帝国データバンク調査、小売業の支払手数料負担が10年で45%増加、キャッシュレス決済普及で飲食店は倍増

株式会社帝国データバンクは、保有する企業データベースから「小売業」を対象に企業財務データを抽出し、売上高に占める「支払手数料」の割合に関する推移について試算・分析を実施しました。分析にあたっては、各平均値として上下各5%、合計10%のトリム平均値が採用されています。

調査結果のポイント

財務分析が実施可能な小売業約8,000社を対象に分析が行われた結果、売上高における「支払手数料」負担の比率は、2024年度で平均2.04%(上下合計10%のトリム平均値)となりました。2014年度の1.41%と比較すると、10年間で45%の増加が確認されました。特に「飲食店」においては、2014年度の1.54%から2024年度には2.94%へと、ほぼ2倍に膨らんでいます。

【分析対象企業について】

「売上高」および「販売費および一般管理費」における「支払手数料」に相当する支出が存在する企業が対象とされています。

対象企業は算出が可能な小売業約1万社(年度ごとに集計)となっています。

なお、支払手数料には決済代行業者等への手数料に加え、出店費用、入出金手数料など多様な手数料が含まれるケースがあります

キャッシュレス決済の拡大が小売業の手数料負担を増大

スマートフォンを使って手軽に決済できる「キャッシュレス決済」が急激に普及している一方、そのコスト負担が小売業の経営に重くのしかかりつつあります。財務分析が可能な小売業約8,000社を対象とした分析では、売上高に対する「支払手数料」負担の比率が、10年前と比べて45%増加していることが明らかになりました。現金を携帯しない顧客層を取り込めることや、レジ締め業務の効率化、釣銭に関するトラブル防止など、オペレーション面での利点は確かに大きいものがあります。しかしながら、決済端末の導入費用や決済事業者へ支払う加盟店手数料などのコストが継続的に発生するようになり、利益率の低い小売業においては収益性が悪化する懸念が高まっています。

会計上の「支払手数料」には、QRコード決済やクレジット決済といったキャッシュレス決済に係る手数料のほか、ECモール等への出店手数料や販売代行手数料なども含有されています。この「支払手数料」が売上高に占める比率(手数料比率)を見ると、2024年度は小売業全体のトリム平均値(上下合計10%)で2.04%となり、2014年度の1.41%と比較して約4割上昇しています。2019年度頃までは前年度比0.1ポイント未満の上昇に留まっていましたが、近年はQRコード決済事業者による「初期費用・手数料無料」を訴求した導入促進キャンペーンや大規模なポイント還元施策、新型コロナウイルス感染拡大における非接触ニーズの高まりを背景として、キャッシュレス利用に伴う決済手数料の増加が全体を押し上げ、2021年度には初めて2%を突破しました。

実際に支払手数料を計上している小売企業も増加傾向にあり、2022年度には初めて1万社を超える結果となりました。2024年度時点においては、分析可能な小売企業全体の約7割に達しています。2025年度は確定していない企業が多数存在するものの、集計可能な約4,000社における「支払手数料」比率は2.07%と、過去最高水準で推移しています。

業態ごとに拡大する負担格差

業態別に分析すると、「飲食店」においては2014年度の1.54%から2024年度には2.94%へとほぼ2倍に増加しました。2025年度には初めて3%台に達する可能性があります。「初期費用・手数料無料」を背景としてQRコード決済を導入する店舗が爆発的に増加した一方、近年は手数料が有料化される動きが進んでいます。もともと客単価が低く、数百円から1,000円台の少額決済が中心となる飲食店では、現金を中心とした決済が「手数料2%〜3%」のキャッシュレス決済に置き換わったことで負担増加につながりました。また、新型コロナウイルス感染拡大で普及したデリバリープラットフォームへの依存度上昇もコストを押し上げる要因となっています。飲食料品や日用品を扱い、決済頻度の高い「飲食料品小売」においても、手数料比率は10年前から1.54倍に上昇しています。百貨店や総合スーパー(GMS)を含む「各種商品小売」では、宝飾品や高級アパレル、お中元・お歳暮といった高額商品の決済頻度が高く、自社クレジットカードなどによる決済も多いことから、業態別では最も手数料比率が高い結果となっています。

アパレルを中心とした「織物・衣服・身の回り品小売」も全業種の中で高水準となっており、2014年度の2.61%から2024年度には3.90%へ上昇しました。キャッシュレス決済手数料に加えて、自社ECサイトを保有しない中小企業を中心に、大手ECモールへの出店手数料や販売代行手数料が、売り上げ確保に欠かせないコストとして重い負担となっています。

一方、自動車ディーラーなどが多い「自動車・自転車小売」は2024年度で0.89%となり、全業態の中で最も低い水準でした。振込決済や自社ローンによる割賦販売が中心であり、決済事業者への支払いが相対的に少ないことが要因と考えられます。

持続可能な「キャッシュレス決済」に向けた課題

経済産業省の発表によると、2025年の国内におけるキャッシュレス決済比率は58.0%に到達しました。同省は将来的に8割達成を目標として掲げており、2030年には中間目標として65%を目指しています。決済単価が高いクレジットカードが全体の8割を占めている一方、PayPay(ペイペイ)をはじめとしたQRコード決済などスマートフォンを活用した決済方法が定着し、キャッシュレス決済の比率向上に貢献しています。

ただし、政府主導で推進されてきたキャッシュレス化は、消費者には大きな利便性を、決済事業者には大きな利益をもたらした反面、入金サイクルの長期化や手数料負担の増加による資金繰りの悪化といったデメリットが、決済頻度が高まるにつれて顕在化してきています。現場の声としては、集客のためにやむを得ず導入したものの、「少額決済についてはできるだけ現金払いにしてほしい」との意見も少なくないと聞かれます。

キャッシュレス決済のさらなる普及を実現するためには、小売事業者における手数料負担の適正化や、バリューチェーン全体で利便性という付加価値とコストを公平に分配する制度設計などが不可欠となります。

※『QRコード』は株式会社デンソーウェーブの登録商標です

出典元:株式会社帝国データバンク

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