがノーコードでシナリオを組めるようなものも珍しくありません。費用についても、ツールが1つにまとまり、施策運用/開発にかかるコストも抑えられることで、トータルすると別々のツールを契約し、別々に運用するよりも費用削減につながることも多くなっています。旧来型のマーケティング施策環境の企業は一度検討してみることをおすすめします。

マルチチャネルでの施策イメージ
マルチチャネルでの施策イメージ

課題 ② データが使えない・活用できない

マーケティング施策の成功には多くのデータが必要です。消費者の行動データ、購買履歴、デモグラフィックデータ(性別や居住地)などを複合的に利用して、一人ひとりにあったタイミングでコンテンツを配信します。しかし、多くの企業はこれらのデータを十分に活用できていません。なぜでしょうか?

それは、データの収集はしているものの”使えないデータ”になっているためです。

具体的には

  • データの型や表記がバラバラになっておりそもそも利用できない
  • Webとアプリで別々の管理IDに紐づいており、別々のユーザーとして識別されてしまっている
  • データが時系列になっておらず、必要なタイミングでの施策に利用にできない
  • デモグラフィックデータ以外のデータと行動データ(購買、閲覧)が別々に管理されている

などがあります。

上記の状態では有効な施策は実施できません。また、使用されていないデータはダークデータと呼ばれています。DX動向調査によると企業平均で48%のデータはダークデータであるといった調査結果もあります。

さらに、データを保持するのもサーバ費用/管理コストがかかるため、施策・データ活用のROIを大きく下げる要因にもなり、企業としては優先して解決するべき課題と言えるでしょう。

対策:活用シーンからデータ設計を行い必要なデータを取得する

データはただ収集するだけではなく、その利用の仕方を事前に明確に洗い出す必要があります。

施策のケースであれば、施策一覧の作成とそれに必要なデータの洗い出しを行います。これは、どんな施策がどのデータを必要とするかを明確にするプロセスです。施策ごとに必要なプロパティ情報を細かく特定し、それに基づいてデータ収集を行います。本記事では割愛しますが、分析やその他の利用においても同様に具体の活用シーンからのデータ設計が必要になります。

出口から逆算してデータを取得することにより、ダークデータを作らず、施策に必要なデータを集めることが可能です。

課題 ③ 施策数が足りていない

施策を成功させるためには、試行回数が非常に重要です。グロースマーケティングでは実際に試行錯誤を繰り返し、何度もテストすることで最適な戦略を見つけ出すプロセスが求められます。しかし、多くの企業では施策のサイクルが遅く、数自体が不足しているケースが少なくありません。これでは、迅速な改善が行えず、施策効果を得ることができません。

試行回数を増やすことにより成功した有名なケースを紹介します。

Twitter(現X)アプリでは以前は2週間に1回グロースハックのループを回していましたが、あるタイミングから週に10回のサイクルに変更をしました。この結果、月間アクティブユーザー(MAU)が急激に増加しました。

対策:PDCAではなくOODAループで改善を

同じように、Netflixでは年間1,000回、Googleのアプリでは年間7,000回ものグロースハックを行っています。この試行回数の増加が成功の鍵となっています。

対策:PDCAではなくOODAループで改善を

グロースマーケティングは、日々データと向き合い、ユーザーのインサイトを探りながら施策を繰り返します。これは根気のいる作業です。そのうえで、コストや人的リソースが限られているなかで成果を出すために「高速で」改善活動をすることが重要です。

PDCAサイクルを回す…とよく耳にすることもあるかもしれませんが、私は「OODAループ」をおすすめしています。

OODAループとは、短期間に何回も「Observe(状況の観察、情報収集)」「Orient(状況理解、判断)」「Decide(意思決定)」「Action(実行)」を回すためのフレームワークです。これを使うことにより、意思決定から行動までを効果的に進めるためのサイクルを指します。

最後に

本日ご紹介した課題・解決策はごく一部ですが日々施策を運用している皆さんのヒントになり、実践いただけるととても嬉しく思います。また、DearOneではデータ活用・施策支援に特化したツールの提供や導入・グロース運用支援を行っております。より詳しく知りたい方、マルチチャネルでの施策実施をお探しの方はお気軽にDearOneまでお問い合わせください。

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