リピートされるギフト商品の設計とは? お客様に感動と信頼を届けるこだわりと工夫
インタビューの概要

群馬県前橋市に実店舗を構える株式会社バケーション(以下、「バケーション」)は、世界中のおしゃれでかわいいベビー&キッズアイテムを扱っているセレクトショップです。出産祝いなど、ギフトとして注文を受けることが多く、商品・ラッピング・接客のどの点を取ってもお客様が自信を持ってプレゼントできるような取り組みをしています。バケーションならではの商品へのこだわりやギフトへの工夫、認知を拡大するための取り組みについて、同社の代表取締役である松原初美さんにお話を伺いました。

ギフト商品ならではのこだわりや工夫

―― フランスやスペインなどヨーロッパのブランドを中心に扱っている理由は何でしょうか?

松原さん:ヨーロッパは王室の歴史が長いこともあり、上質なブランドが多いことから、フランス・スペイン・イギリスを中心に商品を仕入れるようになりました。その後、イギリスの絵本ブランドとライセンス契約を結び、今ではブランドの世界観を保った当社にしかないオリジナル商品を販売しています。

出産祝いや誕生日プレゼントなど、ギフトとして購入する方も多いのですが、相手に喜んでもらえるのはもちろん、贈った人のセンスが良いと思われるような商品を選定するよう心掛けています。

―― ギフトならではの工夫があれば教えていただけないでしょうか。

松原さん:ギフトを受け取った方が驚きと感動の笑顔であふれるように、ラッピングにこだわっています。商品をお花に見立てて、ブーケ風にラッピングする「ベビーブーケ」は、弊社オリジナルのラッピングです。ギフトを受け取った方のテンションがあがる、写真を撮ってみんなに見せたくなるように、という想いでラッピングをしています。

ブーケ風のラッピング「ベビーブーケ」
ブーケ風のラッピング「ベビーブーケ」

松原さん: 他にも弊社は無料でフォトメールサービスを行っています。商品を手渡しではなく、贈る相手先に直送する方もいらっしゃいます。そういった方には、名入れ刺繍や熨斗がけ、ギフトの仕上がりを確認できるように、商品の発送時に画像をクラウドにアップして、メールで共有しています。

フォトメールサービスは5~6年ほど前から始めました。名入れ刺繍をオプションとして提供した際に、ギフト品だからこそ間違いがないように事前に共有したいと思ったんです。あまり多くはないですが、たまに名入れの文字を誤って入力するお客様もいらっしゃいますし、どんな状態で商品が贈り先に届くか確認できるのは、お客様も嬉しいかと思います。

フォトメールサービスを提供することで、スタッフとしては梱包にプレッシャーを感じますが、ミスを事前に防ぐこともできますし、お客様に喜んでいただけるので、今後も続けていこうと思っています。

ラッピングギャラリーはこちら
(※実際にラッピングした商品はこちらから見ることができます。)

独自性により高い利益率を保ち、ゆとりある運営を

松原さん:他にはない商品ラインナップと受け取った方に喜んでもらえるギフトラッピングを行っていることもあり、リピート率は比較的高いと思います。特にギフトとして購入する方は繰り返し購入いただくことが多く、5~6回とリピートしてくれます。実店舗も同様にリピート率が高く、出産祝いやお誕生日祝いで購入される方が8割となっています。嬉しいことに、ギフトとしてもらった方が今度は誰か別の方にギフトとして購入して下さったりすることもあります。

弊社は少人数で運営しており、先ほどもお伝えしたように自社で専用のラッピングを行っているため、低価格で数多くの商品を売る薄利多売の戦略は取れません。しかし、他店にはないラッピングや商品を取り扱っているため、気に入ってさえいただければリピートしてもらえる傾向があります。

厚利少売だからこそ、時間的に余裕が出てくるので、新しいことを考えられるのではないでしょうか。弊社では、みんなでティータイムを取りながら、次の販売戦略に向けてアイデア出しを行っています。1,000円の商品を100個販売するか、10,000円の商品を10個販売するかでしたら、後者の方がスタッフはゆとりを持ってしっかり対応できると思います。そういった意味でも売上高も大事ですが、しっかりと利益を出すことが重要です。

対面によるコミュニケーションで、パートナー企業との関係を良好に

―― イギリスの絵本「Belle&Boo(ベルとブゥ)」とライセンス契約を結び、日本国内にてオリジナル商品を作っていると伺いましたが、その背景について教えていただけないでしょうか。

対面によるコミュニケーションで、パートナー企業との関係を良好に

松原さん:おしゃれでかわいい商品だけど、みんなと被ってしまうのを気にするお客様は少なくないです。また人気の商品ではあるけれど、贈ったギフト品が他の方のプレゼントと被ってしまっては、相手も困ってしまうかもしれないと心配するお客様もいらっしゃいます。そのため、オリジナル商品を作るために、イギリスの絵本「Belle&Boo」とライセンス契約を結んだんです。

弊社は20年以上子供服を扱っていますが、流行り廃りが激しく、うまく波に乗れないと苦戦してしまいます。また、仕入れは取引さえできれば、どこのお店でも販売できます。そういった背景から、独自性を作りたかったというのもライセンス契約に至った理由の1つです。

ライセンス契約を結んだイギリスの会社とは何度かメールでやりとりした後、直接イギリスに伺いました。やっぱり、実際に顔を合わせることで距離感はすごく縮まりますね。向こうに行ったその日に、CEOの家に泊めていただけました。ビジネスでありつつもファミリー感覚で受け入れてくれたことはとても嬉しかったです。

日本ではあまり知られていない絵本でしたので、初年度からそこまで売れないのはわかっていました。苦労した点でいうと、商品やデザインは社内で企画しているのですが、作家さんが作った商品にNGを出すことも少なくなかったことです。しかし、イギリスで作家さんに会ってコミュニケーションを取り、相互に信頼関係を築けたことで、作った商品がNGになることはなくなりました。

お客様だけでなく、バイヤーの方にも知ってもらうことの重要性

――「Belle&Boo」は日本だとあまり知られていない絵本とのことですが、認知していただくために、どのような取り組みをされているのでしょうか?

松原さん:現在は広告費をほとんどかけておらず、SNSを中心に集客を行っております。Twitterもやっていますが弊社の場合、Instagramがユーザーと相性が良く効果的です。今後はFacebook広告やLINE広告を利用しようと考えています。特にFacebook広告はInstagramと繋がっているので、自社サイトのアクセスを着実に伸ばせるのではと思っています。

他にはプレスリリースに力を入れています。プレスリリースを打つことで、ユーザーの方はもちろんですが、バイヤーの方の目に留まっていただけたことをきっかけに、百貨店などのポップアップストアに出店いただく機会が増えました。

最初のポップアップストアは、北千住マルイになります。その後、湘南T-SITE、伊勢丹立川店、松坂屋名古屋店、東急百貨店と出店していきました。

ポップアップストアの店頭写真
ポップアップストアの店頭写真

ポップアップストアから旗艦店のオープンへ

松原さん:初めてポップアップストアを出店したときは、かなり大変でした。それまでは実店舗とWebがメインだったため、戸惑いが多かったです。ポップアップストアを出店し始めた頃は、今ほど認知度はなかったため、なかなか思うようには売れませんでした。ただ、ポップアップストアに出店する目的は、まず知ってもらうことだったので、あまり気にはしていませんでした。

初めて出店した北千住マルイのバイヤーの方からもアドバイスをいただきながら、顧客層に合う商品を入れたり、ディスプレイを調整したりすることで、徐々にお客様の反応がつかめてから売上も伸びていった感じです。

その後、ポップアップストアの回数を重ねるにつれて売上も伸びていきましたね。松坂屋名古屋店にポップアップストアを出店したときは、SNSなどで直接DMをいただくことも多かったです。SNSでポップアップストアに出店することを知っていただき、そこから集客に繋がっています。

ポップアップストアに限らず、実店舗にも当てはまりますが、お客様のお子さんの写真を撮らせていただいています。それをSNSでアップすることで、お客様も喜んでいただけますし、投稿を見た方が店舗にもいらっしゃいます。SNSの運用はお客様を巻き込み、参加型のイベントになるよう意識しています。

ポップアップストアに出店した後、そこの地域に住んでいる方からの注文がすごく増えるんです。モールではなく、自社サイトで購入していただけるのですが、パンフレットを店頭に置いているので、その場では購入されなくても気になった方が後々必要になったときにお買い求めいただいているのではないかと思います。ポップアップストアはその場の売上だけでなく、認知度とブランディングの向上に繋がっていると思います。

また、今まで実店舗は前橋市にある路面店1店舗だけでしたが、10月8日に阪神百貨店の梅田本店に旗艦店をオープンしました。阪神百貨店のバイヤーの方がわざわざ前橋市までいらっしゃって、「ファミリアやミキハウスとは違った、新しい感度のベビー・マタニティ雑貨のスペースを設けました。今までの子供服売り場とは違う感度の高いファミリー向けの施設になるので、ぜひ出店いただきたいです」とオファーをいただいたことがきっかけです。その際、バイヤーの方に、「イギリスの絵本「Belle&Boo(ベルとブゥ)」とライセンス契約を結んでいるのは御社だけですので、そこを推していただきたいです。阪神百貨店を足掛かりにぜひ伸びて下さい」と言われて嬉しかったですね。

ショップデザインも絵本の世界観がでるようにカウンターに「Belle&Boo(ベルとブゥ)」のイラストをいれています。

阪神百貨店の梅田本店にある旗艦店
阪神百貨店の梅田本店にある旗艦店

―― 旗艦店のオープン、おめでとうございます。これをきっかけに新たなお客様との出会いが生まれるといいですね。最後に、松原さん自身、今後やっていきたいことがあれば教えていただけないでしょうか。

松原さん:いろんな国に良いものがたくさんありますが、知る機会はなかなかないと思います。バケーションはそういったものを見つけて、その興奮や楽しさを伝えたいという思いから始まりました。今後も私自身のフィルターを通して、いろいろな国にある良いものを伝えていきたいと思っています。

インタビューを通じて:受け身ではなく主体的に行動する大切さ

イギリスの絵本「Belle&Boo(ベルとブゥ)」とライセンス契約を結んだり、絵本作家さんに会いにいったり、とにかく松原さんは足を使って動いています。

また松原さんは所在地である群馬県の群馬Eコマース協会(GES) の副会長でもあります。群馬Eコマース協会は、県内のEC事業と情報化社会の発展に寄与することを目的とする非営利団体です。EC関連の集まりは東京で行われることが多いのですが、群馬を拠点としている事業者ですと、宿泊費や交通費などの費用や時間もかかってしまうため、群馬県内の事業者で集まってやろうとなったのがきっかけだといいます。

「Belle&Boo(ベルとブゥ)」のオリジナル商品を作る工場は、群馬Eコマース協会のコミュニティに参加している事業者さんに紹介いただいたそうです。主体的に動いている松原さんだからこそ、チャンスをつかめているのでしょう。

▼ ベビー&キッズアイテム「バケーション」
https://www.vacation-co.net/

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