
企業のTikTok活用のためのプラットフォーム「TikTok for Business Japan」が、2022年4月27日・28日の2日間、「#ForYou Summit2022」を開催しました。さまざまなセッションが行われた中で、本記事では「TikTokフルファネル施策で『TikTok売れ』を見事に巻き起こした「Fit me」のTikTok活用法」というセッションを紹介します。
「Fit me」は、コスメブランド「メイベリン ニューヨーク」のリキッドファンデーションです。メイベリン ニューヨークを扱う日本ロレアル株式会社の高瀬 絵理さん、TikTok for Business Japanの南部 歩さんによるセッションから、企業のTikTok活用に役立つ要点を紹介します。
【登壇者】
高瀬 絵理さん
日本ロレアル株式会社
コンシューマー プロダクツ事業本部
デジタルトランスフォーメーション統括
南部 歩さん
TikTok for Business Japan
Client Partnerships Industry Manager
この記事の目次
1.TikTok|ビューティー業界の動向

南部さん:日経トレンディ発表「2021年ヒット商品ベスト30」では、『TikTok売れ』が第1位に選ばれました。ビューティー業界において『TikTok売れ』の影響は大きく、TikTok起因で売り切れになる商品も多数あります。
ニューノーマル時代の消費者の変化として、TikTokが情報収集の場として活用されているのです。美容関連主要ハッシュタグの推移を見ると、美容関連動画の急速な伸長がわかります。店頭でのタッチアップの機会の減少により、自宅で自分にあったスキンケアを見つける必要が生まれたのではないでしょうか。結果として、2020年11月~2021年12月の期間中、計測開始月と比較した視聴数は約3.2倍となっています。
TikTokの出稿額も増えています。2020年と2021年のビューティー業界のTikTok出稿額を比較すると約6倍になっており、多くののナショナルクライアントが出稿しています。
2.メイベリン「Fit me」成功事例の全貌

今回のチャレンジ:セルフメイクブランドとしてリキッドファンデでNo.1を目指す
高瀬さん:メイベリン ニューヨークのリキッドファンデーション「Fit me」をNo.1のリキッドファンデにすることは大きなチャレンジであり、新しい取り組みが必須でした。ニューノーマルな時代に対応する発想の転換が必要で、かつ、費用対効果も求められます。そこで、Z世代とデジタルを軸に、今回の施策を考えました。
従来はテレビCMから店頭購入につなげる施策が定石でしたが、ニューノーマルにおいて、顧客がデジタルに接触する機会が増え、デジタル100%でチャレンジしたいと考えました。また、Z世代をターゲットにしたいと考えており、まさにその世代にとって主流のプラットフォームがTikTokだったのです。
TikTokに求めている点:動画での理解促進×コミュニティを使った拡散性
高瀬さん:TikTokの魅力は、動画を見たユーザー同士での会話が生まれる点です。「Fit me」の販売にあたっては、認知だけでなく信頼醸成が必要でした。これは、一般的な広告だけでは難しい点です。キャンペーンを考えるにあたり、ちょうどTikTokが提供するプロモーションとしてクリエイター活用した施策が開始されました。そこで、認知を広げるための広告施策に加えて、信頼醸成を目的としたクリエイター活用施策を相談させていただきました。
キャンペーンの狙い

南部さん:キャンペーンの実施にあたっては、TikTokのインパクトを活用し、売上につなげるために「フルファネルでキャンペーン」を実施することを提案いたしました。キャンペーンでは、以下のように、認知・理解促進・購買意向の各ファネルに合わせたクリエイティブ設計を行い、ブランドリフト調査*を行いました。
特に今回は認知・購買意向のファネルにおいて、TopViewに表示する広告を活用しています。短期間で2回露出いただくことで、認知とインパクトを出せたかと思います。
*ブランドリフト調査:TikTokで実施した広告やキャンペーンを計測し、最適化するための測定ソリューション。マーケティングファネルに合わせて、認知、理解、好意度、意向といった重要な広告効果を適切に測定し、分析します。
各フェーズのクリエイティブとその結果は?
1.【認知】KV素材で商品認知最大化

南部さん:TikTokを起動後最初に目に入る「TopView」で広告施策を実施しました。
高瀬さん:人気K-POPガールズグループ ITZY(イッチー)を起用することで、楽曲とダンスがフックになり認知に寄与しました。ブランドリフト調査では、+18.7%の広告認知が確認できています。

高瀬さん:TikTokでは、他のメディアに先駆けて広告を公開しました。広告開始数分後から、いいねやコメントがつき、ITZYのことだけでなく商品についてのコメントも多く見られました。「使ってみて、崩れにくかった」などブランドが伝えたいことをユーザーが代弁しており、そこからユーザー同士の交流にもつながっていました。広告に多くのいいねやコメントがつくのは、TikTokの特徴だと思います。
2.【理解促進】クリエイター素材で共感/理解促進

南部さん:広告出稿による効果をシミュレーションした上で予約購買ができる「リーチ&フリークエンシー」を活用しました。TikTokで人気のカップルクリエイターのセロウンブログと、美容男子のケヴィン(Kevin)さんをリレー方式で起用しました。
高瀬さん:セロウンブログのお二人には、カップルの会話の中で商品を紹介してもらい、ケヴィンさんにはその動画を受けつつ、商品の塗り方や良さを伝えてもらうという広告内容です。人気クリエイターの発信による信頼醸成に加えて、双方のファン同士が動画を行き来することで、さらなる信頼醸成が実現しました。ブランドリフト調査では、購入意向が+5.9%となっています。

高瀬さん:プロモーションにおいて中長期的に重要な視点が、「ブランドとして言いたいこと」を認知してもらうとともに、「第三者に言ってほしいこと」により理解促進を行うことです。前者がブランド素材、後者がクリエイター配信で、異なる2種類の素材を組み合わせてプロモーションを行うことで、ユーザーの理解をより深めることができます。
3.【購買意向】KV素材で店舗想起/ECサイトへ誘導

南部さん:TopViewでの同一クリエイティブの広告施策を短期間に2回実施するという、新しい取り組みを行いました。ブランドリフト調査では、好意が+6.2%となっています。初回実施よりも数字が上がっており、施策を重ねることの重要性が表れています。
高瀬さん:1カ月弱で認知 → 理解促進 → 購買意向というフルファネルを攻略でき、売上は1.3倍と満足のいく結果となりました。
3.戦略的に『TikTok売れ』を起こすための方程式とは?
高瀬さん:戦略的に『TikTok売れ』を起こすには、フルファネルをどうカバーできるかが重要です。
1.動画×コミュニティで認知を獲得
認知を獲得するためには、クリエイティブが非常に重要です。
2.クリエイターによる信頼醸成の後押し
TikTokクリエイターと一緒に広告を回していきます。
3.ファネル別アプローチと検証
ファネルごとに、ブランドリフト調査のどの指標が上がっているかを検証し、次のアクションに反映します。
今回のキャンペーンでは、これらを踏まえて、設計から実行まで戦略を持って実施できたことが大きかったと考えています。
セミナーに参加してみて
TikTokは、ユーザーにとって重要な情報収集の場となりつつあることがわかります。特に美容業界のEC事業者は、TikTokにおける消費者の動向を知ることが必須のように思われました。他業界であっても、TikTokに存在するユーザーニーズを確認すべきでしょう。
TikTokは、企業向けにさまざまなプロモーションを提供しています。今回のセミナーで紹介された事例のように、ブランド素材とTikTokクリエイターなどの配信を組み合わせることで、広告であってもユーザーに好意的に受け取ってもらえる点、信頼醸成や購入意向につながる点などが特徴的です。また、認知 → 理解促進 → 購入意向というフルファネルに対して施策を実施できるのも、TikTokをビジネスに活用するメリットといえます。
企業として、ソーシャルプラットフォーム活用するというと、これまでFacebook、Twitter、Instagramが中心でしたが、今後はTikTokも選択肢に入れた上で、自社に合ったプロモーション方法を検討することをおすすめします。
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