
みなさんも鉄道や商店街のスタンプラリーを一度は体験されたことがあるかと思います。昔は紙の台紙にインクをつけたハンコを押すのが主流でした。しかし最近は、スマートフォンを利用した「デジタルスタンプラリー」が人気を博しております。
「若者以外の方は、スタンプラリーのようなイベントにデジタルツールで参加してもらうのは難しいのではないか?」と懸念されるかもしれませんが、面白いデータがあります。
2022年11月に兵庫県立芸術文化センターにて行われた「わくわくスタンプラリー」は、50代から70代が参加者の2/3を占めていました。この参加者にアンケート調査を行ったところ、利用方法を「簡単に感じた」という参加者は過半数を超え、設計次第ではシニア層も十分にデジタルスタンプラリーが楽しめるという実験結果になっています。
出典:高齢者向けイベントにおけるデジタルスタンプラリーの効果に関する基礎的検討
そこで今回は、Webアプリやネイティブアプリでデジタルスタンプラリーを実施する際のメリットや課題点などについて解説していきます。
山口 明日香
合同会社バックアップ
大学卒業後、システム開発会社でエンジニアとして働く。結婚・出産を経て2023年、バックアップに参画。現在は子育てと両立しながら、プロダクトの情報やアプリに関するお役立ち情報をブログや noteにて発信中。子育てに関連するアプリ情報など常にアンテナを張っています。
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この記事の目次
アプリ(デジタル)×スタンプラリーの大枠
デジタルスタンプラリーは、特定の場所(ラリーポイント)を訪れてスタンプを集めることで、景品や抽選参加権を獲得できるイベントです。
景品としては、
- スマホの壁紙やフォトフレーム
- 抽選への応募権
- コラボしたアニメなどの限定コンテンツ(キャラクターの撮り下ろし音声など)
- 電子マネーやポイント類
などが一般的です。
アプリによるデジタルスタンプラリーは、以下のような業界で利用されています。
- レジャー・テーマパーク業界
- ゲーム・エンタメ業界
- 観光・宿泊業界
- 大型ショッピングモール・百貨店
- 地方自治体
電車のスタンプラリーももちろんですが、特にアニメやテレビなどの舞台をモチーフにした「聖地巡礼」とはとても相性が良いです。
実際に開催されているイベントを調べてみると、幅広いキャラクターと業界のコラボ事例が見当たります。
世界的に人気なポケモンのスタンプラリーは国内外の需要に対応できますし、ちいかわやホロライブの企画は熱心なファンの集客が期待できそうです。
地方などの観光スポットや商店街をラリーポイントにすることで、購買行動を期待できるのが開催地のメリットです。
デジタルで実施するメリット
デジタルでスタンプラリーを行うことは、消費者と事業者間でメリットがあるので、以下にまとめます。
消費者(参加者)のメリット
- スタンプカードを持ち歩く手間、カバンの中を探す手間が省ける
- 物理的なスタンプ台に触る必用がなく、衛生的(小さいお子さんだと、スタンプのインクまみれになることもありますよね)
- スタンプを押せる場所をアプリの地図機能で検索し、そのまま押印までスムーズに行える
- スタンプを集めた特典が抽選応募の場合、そのままアプリ上で応募までスムーズに行える
事業者のメリット
- スタンプラリー用紙やスタンプ台などを設置する必要がなくなる
- ユーザー登録を必須にすることで、消費者のさまざまな情報をマーケティングに活用できる(入力必須でない場合もあります)
- アプリからアンケートを実施することで回答データを集計・管理しやすい
- 参加特典や景品をシームレスに配信できる
- フォトフレームを用意することで、参加者がSNSで拡散し、ブランドの宣伝効果を高められる可能性も
事業者側はどんなデータがとれるの?
スタンプラリーをiOS/Androidアプリで参加するように設計すると、事業者は以下のようなデータを入手することができます。
- キャンペーンの参加人数
- スタンプ取得数、特典獲得数の平均値
- 各ラリー地点への到達時間
- ラリー終了までに要した時間
- (会員登録や抽選応募時にアンケートを実施する場合)氏名・性別・居住地域など任意のユーザー情報
- (位置情報を取得する場合)人の動き
普段はスマホアプリで位置情報を取得されることを嫌うユーザーであっても、イベント中はGPS機能を利用するため、「アプリの利用中のみ位置情報をON」にしてもらいやすくなります。
これにより、人流が把握できるので、どこのラリー地点で離脱者が増えたのかがわかると、次回開催時のラリー地点を設定する目安になります。
デジタルスタンプラリーの押印方法
スタンプを集める方法も以下のようにいくつか方法があります。
QRコード方式
チェックポイントに設置したQRコードを読み取り、スタンプを獲得できます。
利用者側も操作がわかりやすいですが、SNS上に画像が共有されることで不正にスタンプが押せてしまうというデメリットがあるため、最近ではQRコードだけでなく位置情報を組みわせる事例も増えています。
GPS認証方式
GPSによる位置認証を行い、対象スポット付近にいるとスタンプを獲得できます。GPSも単体では不正利用ができてしまうため、QRコードやキーワード認証と組み合わせる事例が増えています。
NFCタッチ方式
各ラリーポイントにNFCタグを張り付け、タグをスマートフォンでタッチすることでスタンプを獲得できます。まだ一般的ではなく、現地スタッフやマニュアルでの操作案内も重要になりますが、不正対策という点では優れた手法です。
スタンプラリーをデジタル化する際の注意点と解決のポイント
参加するハードル
たまたま道を通りかかった際に、イベントポスターのQRコードを読み込んでいる人や、景品のような袋を持っている人を見かけると、自分も参加してみたくなるのが人間です。
ですので、ポスターの設置・フライヤーの配布など突発的な参加者に対しても周知する導線の確保と、直感的に使えるアプリ側のUIデザインは重要になります。
また、スタンプラリーを実施する場所の制約にも注意しましょう。小さな子ども向けイベントの場合、保護者のスマホを借りて操作する必要があるため、親も子も歩きスマホにならないよう気をつけなければなりません。通路が狭い場所などは要検討といえます。
不正利用の防止
スタンプラリーに参加せずにスタンプを不正に獲得し、イベント景品が不正に入手されてしまうケースもあります。不正利用が発覚し、顧客の口コミから不正利用者の存在が伝わると、企業のイメージダウンにつながりかねません。
QRコード画像の流出、位置情報の偽造に対しては、前述のようにQRコードとGPSを組み合わせる方法が一般的な対策です。ラリーポイントにいてQRを読み取ったユーザーのみがスタンプを獲得できます。
また、スタンプ特典が景品の贈呈や抽選の応募で、Cookieでスタンプ情報を保存するシステムの場合、Cookieを削除することで何度も景品獲得・抽選応募ができてしまうこともあります。この不正に対しては、SMSやLINEで認証を行うという対策が一般的です。
ダウンロードの促進
景品や特典があるとはいえ、スタンプラリー参加のためだけにiOS/Androidアプリをダウンロードしてもらうのは若干ハードルが高いといえます。
解決策としては、Webアプリで実施するという手もあります。Webアプリの場合はダウンロードが不要で参加できるため、イベント参加のハードルが下がります。また開発費用もネイティブアプリよりは安価になります。
しかし、NFCを利用した押印ができず、インターネットに接続していないとアプリを使用できないので、山奥や海辺などインターネット接続状況に問題がある場所でのイベント開催には不向きです(ネイティブアプリではオフラインで利用しつつ、オンラインになった際に同期ができます)。
さらにWebアプリからのプッシュ配信は開封率が高くないため、イベント終了後に忘れ去られてしまうことが多いというデメリットもあります。
アンインストールの防止
iOS/Androidアプリを構築する場合でも、イベント限定のアプリとなると、イベント終了後に削除されてしまう可能性が高いです。
そこで、施設や地域の情報を配信するポータルアプリとして構築し、機能としてスタンプラリーを実装するという手もあります。
ポータルアプリにすると開発・運用費用ともに高くなります。しかし、イベントが終了してもプッシュ配信による訴求でアンインストールを防止し、継続的に情報配信ができるというメリットがあります。
システムの開発費用
WebアプリにしてもiOS/Androidアプリにしても、カメラ機能やユーザー認証、位置情報認証などを使うことになるので、“当たり前”の品質のものを作るだけでも一定の費用がかかります。
またスタンプラリーという企画上、直接売上を出して利益に結び付けるという目標設定は難しいです。予算が限られている場合は、新規でアプリを開発することはおすすめできません。
もちろん、ポータルアプリにするなど設計を工夫することでただの「予算消化」のように終わることはなくなるかもしれませんが、コストに見合うリターンが得られるような工夫が求められます。
まとめ
デジタルスタンプラリーは、利用者と事業者の双方にメリットをもたらすイベントです。
とはいえ、事業者がより多くのユーザーを巻き込んで効果を最大化するためには、さまざまな工夫と適切なアプリ・システム設計が重要です。
当社が提供するアプリプラットフォーム「Pasta」では、ノーコード/ローコード開発で初期費用を抑えてネイティブアプリを構築できます。デジタルスタンプ機能のみを提供するパッケージほど格安とはいえませんが、スタンプラリー機能だけでなくお知らせ機能やイベント後も接点を作るプッシュ配信機能をつけたポータルアプリを安価に構築できます。もちろんWebアプリとしての構築もご相談いただけますので、デジタルスタンプラリーを検討の際はぜひお気軽にご相談ください。
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◆この論点についてより詳しい記事はこちら
https://backapp.co.jp/blog/1706
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