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コミュニティマーケティングとは?
コミュニティマーケティングは、既存顧客が集うコミュニティを活用して、顧客同士の交流を促し顧客ロイヤリティを高めるマーケティング施策のことをいいます。従来のマーケティングでは、企業から顧客に向けた情報発信や販促活動が主となっていました。これに対しコミュニティマーケティングでは、既存顧客間のコミュニティケーションや顧客の声を重視し、リサーチやユーザーインサイトの獲得、ロイヤリティ向上を目的とする点が大きな違いです。
具体的な手法としては、商品や企業専用のコミュニティサイトを立ち上げ運用する、SNSや動画サイト上で顧客間のコミュニケーションを促す、オフラインでユーザー参加型のイベントを開催するなどが挙げられます。
ECサイトにおいては、コミュニティ上でロイヤリティが高まることによる購入回数の増加や、LTVの改善、また商品に関する口コミや改善点の収集に活用できます。特にオリジナル商品の開発に力を入れているECサイトでは、コミュニティは有力なツールとなることでしょう。
コミュニティマーケティングが重要な理由
次にコミュニティマーケティングが注目されている背景をご紹介します。
新規顧客数が減少傾向にある
少子高齢化が進む日本では新規顧客数は減少傾向にあります。新規顧客を獲得し続けるだけでなく、一度でも購入してくれた既存顧客のロイヤリティを高め、購入単価や購入頻度を高め、売上を伸ばしていくことが重要です。
また、ここ数年でECサイト数が非常に多くなり、それに伴い広告を出稿する企業が増加した背景から、CPAが急騰しています。さらに仕入れ商品を販売する場合には価格競争が発生し、利益を出しづらい現状もあります。
ブランドや商品に愛着を持つユーザー同士が集うことで、よりブランドや商品への愛着を高めたり、既存顧客同士のコミュニケーションのなかで、商品の使い方や食べ方などの活用方法が共有されれば、リピート購入につなげやすくなるでしょう。商品を手に取る機会を提供しにくいECサイトでは、利用者の声が別の商品の購入のきっかけになることも考えられます。
マスマーケティングの効果が減少している
購入の意思決定にあたり、商品の性能や価格だけでなく、SNSや口コミなどユーザー個人の発信を参考にすることが増えてきました。これに伴い、企業からの一方的な発信になりやすいマスマーケティングの効果は以前に比べて減少してしまっています。
コミュニティマーケティングでは、特にブランドや商品への愛着が高いユーザーの感想や意見を集めやすく、うまく活用することで商品の魅力を伝えることができます。コミュニティで集めたユーザーの声を、商品のキャッチコピーに活用したり、商品開発の参考にすることも可能です。
コミュニティマーケティングの手法
コミュニティマーケティングの手法としては次の3つの手法が用いられます。
コミュニティサイトを運営する
コミュニティサイトとは、企業やブランドが自ら立ち上げ、運営するユーザーがコミュニケーションを取るのためのサイトのことです。既存ユーザーのなかでも特にブランドや商品への愛着が強いユーザーが集まるため、ブランド担当者が気がついていなかった商品の魅力や活用方法が発信されることもあります。
ただし、コミュニティサイトを立ち上げただけでユーザーが集まることは稀ですので、そもそもブランド認知が高く、ユーザー数が多いブランドや商品でなければ、十分な規模のコミュニティサイトにすることは難しいでしょう。また、認知が高いブランドであっても、立ち上げ初期には、SNSやメルマガなどからユーザーを募る必要があります。
さらに、コミュニティサイトを盛り上げるためには、定期的な企画の立案やイベントの開催も必要になるため、それなりの運用コストを見込んでおく必要があるでしょう。
SNSのハッシュタグを活用する
InstagramやX、FacebookなどのSNSで利用できるハッシュタグを活用し、コミュニティを形成することもできます。ブランド名や商品名、キャンペーン用に専用のハッシュタグを設けて投稿を促すことで、ブランドや商品を愛用するユーザー同士のコミュニケーションが生まれることが期待できます。
SNS上には、ブランドや商品の愛用者以外のユーザーが多数存在することや、投稿内容の偏りを気にするユーザーもおり、コミュニティサイト上でのコミュニケーションに比べて、コミュニケーションが活性化しない可能性も考えられます。一方でコストを抑えて取り組みを始められる点はメリットです。
ライブ配信を実施する
YouTubeやインスタライブ、Xのライブ配信では、複数のユーザーが同時にライブ配信を見て、コメントのやり取りができます。ブランドや商品の担当者とも直接やり取りができる点もファンにとっては魅力となるでしょう。
ECサイトにおけるコミュニティマーケティングの効果
ここからはコミュニティマーケティングの効果をより詳しくご紹介します。
ユーザーのロイヤリティ、LTVが高まる
先述の通り、コミュニティマーケティングを行うことで、ユーザーのロイヤリティやLTVの向上が期待できます。コミュニティで交流を重ねることで、ブランドや商品への愛着や親しみがより深まり、次の購入につながるでしょう。
売上の8割を上げているのは2割の優良顧客だというパレートの法則(2:8の法則)という考え方があります。コミュニティに積極的に参加するユーザーは、ユーザー全体で見ると少数になりますが、一部の既存顧客のロイヤリティを高めることが、売上全体を伸ばすことにつながります。
また、コミュニティでロイヤリティを高めたユーザーは、競合他社に目移りしづらく、周囲の人にも勧めたり、SNSなどで情報発信をしてくれることも期待できるでしょう。
口コミが増え、商品の評価がわかる
コミュニティでは企業とユーザーが近い距離感で交流できる点もメリットです。商品の使いづらい点や購入、配送方法の不便な点などを拾い上げ、改善に役立てることもできるでしょう。SNSやECモール上の口コミから拾い上げることもできますが、さまざまな投稿の中から自社商品に該当するコメントだけを収集するのはなかなか骨の折れる作業です。コミュニティを形成し、愛用者の声が集まる場を作ることで、より手軽に商品の評価を確認できるようになります。
また、ユーザー自らが上げた要望に対し、企業が改善を検討してくれるというのは、企業への信頼を高め、今後も利用しようという気持ちを高めることにもつながります。
ユーザーリサーチが手軽に、早くできる
一般的なユーザーリサーチの方法として、アンケート調査やユーザーインタビューが考えられますが、そもそも回答が集まりにくかったり、調査の実施までに時間とコストが掛かってしまったりします。また、インセンティブを付与した調査では本音で回答してくれているのかどうかわからないという課題を感じるケースも見受けられるでしょう。
ブランドや商品を愛用するユーザーが集うコミュニティでは、日々のコミュニケーションからユーザーの思いや商品の課題を推測することができる他、アンケートやインタビューにも積極的に協力してくれるユーザーが多く、ユーザーリサーチをより手軽に、低コストで行うことができるようになります。
コミュニティマーケティングの課題
コミュニティマーケティングを行なっていく上で、配慮が必要な課題についてもご紹介します。
成果が出るまでに時間がかかる
コミュニティマーケティングを行うためには、まずコミュニティを立ち上げ、その上である程度の規模の参加者を集める必要があります。ブランドや商品を愛用するユーザーが集まるには時間がかかりますし、コミュニケーションが活性化するにはさらに時間がかかります。
ユーザーロイヤリティの向上や、コミュニティユーザーによる口コミの効果が出るまでには年単位での取り組み計画を立てておくべきでしょう。また、成果が出るまでに時間がかかると社内での理解が得にくいという課題があります。事前に長期的な取り組みであることを周知しておくなど社内調整には配慮が必要です。
従来のマーケティング手法とは異なるスキルが必要
企業からユーザーに対して情報発信をするのが主だった従来のマーケティングとは異なり、企業とユーザーの間でのコミュニケーションや、ユーザー同士のコミュニケーションをいかに活性化させることができるかが、コミュニティマーケティングの鍵を握ります。
コミュニティサイトやSNSの運用、管理、企業担当者としての立場を活かしたコミュニケーションスキルなどこれまでのマーケティング手法とは異なる新しいスキルが必要です。
運用コストが大きくなりやすい
ユーザーとのコミュニケーションを活発に行なったり、ユーザーが喜ぶ企画を開催するなど、コミュニティを盛り上げるためにはさまざまな取り組みが求められます。そのため、コミュニティの運営や管理にかかるリソースの確保が必要になります。
また、コミュニティサイトを立ち上げるのであればサイトの構築や運営にかかるコストも必要です。長期的にコミュニティマーケティングに取り組み、成果につなげるためにはそれなりのコストがかかる点も事前に確認しておきましょう。
ECサイトのコミュニティマーケティングの事例
コミュニティマーケティングに取り組んでいるECサイトの事例をご紹介します。
タマチャンショップ

有限会社九南サービスが運営するタマチャンショップは、自然食品を取り扱うECサイトです。コミュニティサイトを立ち上げ、購入検討者に愛用者の声を届けたり、既存顧客のロイヤリティを高める目的でコミュニティマーケティングを行なっています。
ベースフード

「BASE BREAD®︎」や「BASE PASTA®︎」などの食品を販売するベースフード株式会社は、コミュニティサイトを活用して、ユーザーの声をリアルタイムで収集しています。自社のアカウントとコミュニティサイトの顧客情報を紐付けることで、データ分析に役立てています。
つくるんです®️

DIYキットブランド「つくるんです®️」を展開する株式会社プラザクリエイトは、完成品や制作過程を共有する場としてコミュニティサイトを活用しています。コミュニティ参加者がSNSで発信したり、購入する商品ジャンルを拡大したりとロイヤリティの向上に貢献しています。
おわりに
ECサイトにおけるコミュニティマーケティングについてご紹介しました。ブランドや商品の愛用者のロイヤリティを高めることや、LTVの向上につながりやすい施策です。愛用者との長期的なお付き合いが必要となるマーケティング施策であるため、運用工数はかかりますが、その分ユーザーの愛着をより高めることができます。こだわりのある商品を取り扱っているECサイトはぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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