
国際的な環境保護団体であるマイティー・アースが、アジアの主要スーパーマーケット8社を対象として、メタン削減を含めた気候変動対策を初めて評価したランキングを公表しました。この調査において日本のイオンが首位を獲得しましたが、100点満点中わずか20.5点という結果となり、アジアの小売業界における食肉・乳製品・コメのサプライチェーンでの気候汚染対策が極めて不十分な実態が浮き彫りとなっています。
今回の分析は、アジア地域における食肉消費量の継続的な増加という背景を踏まえて、各スーパーマーケットの気候変動対策を検証したものとなっています。集約的な畜産に依存する食肉消費は、強力な温室効果ガスであるメタンの主要な排出源の一つとされており、日本は世界で第3位の牛肉輸入国という位置付けにあります。
畜産セクターは人為的なメタン排出量全体の約32%を占めており、農業分野におけるメタン排出を押し上げる主要な要因となっています。本報告書では、畜産が気候変動と森林破壊に甚大な影響を与えているにもかかわらず、アジアの小売業界が食肉・乳製品のサプライチェーンにおけるメタン排出問題に十分に対処できていない実態を明確に示しています。
今回の調査結果によると、評価対象となったすべてのスーパーマーケットにおいて、気候汚染、特に食肉・乳製品・コメのサプライチェーンから発生する大量のメタン排出への対応について、必要とされる緊急的な措置が講じられていないことが判明しました。
調査では、6つのカテゴリーに及ぶ20の指標を用いて、以下の8社の小売企業を評価対象としています。日本からはイオンとセブン&アイ・ホールディングス、香港からはDFIリテール・グループ・ホールディングスとサンアート・リテール・グループ(大潤發スーパー)、中国からはウォルマート・チャイナ、韓国からはイーマートとロッテショッピング、そしてシンガポールからはフェアプライス・グループが選定されました。
この記事の目次
日本の小売企業は1位と4位にランクイン
日本のスーパーマーケットであるイオンは、調査対象の中で最高スコアを記録しましたが、100点満点中わずか20.5点という低い水準にとどまっています。同社は、畜産に由来するメタンの気候への影響について公式に認めている唯一の企業である点が評価されましたが、メタン排出削減に向けた定量的に評価可能な具体的措置はまだ実施されていないとのことです。
日本からもう1社評価対象となったセブン&アイ・ホールディングスは4位となり、スコアは100点満点中9点という結果でした。
イオンは、今回の調査対象となった小売業者の中で唯一、植物性食品を中心とした食生活への移行の必要性を認識している企業として評価されました。こうした移行は、食肉・乳製品に由来するメタン排出を削減するための重要な解決策となっています。
セブン&アイ・ホールディングスについては、稲作によるメタン排出が気候変動に及ぼす影響を認識している点、さらに自社ブランドの食肉・乳製品の代替品を幅広く提供している点が評価されました。
また、イオンは2040年までに温室効果ガスのネットゼロ目標を掲げている唯一の小売企業であることも明らかになっています。
マイティー・アース東アジア・マネージャーのコメント
マイティー・アース東アジア・マネージャーの朴梅花氏は次のように述べています。
「イオンとセブン&アイ・ホールディングスは、他のアジアの小売企業と比較してわずかに良好な評価を得ていますが、自社の食肉・乳製品・コメのサプライチェーンから発生するメタン排出への対策という点では、ほとんど進展が見られません。
世界は観測史上3番目に暑い年を経験したばかりであり、その背景には畜産や稲作によるメタンの排出が存在しています。そうした極めて深刻な状況であるにもかかわらず、企業の無策が明白になっています。メタンの排出を直ちに削減することは、気温上昇を抑制し、アジアがすでに直面している極端な気候変動の影響を緩和する最も即効性の高い手段の一つです。
透明性のある情報開示は、メタンによる気候への悪影響に対処する上で日本の小売企業が踏み出すべき重要な第一歩となります。また、スーパーマーケットは、日々の生活の中で消費される食料が気候にもたらす影響について消費者の理解を深め、植物性食品を中心とした食生活への移行を促進する上で、独自の役割を果たすことができるはずです。イオンとセブン&アイ・ホールディングスの両社がその点を認識していることは、かすかな希望の光とも言えるでしょう。」
日本の気候コミットメント
日本は、2021年にグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において発足した自主的な取り組み「グローバル・メタン・プレッジ(GMP)」の署名国となっています。この取り組みでは、地球の気温上昇を1.5℃に抑えるために、世界のメタン排出量を2030年までに30%削減することを約束しています。また、日本は2050年ネットゼロの実現も表明しています。
その他の主要な評価結果
現時点で、メタン排出量を報告している小売企業は1社も存在していません。また、気候関連の報告内容には企業間でばらつきが見られ、スコープ1、2、3排出量の開示項目において満点を獲得したのは韓国のスーパーマーケット2社のみでした。
スーパーマーケットのサプライチェーンにおける食肉・乳製品・コメの生産がメタン排出を増大させているという事実があるにもかかわらず、適切な排出削減目標を設定している小売企業は1社もありませんでした。
食肉・乳製品の生産によって引き起こされる森林破壊が気候や自然環境に重大な影響を及ぼしているにもかかわらず、「森林破壊・土地転換ゼロ(DCF)」の方針を公表している小売企業は1社もありませんでした。植物性食品の販売拡大は、メタン排出削減の重要な機会となりますが、評価対象企業のうち、現時点でその機会を活用して具体的な行動に移している小売企業は1社もないという結果となりました。
アジアが抱えるメタン問題
メタンは、大気中での寿命は短いものの、温室効果が極めて高い温室効果ガスとして知られており、20年単位で見ると二酸化炭素の約80倍の温室効果を持っています。そのため、メタン排出量の迅速な削減は、近い将来の気温上昇を抑える最も即効性の高い手段の一つとなります。アジアは世界平均のおよそ2倍のペースで気温上昇が進んでおり、経済、生態系、社会全般においてすでに気候変動の影響を受けている状況です。
牛肉は、世界的に見ても農業由来のメタン排出の最大の要因となっており、アジアでは豚肉に次いで2番目に広く消費される赤身肉となっています。経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で発表した農業見通しによれば、アジアにおける食肉および海産食品の消費量は、2050年までに78%の増加が見込まれています。つまり、食肉や乳製品の消費拡大がアジアにおけるメタン排出の増加に直結している状況です。
世界のコメ生産量・消費量の約90%をアジアが占めており、稲作由来のメタン排出は、アジアにおける気候問題の重大かつ長期的な課題となっています。コメの生産に伴い、世界全体で毎年約6,000万トンのメタンが排出されており、これは世界における人為的なメタン排出量のおよそ10%に相当します。
アジアの小売企業に求められる行動
マイティー・アースはアジアの小売企業8社に対して、直ちに行動を開始するよう求めています。その第一歩は、気候関連報告の透明性を向上させることであり、これには食肉、乳製品、コメに由来するメタン排出量の開示も含まれます。そうした取り組みの一環として、企業には以下の行動をとることが求められています。
自社の排出プロファイルや気候対策計画においてメタンが大きな比重を占めていることを認識し、この重要課題に対する消費者の意識を高めること。
2030年までにメタン排出量の30%削減を掲げる「グローバル・メタン・プレッジ(GMP)」に沿う形で、メタン排出削減目標を設定すること。
2030年までに植物性食品の販売比率を少なくとも60%(動物性食品は40%以下)とする目標を設定し、植物性食品中心の食生活への移行を後押しすること。
分析手法について
小売企業8社に対する評価は、企業報告書、ウェブサイト、「科学に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)」のコミットメントに関するデータベースなど、一般に開示されている情報のみに基づいて実施されました。機密・専有データは使用されていません。本評価は、現場での実施状況ではなく透明性を評価するため、公開情報を説明責任に関する中核的な指標として位置付けています。
本分析は、アジアの大手スーパーマーケット8社を気候関連の情報開示とメタン排出量の観点から評価するものです。スコアカードの対象となる小売企業の選定は、年間売上高、食料品販売量、食品小売業界における市場での総合的な優位性に基づいて行われました。6つのカテゴリーにわたる20の指標で評価し、分析は2025年12月1日から2026年1月15日にかけて実施されました。
該当する場合には、小売企業のウェブサイトに公開されている最新の気候関連開示情報を分析対象としました。唯一の例外である指標3.4では、SBTiコミットメントに関するデータベースからもデータを収集しています。
合計スコアは100点で、これを20の指標に配分しました。各指標は3段階(100点、50点、0点)で評価されました。指標ごとに異なる重み付けが行われ、その指標が持つ重要性、ならびに小売企業のメタン排出量および気候に関する説明責任全般への影響度に応じて、各指標に特定のスコアが割り当てられました。
マイティー・アースについて
マイティー・アースは、生命あふれる地球を守るために活動する世界的な政策提言団体であり、自然を保護し、生命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。インパクトの創出に徹底的にこだわり、世界に広がるパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候汚染を大幅に削減するよう主要産業に働きかけるとともに、熱帯地域の先住民族・地域コミュニティの生活向上にも取り組み、変革をもたらしています。
出典元: マイティー・アース












