ローランド・ベルガー、アジア消費者トレンド調査2026を発表 日本は「次世代成熟市場モデル」として特異な位置づけに

2026年4月30日、東京――欧州最大級の経営コンサルティングファームである株式会社ローランド・ベルガー(グローバル本社:ドイツ・ミュンヘン、日本法人代表取締役:大橋譲)が、最新の調査レポート「アジア消費者トレンド:複雑化する市場環境における成長からモメンタムへの移行(Unraveling Asia's complex consumer landscape)」を公表しました。

アジア地域は今後10年間で民間消費が約40%増加し、金額ベースで約7兆米ドルの拡大が見込まれており、世界最大の成長エンジンとしての地位を維持する見通しとなっています。しかしながら、地政学的リスクの高まり、インフレ後の生活コスト意識の変化、所得見通しの不透明感が複合的に作用し、消費者の購買行動はこれまでにないほど慎重かつ選別的な傾向を示しているとのことです。

今回の調査では、マスマーケットおよび飲食(F&B)領域を含む消費バスケットの変化、消費者の支出・貯蓄に関する動向、購入チャネルや購買意思決定のプロセス、さらには2026年において成長が期待されるラグジュアリー市場と、横ばいで推移すると予測される市場について詳細な分析が行われています。また、日本を含むアジア11か国に関する分析結果と将来の見通し、さらに市場参入を検討する企業に向けた提言も詳しく紹介されています。

今回の調査結果により、日本市場のアジアにおける独自の位置づけが改めて浮き彫りになりました。経済成長率は低水準にとどまっているものの、品質志向、信頼性、体験価値といった無形の資産の重要性については、アジア11か国の中で最も高く評価されています。ラグジュアリー市場においては、品質へのこだわりを持つ消費者の割合が依然として日本で最も高く、すべての調査対象国で半数以上が価格よりも品質を重視する姿勢を示しているとのことです。

調査結果の主要なハイライトは以下の通りです。

「次世代成熟市場モデル」としての日本

日本の消費者は極めて慎重な購買姿勢を示す一方で、「納得できる価値」に対しては支払いを惜しまない傾向があるとされています。コンビニエンスストアを起点とした高頻度・高品質な消費スタイル、ヘルスケアや機能性食品に対する需要の拡大、二次流通(リユース・認証済み商品)への受容性の高まりなどは、日本がすでに「次世代成熟市場モデル」のフェーズに入っていることを示唆しています。

日本企業への示唆(簡易版)

  • 日本は「成長市場」ではなく、「価値創出市場」である
  • アジア戦略のショーケースとしての日本の活用
  • サステナビリティは言葉で語るのではなく、製品で証明する
  • 高齢化×デジタル×体験の融合による新たな価値創造

ローランド・ベルガーのプリンシパルである速水亘氏は「日本国内で提供されるモノやサービスの品質そのものや、それを体験した外部からの評価は非常に高水準にあります。これらをどのように輸出するかの探索が重要なカギとなります」とコメントしています。

アジア市場の「必需品主導」への回帰と、選択的プレミアム化

アジア地域では、消費の中心が必需品へと回帰する動きが見られます。食料品などの日常必需品カテゴリーは全市場で堅調に推移している一方、嗜好品については縮小傾向にあるとのことです。

ただし、消費者は単純に節約志向を強めているわけではありません。低価格よりも信頼できる品質を重視し、価値があると判断した分野に対しては選択的に支出を行っています。その結果、健康や食品品質など必要性が高いと認識される領域においてのみ、限定的なプレミアム化が進行しているとされています。

ローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括プリンシパルである下村健一氏は、「アジアでは伝統的な小売業態が依然として存在する一方で、即時配送やQコマースなども進展しており、流通の複雑化は加速しています。日本の製品がアジアで需要される余地は引き続き大きいものの、その『売り方』が重要な要素となります」とコメントしています。

サステナビリティの「後退」ではなく「再定義」

本調査で特徴的な発見は、サステナビリティが単独の購買動機としては後退している点です。日本、韓国、東南アジアの中所得国では、サステナビリティの重視度が前年比で低下しました。ただし、これは消費者がESG(環境・社会・ガバナンス)を否定しているわけではないとのことです。

経済的不確実性が高まる環境下において、消費者はまず「確実な価値」「長期間使用できる品質」「信頼性の高いブランド」を優先しているに過ぎないとされています。サステナビリティは、訴求軸として前面に押し出すのではなく、「品質や耐久性を裏付ける構成要素の一つ」として統合されることが求められています。

ラグジュアリー:回復基調にあるが、成長は二極化

アジアのラグジュアリー市場は回復傾向にありますが、成長の様相は均一ではありません。インドや東南アジアの新興国市場では若年層を中心に需要が拡大している一方、日本、韓国、香港などの成熟市場では成長が鈍化しているとのことです。

特に日本市場では新規顧客の増加が見られず、市場は既存顧客の深耕フェーズに移行しました。今後は、ブランドの信頼性や品質、真正性といった本質的な価値が、これまで以上に成否を分ける要因となるとされています。

オムニチャネルは「前提条件」へ

デジタルとリアルを統合したオムニチャネル戦略は、もはや差別化の要因ではなくなっています。日本、シンガポール、韓国では「存在していて当然」という認識が定着し、競争の軸はスピード、摩擦のない体験、完成度の高さへと移行しています。一方、新興市場においては、オムニチャネル自体が依然としてブランドの「格」を示す重要なシグナルであり、プレミアム化の起点として機能しているとのことです。

経営への示唆:成長から「モメンタム」へ

アジア市場で継続的に成功を収めるために、企業に求められるのは単なる拡大ではなく「精緻なオーケストレーション」だとされています。中国で規模を確保し、インド・ASEAN地域で将来への投資を行い、日本や韓国ではプレミアム性とロイヤルティを収穫する。市場ごとの役割を明確に区分し、価格設定、ブランド戦略、チャネル戦略、投資配分を再設計できるかどうかが、次の10年間の成否を左右するとされています。

調査方法の詳細について

調査概要

  • 調査期間:2025年12月1日~2026年1月31日
  • 調査機関:ローランド・ベルガー
  • 調査対象:アジア11か国(中国、香港、インド、日本、韓国、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイ、シンガポール)の多様な収入層における18歳~55歳程度の男女
  • 有効回答数:3,500名
  • 調査方法:オンラインによる選択回答形式。結果は性別、年齢、地理的位置、回答者の支出行動ごとにデータを分類

ローランド・ベルガーについて

ローランド・ベルガーは、世界有数の経営コンサルティングファームとして、幅広い業界と手法に対応するサービスを提供しています。本社をドイツのミュンヘンに置き、1967年の設立以来、あらゆる業界における変革、イノベーション、そしてパフォーマンス向上における専門性と実行力に高い評価と信頼を得ています。すべてのクライアント支援においてサステナビリティを両立させる理念を持ち、持続的な企業および経済の発展への貢献に取り組んでいます。

ローランド・ベルガー日本法人は、クライアントの現場と共に「変革参謀」となり、企業変革・PMI/バリュークリエーションが進んでいく状態を醸成し、日本企業の経営と変革の実現を支援しています。

出典元:株式会社ローランド・ベルガー プレスリリース

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