「NRF2023振り返りセミナー by Google Cloud」小売やECに役立つ最新トレンドを公開【セミナーレポート】
イベントの概要

2023年3月9日、Google Cloud による「NRF2023振り返りセミナー」がオンライン開催されました。NRFは、National Retail Federation(全米小売協会)が主催する、年に一度の世界規模の展示会です。小売業に関する最新の技術や事例が集まる場となっています。Googleは、NRF2023において、セッション会場での4つの講演と、EXPOブースで10種類以上のデモ展示を行いました。

「NRF2023振り返りセミナー」では、NRF2023におけるGoogleのイベント出展内容やパートナーとの連携ソリューションが紹介されました。本記事では、このセミナーの要点をまとめて紹介します。

【登壇者】
朝澤 隼さん
Google Cloud 流通事業本部
シニアアカウントエグゼクティブ

森永 大志さん
Google Cloud 西日本事業部
カスタマーエンジニア

NRF2023でのGoogle発表内容、展示内容の紹介

NRF2023でのGoogle発表内容、展示内容の紹介

NRF2023の全体感

NRF2023の全体感

朝澤さん:NRF2023のテーマは「BREAK THROUGH(ブレイクスルー)」でした。この3年間ほどは、COVID-19のパンデミックにより、マクロ経済は非常に厳しく、小売業界は試される環境にありました。オンラインでのビジネスの拡大など、新たなカスタマー体験、ロイヤリティ向上が重要だということが伝えられています。

また、小売業界は全米で最も多くの雇用者がいる業界であるため、新たな教育、新技術、文化が提供される可能性を持っていると前向きなメッセージもありました。このような新たな挑戦を通じ、ブレイクスルーを実行していこうという想いがNRF2023に出ていたように感じます。

現地の展示会場では、未来型・体験型の店舗の展示が多かったです。また、リテールメディアをはじめとした新しい広告の形や、One to Oneマーケティングにオムニチャネルを組み合わせたユニファイドコマースと呼ばれるソリューション、AIの活用、サステナビリティをはじめとした循環型のビジネスを実現するようなソリューションの展示なども多数ありました。

Google Cloudパートナーについて

Google Cloudパートナーについて

朝澤さん:NRF2023では、Google Cloudのパートナー企業が25社出展されていました。出展企業は、次のような傾向に分類できます。

◎デジタル&オムニチャネル
CDP(Customer Data Platform)のようなソリューションは当たり前になっており、単独で扱う企業は減少傾向にあります。一方で、OMOを実現するソリューションは非常に多くなっています。

◎スマートストア
次世代型店舗を実現する環境が非常に増えています。

◎持続可能性(サステナビリティ)
「すべてのビジネスプロセスを織りなす糸になる」というコメントもあり、こういったソリューションも非常に多くなっていました。

◎サプライチェーンの正常化
まさに今、大きなテーマとなっています。コロナ化で分断されたサプライチェーンを回復して、強固にしていくという点で、いくつかの展示が出ていました。

Googleブースのアナウンスと展示内容

朝澤さん:Google ブースでは、Google Cloudも含む各ソリューションが集まって展示を行いました。展示内容は、「Cloud & Map」「Hardware」「Partner Solution on Google Cloud」の大きく3つに分かれています。そのなかでも、特に評価の高かったものについて紹介していきます。

Shelf Checking AI

Shelf Checking AI

朝澤さん:Shelf Checking AI では、Googleの画像認識のAI技術を使い、どの商品がどこに並んでいるのか店内のカメラから確認できます。そして、商品がピックアップされ購入されると、商品数が少なくなったことを認識して商品補充の指示が出ます。

店内には棚を正面から映すカメラの他、店内を動き、棚を横から映すことができるカメラ付きのロボットが配置されており、画像精度の高いソリューションを実現しています。このソリューションを使うことで、商品のピックアップや補充を効率化できるでしょう。

通常、AIの画像認識で判断するには、最初に各商品のトレーニングが必要になってきます。Google Cloudでは、商品の広告画像を活用してトレーニングをすることが可能です。

Oriient Indoor Navigation

朝澤さん:Oriient Indoor Navigationは、店内でのユーザーの移動を確認できるアプリです。あらかじめその場所のデータを入れておくことで、ショッピングセンターでどの場所にどんな店があるか、あるいはスーパーでどの棚にどんな商品があるか、ユーザーの案内に活用できます。

似たようなソリューションはこれまでもありましたが、Wi-FiやGPS、Bluetoothなどを使うため、何らかのハードウェアの投資が必要になってきます。また、距離が遠いと電波が届きづらいという問題がありました。

Oriient Indoor Navigationは、スマホのコンパス機能を使い、磁気状況による判断を行います。そのため、誤差が非常に小さく、混雑している場所でも正確性が高いソリューションとなっているのです。

また、ただの移動支援ではなく、どういったユーザーがどこに滞留しやすいのか、人の流れを可視化できます。アプリに組み込めるSDK(ソフトウェア開発キット)を提供しているので、CDPの環境下であれば、あるユーザーが普段から好んでいる商品の近くを通ったときにクーポンを発行するなど、購買意欲を高める取り組みも可能です。

Google連携パートナーソリューションのご紹介

Google連携パートナーソリューションのご紹介

Google Cloudの商品検索ソリューション

Google Cloudの商品検索ソリューション

森永さん:Google Cloudでは、店舗やECにおける商品を検索するために、次の3つのソリューションを用意しています。

  • Vision Product Search
  • Recommendation AI
  • Retail Search

今回は、Retail Searchについて深掘りしていきます。

Retail Search

Retail Search

森永さん:Retail SearchはECサイトの裏側で検索をする仕組みです。従来の検索では、文字列を使い、それに当てはまるものを検索する仕組みでした。しかし、この仕組みでは、表記にブレがあると検索結果に表示されないことが起こりがちでした。特に日本語は、平仮名・片仮名・漢字・アルファベットを使うので完全一致が難しく、残念な検索結果が生まれてしまうことがあったのです。

一方、Googleの検索は、文字列ではなくベクトル検索という、同じような方向性の言葉で検索する仕組みです。Retail Searchでは、そのGoogle検索の仕組みと、小売会社が持っている商品リストを掛け合わせることで、ECサイトの検索バーに入れた言葉と似たベクトルの自社製品を簡単におすすめすることができます。高度なクエリを理解できるので、商品名だけでなく、子供用の商品、女性向けの商品などでも検索可能です。

また、Webサイト内でのユーザー行動のデータを収集できるGoogle Analyticsのデータを併せて活用することで、パーソナライゼーションも可能です。これにより、ユーザー一人ひとりの行動・購入履歴からより適切な提案ができるようになり、CV率の向上が見込めます。

Recommendations AIのデータがそのままRetail Searchに使える

森永さん:次に、Recommendation AIについてです。Recommendation AIは、「この商品を買っている人にはこれもおすすめ」といったレコメンド表示をするソリューションです。Retail SearchとRecommendation AIは同じデータを使っています。そのため、検索用の呼び出しとレコメンド用の呼び出しを分けるだけで、ECサイトに検索とレコメンドのどちらの機能も拡張できるのです。

Google Cloudピックアップ パートナーセッション

Manhattan Associate社とのセッション

森永さん:Manhattan Associate様は、WMSやOMSなどの物流周りのシステムをはじめ、フルフィルメントに関わるさまざまな製品・サービスを提供しています。

Manhattan Associate様とのセッションでは、Googleとリサーチ会社のIncisivによる小売業に関するさまざまな調査結果を紹介しました。

そのなかで注目したのが、ユニファイドコマースという領域です。オムニチャネルにも近い領域ですが、それよりもさらにパーソナライズして、すべてのチャネルで顧客に統合された体験を提供することを目指します。

調査では、世の中の小売業者がどういったことを行っているのか知るために、実際に店舗を訪れて商品を購入する、さまざまな商品を検索してECサイトで購入する、配送やアフターサポートなどの顧客体験もされました。

そのなかで、商品をどうやってお客様に見つけてもらうかという、「Search and Discovery」のアプローチが非常に重要で、売上への影響が3,000億円にものぼるということがわかりました。この領域は、まさにGoogle Cloudが得意とするところで、注力している領域でもあります。

また、商品検索やフルフィルメントにおいて、パーソナライズがよりキーになってくることが明らかになりました。たとえば、配送時間について、従来はなるべく早いほうが良いという考えが主流でしたが、実は時間がかかってもよりエコな配送をしてほしいという顧客もいます。

Akeneo社とのセッション

Akeneo社とのセッション

森永さん:Akeneo様は、商品情報を一元管理するPIMの仕組みを提供しています。商品情報の管理では、商品の価格やスペックはマスターを管理しても、マーケティングに必要な商品の写真や説明書、その他さまざまな関連情報は一元管理できていないという状況が起こりがちです。その結果、サイトごとに商品の写真や情報が違うというケースもあります。

しかし、セッションで発表された調査結果では、66%の顧客が、製品情報が間違っている、サイトによって情報が違うなどが理由で購買をやめたことがあることが判明したのです。このことから、商品に関する情報に一貫性を持たせることがいかに重要かわかります。特に、複数のチャネルで商品を販売することが増えているなかで、その重要度は増しているでしょう。

セミナーに参加してみて

小売業界において、世界的に見て技術がどう進化していくのか感じることのできるセミナーでした。

コロナ禍においてECの利用が増えたところから、またオフラインにユーザーが戻ってくるようになり、オンラインでのデータをオフラインでどう活かすかがより重要になっているタイミングでもあります。本セミナーは、そんなタイミングにおいてとても興味深い内容となっています。

Googleの各種ツールはECにおいても多く活用されています。今すぐ本セミナーの内容が自社のEC運営に関わるわけでなくとも、将来的にGoogleがどういった方向に注力しているのかを把握しておくことも重要といえるでしょう。

▼セミナーのアーカイブはこちら
https://cloudonair.withgoogle.com/events/nrf2023-recap-seminar-jp-online

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