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ECサイトで売上をあげるための活動のはずが
よくECサイト運営の一連の流れを、例えば下記のような「バリューチェーン」で表現することがあります。

一連の構成要素の中で、さらに細かな事業活動が存在します。単純にECサイト運営といっても、関連する事業活動は多く、売上をあげるための施策は多岐にわたります。
例えば、「複数の顧客から毎回同じ内容の問い合わせがあり、対応に時間がかかっている」という問題がある場合、その問題は上記の「カスタマーサービス」の事業活動に含まれます。その問題に対応することで、カスタマーサービスの事業活動が改善され、事業の運営に良い影響が生まれます。
ECサイト運営で重要な作業が、施策、打ち手を考えることです。ECサイトの運営者は日々、有効な施策を考え実施をしています。施策を考えるための一つの方法として、ECサイトの問題点を洗い出すことが挙げられます。上記のバリューチェーンのように事業活動を分類し、それぞれの活動においての問題点を洗い出すことが、施策を考える上で有効です。
サイト上への商品掲載という活動において、多くの商品を扱っているECサイトの場合、いくつかのテーマで商品を選択し特集ページとして打ち出す施策があります。
例えば雑貨を取り扱うECサイトで、クリスマスシーズンの場合には「クリスマスを演出する雑貨」という切り口で商品を集約し、クリスマスを意識した商品説明や写真を掲載してコンテンツを制作したりします。
こうした活動の中で、さらにその施策が有効になりうるかどうかというのは、もう一つの視点が必要になります。一部フィクションを交えておりますが、顧客企業のECサイト運営での施策事例です。
同じメーカーの商品が並ぶ特集コンテンツ
とある商材についての特集企画の制作の事例です。特集で掲載する商材を確認していたところ、すべてが同一メーカーの商材ばかりが選定されていることに気づき、担当者に商品の選定基準を確認してみました。








その担当者は、販売するごとにキャッシュバックが発生するという理由から企画制作をしていたようでした。
配送に関するクレームから
次に、とある法人のお客様からの注文で、指定日での配送を承ったときの事例です。
クライアントの担当者から、お客様から配送でクレームが入ってしまい、どう対応したら良いかと相談がありました。



さらに詳しく話を伺うと、配送日変更を許可したのは、注文をした方とは別の方だったとのことで、後日注文をした方からクレームの連絡があったとのことでした。
「この商品を広めることが私の使命」
最後に、ある企業のECサイトで展開する商品企画でご相談のあった事例です。
その商品はとにかくあらゆる用途に使えるという、とにかく便利な商品ということで、商品名も「ミラクルマルチ」というもので、この商品名も含めさすがにちょっとまずいなと思い、打ち合わせ。








この担当の方は非常に真面目な方で、後に商品名や商品訴求を修正して商品を展開していただきました。
問題の本質は何か?
特集コンテンツや配送に関するクレームは、それぞれ全く異なる活動になります。EC事業のその他の業務においても、それぞれ多くの問題が発生しています。しかし、発生する多くの問題点で共通することがあります。
それは、
自社の都合で顧客にアプローチをしている
という点です。
特集コンテンツの問題点は、顧客が何を必要としているかという視点ではなく、販売メリットがあるからという視点だけで作成してしまったというところ。配送のクレームにおいては、指定日配送の注文を、在庫が足りないという自社の都合のためにお客様に指定日の変更を依頼してしまったというところ。そして最後のケースのような「良いものだと思うから売れる」「世のためになるから売れる」というもの。
これらの問題で共通しているのは、事業者目線、自社都合で行ってしまっているということです。
多くのECサイト運営で行われる分析や施策の疑問点
強み、差別化、ペルソナ、ブランディング・・・
ECサイトに限らずマーケティングに関わる作業として、自社の強みの明確化や競合他社との差別化、ペルソナの設定やブランディングなどがあります。ただ、それらを先程の事例のように自社都合で考えている場合、うまく機能しないものになってしまいます。
「このペンをおれに売ってみろ」
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」という映画があります。劇中、主人公が持っているペンを相手に見せ「このペンをおれに売ってみろ」というシーンが2回あります。1回目はドラッグの売人、2回目は講演会の参加者たちです。
一般の講演会参加者は「このペンがいかに良いペンなのか」の説明を試みます。片やドラッグの売人は、主人公の手元にある紙に名前を書けと命令します。主人公はペンがないことを伝えると、ドラッグの売人は「需要と供給だ」と言い、ペンを渡します。
ドラッグの売人はきちんと(?)相手に「ペンを買う理由」を作ってからペンを売ろうとしました。それに対して講演会の参加者たちは、自分の目線で「ペンの良いところ」を説明することで、ペンを売ろうとしていました。
このシーンの意味するところは、
ユーザーは理由があって初めてモノやサービスを購入する
ということです。
これは、言ってしまえば非常に当たり前のことですが、事業をしているとそのことを何故か忘れてしまいがちになります。いくらその商品やサービスがすばらしくても、ユーザー側に購入する理由がなければ、ユーザーは購入しません。
ましてや自社の都合による理由で訴求をしても、ユーザー自身には
自分には無関係の情報
として、認知の外に置かれてしまいます。
ECサイトで戦略を立てる前にやるべきこととは、この「ユーザーが購入する理由」を知ることです。
では、ユーザーが購入する理由というものは、どうやって知ることができるでしょうか。次回はその方法の一部をご紹介します。
株式会社チョッピーデイズ:https://choppydays.com
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