【ゲストスピーカー】
塩原 大輝さん
有限会社山年園 代表取締役
お茶の専門店「巣鴨のお茶屋さん山年園」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
広告費を掛けるタイミングと効果の良い時期
柳田さん:モール合算で月商数億円のお茶屋さんに、モール運営の実践的な内容として主に広告運用の話を伺いたいと思います。山年園は巣鴨に2つの実店舗を持つお茶屋さんですが、圧倒的にネットのほうで売ってらっしゃいます。
聞くところによると、その秘訣がECモールの広告運用に非常に長けているとのことです。ちょうど5月の母の日が終わったばかりですが、調子が良かったと聞いています。広告費はかなり使ったのでしょうか?
塩原さん:額にすると1,000万円以上使いましたが、採算は取れています。去年の母の日は1,000万円も使っていませんでしたが、お中元や12月のお歳暮でかなり良い結果を残せたので、母の日にも投資をすることを決めました。母の日の広告は1~2月中に決めないといけないため、今年(2020年)はコロナの影響でECが伸びるから投資額を増やしたというわけではありません。
柳田さん:お歳暮のときも大きめに広告を掛けているんですか?
塩原さん:去年の12月のお歳暮も1,000万円以上使いましたね。
柳田さん:何気なく仰っていますが、ECモールで1つのイベントに1,000万円以上の広告費を投じるのは相当なことではないでしょうか。
塩原さん:当店は他と比べるとかなり使っているほうでしょう。ですが物流の対応や在庫の確保ができ、かつ転換率を同じように保てるようであれば、2,000万円でも3,000万円でも、もっと広告費を掛けても良いと思っています。ただし、現実的には物流や在庫の問題を解決するのは一朝一夕のことではないため、抑えている状況です。
他にも広告費は掛けた分だけ売れるのですが、対応する人件費もかかるため、キャッシュが回らないといけないですよね。楽天市場やYahoo!ショッピングといったECモールでは、売れてもキャッシュがすぐに入ってくるわけではありません。こういった諸々の条件を全てクリアすれば、広告費をもっと掛けられると思います。
あとは広告枠に限りがあることも挙げられます。楽天市場ではお茶漬けセットをメインの商品として販売していますが、広告を出せる枠が決まっているのです。海産物の枠、お茶の枠などいろいろな枠がありますが、関連する広告枠はほとんど購入しています。モール側の広告も年々種類が増えているので、合うものが増えていけばどんどん使っていく予定です。
例えば、普段はメルマガ広告を購入することは少ないですが、今年の5~6月は父の日や母の日に向けた専用のメルマガ広告が出ていました。こういった相性が良さそうな新しい広告が増えれば嬉しいです。
今年の母の日では、一番大事な期間の5月5日以降に在庫を切らしてしまいました。次に控える父の日やお中元、お歳暮ではそうならないように気をつけて、同じ転換率を保ちながら広告を掛ける額を増やしていきたいです。
広告で伸びる売上を支えるバックヤードの体制構築
大量の発送を可能にした物流の業務代行
柳田さん:リスナーの方々はどの広告が良いのか聞きたいかもしれないですが、バックヤードについて、もう少し突っ込んで伺いたいと思います。物流は自社で行っているのでしょうか?
塩原さん:物流は元々自社のみで対応していましたが、去年の4月からメインの商品はスクロール360さんにお願いしています。お歳暮の期間であれば売上の波が12月全体に分散されるため自社で発送しきれるのですが、母の日や父の日は当日の3~4日前に注文が集中するため自社で全て発送することが難しいです。そこで、去年の4月に、5月の母の日と6月の父の日に向けてスポットで一部商品をお願いすることにしました。
柳田さん:同梱の注文が入ったときはどうしているんですか?
塩原さん:スクロール360さんには一部の商品しか預けていないため、それ以外の商品とセットで購入いただいた場合は自社から発送します。また、当店ではお客様の要望を広く受け入れているので、自社でやらないと問題が出てしまうような場合もあるんです。例えば、お客様が注文したギフトに、自身で書いた手書きのメッセージカードを当店に郵送するから、それを同梱して欲しいという要望などがあります。
柳田さん:そんなところまで対応しているんですね。
塩原さん:当店はこういった依頼はほぼ全て何でも受けています。
柳田さん:そこまで対応しているからこそ、月商数億円あるんだと思います。
塩原さん:通常の注文とは違ったアクションが求められる受注に関しては全部自社でやっています。他のお茶と同梱したりとか、お茶以外の商品と同梱したりとか。メッセージカードのオリジナル対応などもありますね。また、店舗受け取りの方もいるので、そういった場合も自社で対応します。
柳田さん:店舗受け取りまでやっているんですか?
塩原さん:自社サイトで購入いただくお客様は店舗に来られたことがある方が多いため、店舗受け取りをご利用されることもあるんです。なので多くはないですが、店舗で商品を渡すこともあります。注文の際に、店舗受け取りの希望を備考欄に書くお客様がいらっしゃいます。
こういった注文の振り分けを全部対応できたのがスクロール360さんなんです。本当は去年の4~6月のスポットのはずが、あまりにも対応品質が素晴らしく、最初にお願いした一部の商品については今もお取引を継続しています。
正直な話、おそらく料金は少し高いんですが、サービス品質を落とさない前提で考えると、人情味もあり対応品質のレベルは高いと感じます。今年の5月はコロナの影響があって、私が予想していたよりも注文数が上振れしました。そんなときに、できる限りの対応していただき、無事に出荷できたのです。
柳田さん:広告の話から入りましたが、商品の在庫を切らさず、出荷業務をしっかりとこなしていくことの大切さがわかりました。在庫を切らさず発送できればもっと広告費を突っ込めるのにというのは、たしかに当たり前ですよね。そういう意味で在庫を切らしてしまった今年は最悪なパターンが起こってしまったんですね。
塩原さん:今年はいろいろありまして、Amazonを一時的に閉店しました。Amazonはマケプレプライムで対応をしているため、14時までの注文は全部即日出荷しています。しかし、規定の時間内に出荷をしきれなくなってしまい、かといってマケプレプライムの設定を全て外す作業をする時間も取れず、5月4日から5~6日間ほど絶対にやりたくなかった閉店を初めてしてしまったのです。
楽天市場の2号店や他のECモールなど、一部の売れ筋の商品が売り切れ、最終的には楽天市場の本店も売り切れてしまいました。それでも花ジャンルの店舗には売上が全然敵わないため、素晴らしい店舗が多いなと思います。
柳田さん:在庫を切らしてしまったら広告を回した分だけ損してしまいますよね。広告を活用するにあたって、在庫や物流の管理の重要性が伺えます。
電話対応の外部委託で電話注文やクレームに加え、アップセルを可能に
塩原さん:物流だけでなく、今年の5月1日から電話対応も外注しました。当店はご年配の方や実店舗に来た方からの電話が多く、ECをやっている中では自慢できるくらい電話注文が多いんです。掛かる費用はフリーダイヤルの通話料くらいなのですが、対応に掛かる時間が莫大でした。そういった背景から、5月1日からCTCファーストコンタクトさんにお願いしています。最初はミスもありましたが、徐々に慣れて安定していきました。
柳田さん:コールセンターの外部委託は、最初からトラブルなく上手くやるのは難しいですよね。
塩原さん:そうですね。でも、今はしっかりと良い対応をしてくれていて、非常にありがたいと思っています。
柳田さん: コールセンターを外部に出したのもタイミングとしてはギリギリでしたね。それまでは全部自社で対応していたんですか?
塩原さん:全て自社で対応していました。私も電話対応をしていましたが、出られていない電話もたくさんあったんです。
またクレームの電話は全部私に回すようにとスタッフに伝えていますが、私がいないときは対応しないといけません。そうするとスタッフのモチベーションは下がってしまいます。なので、そういったところをひっくるめてコールセンターにお願いしたところもあります。
柳田さん:生産性を上げる意味では良いですね。
塩原さん:お客様との電話の時間も大事ですが、電話のプロであるコールセンターに業務を依頼して、私はどの広告を買うかを考えたり、商品開発をしたり、そういったことに時間を掛けたほうが良いかなと思ったのです。
弊社のようなお茶屋さんが出稿すべき広告と花屋さんやワイシャツ屋さんで出稿すべき広告は全然違うと思います。もっと言うと同じお茶屋でも商品の利益率の違いや巣鴨というブランドがあるかないかで、どの広告を出稿すべきなのか違ってくるでしょう。お茶屋の友達からどの広告を出稿しているの?とよく聞かれます。質問には答えますが、とどのつまりあなたのところで同じ広告枠に出しても売れるかはわからないという話なんです。
そういう時間があったらもっと商品開発のことを頑張るべきだと思います。広告の分析はそこまで細かくしていません。毎日見ていると大変なので、たまにするくらいで、そんなに時間を使わないようにしています。それよりも新しい商品を1つでも多く仕入れてアップすることに重きを置いて、日々運営しています。
柳田さん:前半では「広告で伸びる売上を支えるバックヤードの体制構築」についてのお話しがメインになりました。後半ではいよいよ広告について、商品開発を踏まえながら伺っていきたいと思います。
おわりに:多額の広告を利用できる強固なバックヤードの体制構築
今回、母の日だけで1,000万円以上の広告費を使っているというキャッチーなお話から入りましたが、その広告費を投下するには数千万円分の出荷に対応できるだけの在庫管理・受発注対応・問い合わせなど裏側の業務を盤石にすることが重要だとわかったかのではないでしょうか。
特にシーズナルイベントはターゲット日が近くなるとアクセス・注文数ともに非常に大きな数字へと膨れ上がります。ギフトを専門としているお店であれば、大まかな動きを予測して対応することも可能かと思いますが、これからギフト対応を始めようと思っている事業者様においては、販売数を制限するなどスモールスタートでお試ししても良いかもしれませんね。
EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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