「作り込んだ広告」はもう響かないのか。EC動画は“リアルな声”で成果を出す時代へ

コマースピック読者の皆様、こんにちは。株式会社リスポの黍田です。

今回は、動画広告で成果を出すうえでいま最も注目されているクリエイティブのかたち、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用した動画についてお話しさせていただきます。

動画広告を始めてはみたものの、1本あたりの制作費が重く、出演者の手配にも追われ、いざ配信しても数本では当たり外れが読めない。動画広告については、そうしたお悩みをよく耳にします。

本記事では、なぜいま“作り込んだ広告”よりも生活者目線のUGC動画が選ばれているのか、その成果を定性・定量の両面から見たうえで、活用にあたって知っておきたい実務上の注意点までをお伝えできればと思います。

この記事の執筆者

黍田 龍平
株式会社リスポ

2001年生まれ、鹿児島県出身。高校時代に教育系の学生団体を立ち上げ、大学入学前に海外へ。帰国後はスタートアップでデザイナー・BizDev職を担い、グラフィックデザインからWeb・UI/UXまで幅広く手がけながら、クライアント開拓営業やマーケティングにも従事。その後、2つの事業を立ち上げ、大学在学中の2021年5月に株式会社リスポを創業。 これまでのデザイン経験を基に、動画生成AIとLLMを統合した独自のクリエイティブエンジンと制作ワークフローを開発し、AIクリエイティブプラットフォーム「UGC Maker」をローンチ。

AIクリエイティブプラットフォーム「UGC Maker」
https://service.ugcmaker.jp

縦型フィードでは、“広告らしい広告”ほど避けられる

スマートフォンでSNSを眺めているとき、人はいかにも広告然としたクリエイティブを無意識に飛ばしてしまうものです。配信する側でも、CPA(顧客獲得単価)の上昇やCVR(コンバージョン率)の伸び悩みといった、いわゆる「広告疲れ」に直面するケースが増えています。そこで改めて注目されているのが、広告らしさを抑え、生活者のリアルな声で語りかけるUGCです。

この変化は、データにもはっきり表れています。アライドアーキテクツが2022年に実施した生活者調査では、商品やサービスの購入時に「UGCを信頼する」と答えた人が64.6%にのぼりました。しかも一過性の流行ではありません。購買時にUGCを信頼すると答えた30代の割合は、2017年の33%、2019年の45%(ニールセンデジタル)から、2022年には69.9%(アライドアーキテクツ)へと、数年で約2倍に高まっています。

【図1】UGCへの信頼度の推移(30代生活者) 
出典:ニールセンデジタル(2017・2019年)/アライドアーキテクツ「生活者のUGCに対する意識調査2022」をもとに作成

数字の裏側にあるのは、生活者の素朴な感覚です。企業が「買ってください」と語るより、実際に使った誰かが「これはよかった」と語るほうが信じられる――。丁寧に作り込むほど“広告”として身構えられてしまう一方で、生活者目線の動画はフィードの流れに自然に溶け込み、最後まで見てもらいやすい。これが、UGC動画が成果を出す根っこにある理由だと考えています。

UGC動画の成果は、定性・定量の両面で表れている

信頼のされ方は、商品ジャンルによっても変わります。同じ調査では、購入時にUGCを信頼すると答えた人の割合が、旅行・保険・教育などの無形商材で80.2%、化粧品・スキンケアで79.4%、ヘアケアで75.3%と、いずれも全体平均を大きく上回りました。実物を手に取って確かめにくい商材ほど、先に使った人の声が判断のよりどころになっていることがうかがえます。

【図2】購入時にUGCを「信頼する」人の割合(商品カテゴリ別) 
出典:アライドアーキテクツ「生活者のUGCに対する意識調査2022」(10〜60代男女1,100名)

購買行動の現場でも、UGCはすでに欠かせない存在になっています。EC・通販で商品を検討する人のおよそ9割が、途中でUGCをチェックしているという調査結果もあります。さらに約半数は、企業が発信する情報よりも、実際に購入した人が発信する情報を重視すると答えています。商品ページにたどり着いた“最後のひと押し”の場面でも、リアルな声が背中を押しているのです。

【図3】EC・通販の購買行動におけるUGCの影響
出典:アライドアーキテクツ/Letro「購買行動におけるUGC影響度調査2022」をもとに作成

定性的な成功事例も増えています。アウトドアブランドのスノーピークは、自社ECに利用者の写真やレビューを掲載するだけでなく、「会員ランクの高い○○さんのレビュー」のように“誰が言っているのか”が わかる見せ方を工夫しました。その結果、UGCに接触したユーザーのCVR は、接触しなかったユーザーを大きく上回ったと報告されています。「どこの誰かわからない感想」ではなく「顔の見える一人の声」にすることで、信頼が一段と高まった好例だと感じています。

日本酒ブランドのWAKAZEも、顧客の投稿を自社サイトに掲載する取り組みによって、わずか1か月でCVRが1.1倍に改善したと報告されています。大がかりな制作をせずとも、リアルな声を見せるだけで数字が動く。ここにUGCの強さがあります。

ただ“拾って使えばいい”わけではない。UGC活用の落とし穴

ここまで読むと、では早速SNSの投稿を集めて広告に、と思われるかもしれません。しかし、UGCは見つけたものを自由に使ってよいわけではなく、ここには見落としやすい落とし穴がいくつもあります。

まず、投稿の著作権は原則として、投稿したユーザー本人にあります。良いレビューや動画を見つけても、無断で広告に転用すれば著作権の侵害になりかねません。二次利用する際は、投稿者一人ひとりに利用範囲を伝えて許諾を得ること、背景に写り込んだ第三者や他社のロゴにも気を配ることが欠かせません。

さらに、化粧品や健康食品などでは、誇大な表現を禁じる薬機法の観点も無視できません。そして2023年10月からは、広告であることを隠した、いわゆるステルスマーケティングが景品表示法の規制対象となりました。サンプル提供や割引クーポンなど、企業が何らかの対価を伴って投稿を依頼した場合は、広告であることがひと目で わかるように明示する必要があります。

せっかくのUGCも、こうした権利やコンプライアンスの確認を怠れば、かえってブランドの信頼を損ないかねません。“効くから使う”の前に、“正しく使う”仕組みを整えておくことが大切だと考えています。

成果を分けるのは、UGCを“1本拾う”より“回し続ける”こと

もう一つ、動画広告で見落とされがちなのが、良いクリエイティブを1本見つけて終わりではない、という点です。広告は同じものを使い続けると効果が落ちていきます。本来は複数のパターンを用意してABテストを行い、勝ち筋を見つけて磨き続ける必要があります。

ところが、UGCを一件ずつ手作業で探し、許諾を取り、動画に編集し、配信して検証する。この一連の流れを毎回回そうとすると、相応の手間と人手がかかります。リアルな声が成果につながると わかっていても、量産と検証の運用が重く、結局は続かない。ここに、もう一つのジレンマが生まれます。

裏を返せば、素材の確保から制作、配信後の検証、そして勝ち筋の量産までを一つの流れとして回せる体制こそが、UGC動画で成果を出し続けられるかどうかの分かれ目になると考えています。

最後に

今回は、作り込んだ広告から生活者目線のUGC動画へというクリエイティブの潮流と、 定性・定量の両面から見たその成果、そして活用にあたっての実務上の留意点についてお伝えしました。

UGC動画は成果が見込める一方で、素材の確保や権利の確認、量産と検証の運用といった負担で、なかなか踏み切れない事業者様も多いのが実情だと感じています。

弊社では、レビューやInstagram、TikTokなどのUGCを活用し、素材の確保から動画クリエイティブの制作・運用までを支援するUGC Makerを提供しています。

UGC動画を活用したいけれど、手間や進め方が不安という方のお役に立てるかもしれません。導入のご相談からサポートまで対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

AIクリエイティブプラットフォーム「UGC Maker」
https://service.ugcmaker.jp

参考・出典

※本記事で紹介した数値・事例は、各社の公表資料および上記出典に基づいています。図1〜図3は出典データをもとに作成(図1は複数調査を統合)。

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