
この記事の目次
はじめに
ユーザーがECサイトで商品を購入する際には、予定になかった商品や関連商品を追加で購入することがよくあります。
これらの追加購入、すなわち「ついで買い」や「クロスセル」は、顧客単価を向上させることに直結し、ECサイトの売上及び利益の拡大に不可欠な施策とされています。
しかし、多くのEC事業者が、ついで買いを促す商品の提案や、購入しやすい価格設定、送料の戦略に力を入れていないのが現状です。
本コラムでは、ECサイト利用者を対象に行ったついで買いに関するアンケート調査の結果を集計し、分析しています。
この調査結果は、ECモールの運営はもちろん、自社ECサイトのクロスセル戦略にも活用可能なデータです。参考データとして、ぜひご活用ください。
調査方法
株式会社TOKYO GATEでは、2024年1月3日から2024年1月13日にかけて、オンラインショップで購入経験のある18-70歳の男女482人を対象に、オンラインショッピングにおけるついで買いに関するアンケートを実施しました。
調査方法 Google フォームを使用したインターネット調査
調査期間 2024年1月3日から2024年1月13日
調査対象 18〜70歳以上の男女
サンプル数 482名
サマリー
- 1回以上ついで買いの経験があるユーザーの割合は全体の8割弱を占め、多くの消費者が、予定外の商品を購入した経験があることがわかります。
- ついで買いをした商品ジャンルを調査した結果、食品・飲料・お酒、日用品、ファッションなどが挙げられ、全体の約3分の1がこれらのジャンルでついで買いを経験しています。
- スポーツ・アウトドア、お歳暮・お中元、DIY・カー&バイク用品、家具・キッチン用品、おもちゃ・ホビー用品などのカテゴリでは、ついで買いはほとんどされていないことが判明しました。
- 化粧品、健康食品・サプリメント・薬、美容・健康グッズのついで買いは、女性が男性よりも多いことが確認されました。
- 本・CD・ゲーム、家電・カメラ・AV機器のついで買いは特に男性に多いという結果が出ました。
- ついで買いをした理由について調査した結果、回答者の半数以上が「送料無料ラインに達するため」を選びました。
- 「よく買われている商品の提案」「過去に閲覧した商品」「セット商品の提案」からのついで買いは少ないという結果が出ました。
各設問の回答と考察
オンラインショップでついで買いをした経験

オンラインショップにおけるついで買い経験の有無を調査した結果、回答者の27%が「何度もある(5回以上)」、51.2%が「何回かある(5回未満)」、21.8%が「1度もない」と答えました。ついで買いの経験があるユーザーの割合は全体の8割弱を占めることから、多くの消費者が、予定外の購入をする傾向があることがわかります。EC事業者にはクロスセルの有用性を示す結果となりました。
オンラインショップでついで買いをした経験(男女別)

男女別の集計では、ついで買い経験が「何度もある(5回以上)」と答えたユーザーは女性が男性より7%多く、ついで買いの経験があるユーザーの割合も女性がわずかに多いことがわかります。日常的に買い物の機会が多いことや、「思わず買ってしまう」といった心理特性が影響しているのかもしれません。クロスセル施策を実施する場合も、女性向けの訴求がより大きな効果を発揮する可能性があります。
オンラインショップでついで買いをした商品ジャンル

ついで買いをした商品ジャンルを調査した結果、食品・飲料・お酒、日用品などの消費財や、ファッションについては、おおよそ全体の3人に1人がついで買いの経験があることがわかりました。対照的に、家電・カメラ・AV機器、文房具・オフィス用品などについては、ついで買いされにくい傾向があることがわかります。従って、これらのジャンルは消費財やファッションに比べるとクロスセルが期待できない可能性があります。
また、その他(上記の選択肢以外)には、スポーツ・アウトドア、お歳暮・お中元(催事)、DIY・カー&バイク用品、家具・キッチン用品、おもちゃ・ホビー用品が含まれます。これらのジャンルは、一般に目的がある上で購入されることが多いと考えられ、ついで買いを促すことが難しいと考えられます。
オンラインショップでついで買いをした商品ジャンル(女性)

ついで買いをした商品ジャンルについて、女性のデータを集計した結果、化粧品、健康食品・サプリメント・薬、美容・健康グッズについては女性が男性よりもついで買いの経験が多い結果となりました。消費財やファッションに比べると、その他のジャンルのついで買い経験は少なく、クロスセルの効果は限定的であるとも言えます。
オンラインショップでついで買いをした商品ジャンル(男性)

ついで買いをした商品ジャンルについて、男性のデータを集計した結果、本・CD・ゲームなど、家電・カメラ・AV機器のついで買いは男性に多いことがわかります。また、その他(上記の選択肢以外)の中では、スポーツ・アウトドア、DIY・カー&バイク用品について、男性によるついで買いが多い結果となっています。ついで買いの経験は女性に多いですが、特定のジャンルにおいては男性に向けたクロスセル施策が有効と考えられます。
オンラインショップでついで買いをした理由

ついで買いをした理由を調査した結果、回答者の半数以上が「送料無料ラインに達するため」を選びました。その他には、「キャンペーンの条件を満たすため」「クーポンの適用条件を満たすため」が上位に入り、「よく買われている商品の提案」「過去に閲覧した商品」「セット商品の提案」などは下位となりました。この結果から、キャンペーン・クーポンの適用条件や、送料無料ラインと商品価格の設定は、極めて重要であると言えます。上記と比較して、大手モールなどでよく行われるレコメンドは、あまり効果的でない可能性があります。
オンラインショップでついで買いをした理由(女性)

女性のデータを集計した結果では、「キャンペーンの条件を満たすため」「同時購入されている商品の提案」の2点において差が生じました。女性は比較的、送料無料ラインへの到達やクーポン・割引などのディスカウントによってついで買いされやすく、男性は女性に比べ、同時購入の提案や過去商品の提案などのレコメンド機能によってついで買いされやすいのかもしれません。
オンラインショップでついで買いをした理由(男性)

男性のデータを集計した結果では、女性に比べ偏りの少ない結果となりました。
配送料無料やキャンペーンの条件設定は女性と同様に有効と考えられます。加えて、男性は女性に比べ、同時購入の提案や過去商品の提案などのレコメンド機能によってついで買いされやすいのかもしれません。
おわりに
ついで買いの経験があるユーザーが全体の約80%を占めていることは、クロスセルを通じた顧客単価の向上が実現可能な施策であることを示しています。
消費財におけるついで買いの割合は高い一方で、特定の目的で購入される商材では、ついで買いの割合が低い傾向にあるようです。
さらに、ついで買いの最大の理由は送料無料ラインへの到達のためであり、この結果からも、商品の価格設定や送料無料ラインの戦略的な設定が顧客単価を大きく左右する重要な施策であることがわかります。
本コラムを貴社の顧客単価の向上にお役立ていただけますと幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
株式会社TOKYO GATEは多くの過去実績を保有するECのプロフェッショナルが集うECマーケティングの専門家集団です。マーケティング戦略の立案から施策の実行、PDCAまでを総合的に支援します。
成功事例に基づいた確実性の高いコンサルティングが特徴で、提案した施策を速やかに実行できる体制を整えています。EC・D2Cに関してお悩みの方はお気軽にご連絡ください。
弊社サービス資料はこちらからダウンロードください。
https://tokyogate.co.jp/
合わせて読みたい