【ゲストスピーカー】
塩原 大輝さん
有限会社山年園 代表取締役
お茶の専門店「巣鴨のお茶屋さん山年園」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
山年園が選ぶ広告と選ばれる仕組みづくり
柳田さん:今回は広告のお話に商品開発を含めて伺っていきます。前半では広告を利用する前段階としてバックヤードの準備の話がメインになりましたが、視聴者の皆さんは、たくさんある中でどの広告の反応が良いかを知りたいと思います。
広告の効果は店舗によって異なりますが、塩原さんが重きを置いている広告や、やらない広告についてお聞かせいただけますか。
塩原さん:母の日、父の日、お歳暮やお中元のような季節販促広告が一番良く売れます。そのため、楽天市場、Yahoo!ショッピング、au PAY マーケットなど、当店のギフトセットに合う広告はできる限り出稿しています。また、季節販促時期に出るメルマガ広告を利用することもありますね。
他店で多く利用されているお買い物マラソンや楽天スーパーSALEの広告なども、もちろん利用したことはあります。非常に目立つ掲載位置ではあるのですが、短時間・短期間の広告はもったいないなと。季節販促広告は2か月間出るので、同じ金額を払うならそっちのほうが良いと私は思っています。また、それらの広告自体を否定する訳ではないですが、当店では成功したことがないんです。うちには合わないんだなと。
でも、その広告が成功するかどうかはやってみないとわからないんですよね。だから、やったことのない会社はやったほうが良いと思います。特にECモールの広告は1商品に掛けるものが多いため、分析しなくても広告が表示されている時間帯に掲載商品がどれくらい売れたかで、効果が何となくわかるはずです。例えば、20万円の広告を掛けて30万円分売れたら原価が安ければ良いですが、ほとんどのお店では失敗かと思います。
広告の良し悪しが簡単にわかるので、いろいろな広告をやったほうが良いでしょう。季節販促広告は当店だから良いですが、他店で良いかどうかはやってみないとわかりません。とにかく全部やってみることです。
柳田さん:父の日の広告を何十本とやっているのは、どこを見ても山年園が出てくるように面をおさえることで、露出を増やす狙いがあるのでしょうか?
塩原さん:面をおさえる戦略は取っています。お茶漬けだけでも海鮮枠と惣菜枠の両方に出稿したり、商品のセット組みのバリエーションを増やしたりすることで、さまざまな面をおさえられるようになるでしょう。
当店では「よもぎ茶」が結構売れるんですが、よもぎ茶のリーフでも1袋だけではなく、2袋・3袋・6袋・10袋とセット組ごとにかご(商品ページ)を作っています。ティーパックも同様に販売しているため、1商品で5かご持っているのです。つまり、よもぎ茶というワードだけでリーフとティーパックで10かごあることになります。当店は商品数でいうとあまりないかも知れないですが、こういった形で今では大体2,000くらいのかご数があります。これが面を取るための1つの取組みです。
勘と度胸で経験を積み上げ、分析なし成功する方法とは
柳田さん:父の日や母の日で何を買うか迷っている方に面をおさえる戦略は有効だと思いますが、普通はそこまでやりきれません。確固たる分析があって、このような広告戦略に至ったのでしょうか。
塩原さん:分析はしていないです。友達から「塩原くん、すごい分析しているんじゃないの?」と言われますが、面倒くさがり屋でもあるので本当に分析が苦手なんです。結局やってみないとわからないので、実際にやって売れたか売れないかで判断しています。
柳田さん:1,000万円分の広告費を掛けて分析していない人はそうそういないと思いますよ。
塩原さん:過去に積み上げた経験から、買う前に何となくどれくらいの効果になるのかはわかります。でも買ってみて失敗したこともあるんですよ。1,000万円分の広告を買って、売上が1,000万円に届かないのは大失敗だと思いますが、流石に今までそこまでの失敗はしていません。1,000万円分の広告を買って、売上が2,000万円でもそんなに利益率が高い商品ではないので当店では失敗です。
正直お茶漬けギフトは利益率がそんなに良いものではないため、失敗できないです。しかし、在庫が完全に切れるなど、よっぽどのことがない限りは、基本的には大失敗にならないでしょう。
柳田さん:広告をやることについては、勘と度胸みたいな感じですかね。
塩原さん:そうですね。
柳田さん:それで1,000万円分も広告を出稿するのはすごいです。びっくりしました。
塩原さん:もちろん利益もすごく大切にしていますが、売上をそれ以上に見ているんです。例えば広告費を0円にしたら利益が相当出ますが、売上はもちろん下がります。1,000万円分の広告を購入すると中には費用対効果がイマイチなものもあります。そういう広告をやめると利益が出るかもしれないですが、売上も大切なので、今のところ広告はいっぱい掛けています。
ある程度売上を立てていると選択肢が広がることもあり、何かあったときに何でもできるように決算月に税金を払うなら広告費に当ててチャレンジしようと考えています。
柳田さん:大失敗したことはあるんですか?1個1個の広告を見たら失敗はありそうですが、1か月全体で失敗してしまったことや、イベントを通して全く当たらなかったことはあるのでしょうか。
塩原さん:大きなやらかしではないですが母の日の前日くらいに配信される20万円ほどのメルマガ広告を購入していたのですが、メルマガの配信時点で在庫が切れてしまったのです。そういう失敗はありますが、1,000万円レベルの大失敗はないですね。
柳田さん:1か月丸っと全部駄目だったってことはありませんか?
塩原さん:それはないです。とはいえ、今年(2020年)の母の日はコロナがあったのでとても怖かったです。コロナが原因で、もしかしたら大失敗になり得るのかなと思いました。
柳田さん:仕込みの時期が2~3月なので、緊急事態宣言になってからの4月の時点では不確定要素がとても多かったかと思います。
塩原さん:4月は震えるくらい怖かったですね。例えば、ヤマト運輸が止まったらどうするのかと心配になることもありました。4月中旬は売っていいのかな?と思う空気感もありましたが、売上は結果的に良かったです。
柳田さん:今回は母の日の途中で在庫をなくしてしまいましたが、仕入れについてはどのように対応しているのでしょうか。出稿する広告に対してどの商品を掲載するのか振り分けているかと思うのですが、商品の露出量からどれくらい売れるのか計算して在庫管理をやっているんですか?
塩原さん:計算まではしていなくて、大体で在庫を用意しています。「これくらい売れるだろう」と読みを立てて仕入れていますね。今回の母の日に在庫がなくなった理由は、コロナという外的要因があったことに尽きるのではないでしょうか。
5月1日から4日まで売って、5日くらいに売り切れましたが、4日間だけで去年の5月の売上を超えたんです。1日で昨年同期間の7~8倍売れてしまいました。私の予想では売れても2倍くらいの感覚で、かなり上振れして3倍くらいと思っていたんです。加えて、父の日までの在庫をすでに用意していましたが、それでも足りませんでした。
柳田さん:母の日に余ったら父の日に回せば良いと思って裏で用意していた在庫さえも売れてしまったと。
塩原さん:だから今から父の日がどうなるのかちょっとヒヤヒヤしていますが、商品だけでなく資材などもしっかり用意できるように頑張ります。
柳田さん:在庫の持ち方など綿密にやっているのかと思ったら、ここも勘と度胸なんですね。
塩原さん:勘と度胸ですね(笑)
柳田さん:いやぁ、すごいですね。普通だと分析して、この広告にこの商品ならこれくらい売れそうだからと計算して、仕込むと思います。先ほどから「時間時間」と言っていますが、計算する時間すらもったいないのでしょうか?
塩原さん: そうですね。その分析の時間を私は作りたくないし、作れないし、他の商品開発に回したいと思っています。
そういえば大失敗が1回ありました。去年の6月に大失敗をしたんです。父の日用に仕入れたお茶漬けセットが20種類くらいあり、どのセットがどれくらい売れるかだいたいわかるのですが、予測を誤ってしまってしまい、賞味期限の関係で500万円分くらいの在庫をほぼ無料で配る結果になりました。
柳田さん:売れなくて処分しなければいけなくなったんですね。
塩原さん:スタッフに上げても処理できない量で、最終的には400~500万円の損をしました。
柳田さん:それも勘と度胸で仕入れた結果ですか?他に同じような規模の失敗はあったのでしょうか。
塩原さん:勘と度胸で仕入れて失敗しました。この規模の失敗はこれ1回だけです。
山年園の商品開発と仕入れの工夫
柳田さん:普通だと分析・計算をするはずですが、その時間を削ってでも行っている商品開発。どういうことに重きを置いて商品開発をしているのでしょうか?
塩原さん:いろんな商品を仕入れますが、当店の場合はキーワード単位で商品を持てるようにしています。例えば「よもぎ茶」というキーワードの商品は持っているから、新たによもぎ茶関連の商品は増やさなくても良いとか、「酵素」の商品は取り扱っていないから酵素と調べて入っているお客様がいないため、そういう商品を扱うとか、こういった基準で商品開発をしています。
ギフトショーに行っては、お客様が商品を購入するときに、どのようなキーワードで調べるか考えながら見定めています。当店では薬事法を厳しく見ているので、商品ページには何の情報も入れていません。健康食品や健康茶は、商品ページを見ただけでは何が良いか全くわからないと思います。
商品を全く知らない方にとっては商品の魅力を理解し難いですが、成分は書いてはあるため、すでに成分などの基本的な情報や商品名について知識を持っている方が、検索時にキーワードを直接入力して流入するのです。健康食品や健康茶は、そういう流入が取れそうなキーワードを考えて探しています。
ギフトショーで見た商品を良いなと思うと、まずはその商品を楽天市場で検索してみます。5,000件出たらいろいろな店舗さんが取り扱っていることもあり、ある程度アクセスされる商品だといえます。そのとき5,000商品あっても、1番最初に出てくる商品のレビューが100件しかなかったら1番になれるんじゃないの?とか、1位はレビューが3,000件あるけど、2位以下は全然付いていないとか、独占している会社があるけど他の店舗でも売上を伸ばせるんじゃないかとか、考えるわけです。
検索結果が10~20商品しか出ないと流石にボリュームが少ないと思うのですが、意外と楽天市場の検索バーにサジェストがたくさん出ることもあり、そんなときはGoogleのキーワードプランナーを使ってボリュームを調べることもあります。
仕入れの場として、ギフトショーや食品マーケットショーに足を運び、知らない商品を見たら、まずはググっています。友達のお店が扱っている商品だと競合してしまうので扱わないようにしていますね。
テレビを見ているときも展示会に行くのと同じ感覚で見ています。テレビ番組内で紹介されている商品を調べたり、テレビで取り上げていた商品をパートさんに教えてもらったりしています。
特にスタッフに教えてもらった商品は仕入れる努力を必ずします。私が売れるかどうかを見極める眼力がないですし、買うかどうかはお客様が決めるためいろいろと扱っています。
柳田さん:要するに、広告はまずやってみるですが、商品開発をするにあたってはちゃんと調べているんですね。目利きがないから検索ボリュームを調べてニーズがあるかどうかを確認し、検索ボリュームだけではなく、他の要素を含めて売れそうであれば仕入れるという感じですかね。
塩原さん:食品では私が美味しそうだと思うかどうかも仕入れの基準になります。仕入れた結果、売れなかったのはしょうがないです。ですが、食品を仕入れる上で決めているのは賞味期限です。賞味期限が1か月しか保たない商品は扱いづらいですよね。
柳田さん:そういった諸々の条件をクリアした商品をキーワードフックで仕入れているから、広告からでも購入してもらいやすいのかもしれませんね。
塩原さん:そうですね。あとはプライベートブランド化できるかどうかもポイントです。パッケージをバルクで仕入れて、社内で作るか提携している製造会社にお願いし、仕入れた商品を別のパッケージとして販売できることも大切にしています。
違う店舗でも売られている同じ価格のメーカー品は販売しづらいです。それではAmazonにお客様が流れてしまうので別パッケージにするんです。仮にパッケージを変えられない商品だとしても、商品の画像を変えてオリジナルっぽく見せるよう努力しています。
おわりに:勘と度胸の販促とは裏腹に、分析のもとに行われる商品開発
広告はまずはやってみることが大切だと塩原さんはお話していました。資金力が合ってこその意見のように感じられる方もいらっしゃるかとは思いますが、月の売上から一定割合の販促予算をおさえて、適度に広告を活用してみることから挑戦しても良いかもしれないですね。
商品開発においては、仕入れの選定のみならず既存の自社商品をECモール内でどう見せるのか必要な観点かと思います。商品1つとっても価値や魅力が多面的にある場合は、お客様が購入の際に商品ページを見る視点が異なります。買い物をする目的でお客様がアクセスするECモールで、自社の商品がどのように見られるのか参考になるお話ではないでしょうか。
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