
JR東日本グループは、鉄道ネットワークを活用した列車荷物輸送サービス「はこビュン」において、2026年3月23日より盛岡新幹線車両センターと東京新幹線車両センター間でE3系新幹線を改造した荷物専用車両による運行を開始することを発表しました。このサービスは、同社が掲げる「勇翔2034」のライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)構想の一環として、地域に活力をもたらし、豊かな日本の実現を目指すものです。
この記事の目次
目指す姿と新たなライフスタイルの創出
「はこビュン」は、鉄道の速達性・定時性という強みを活かし、地域とマーケットをつなぐ物流ネットワークの拡大を通じて、産業振興や交流人口増加から新たなライフスタイルの創出を目指すサービスです。地域の魅力ある産品を首都圏へと届けることで、地域経済の活性化を推進しています。

これまでの主な「はこビュン」輸送実績
「はこビュン」はすでに様々な輸送実績を重ねています。食品や医療品など多岐にわたる商品を、新幹線の高速性を活かして輸送しています。

荷主のお客さまからの声
・商品の特性上、首都圏での販売が課題だったが新幹線輸送によって解決しメリットを感じている(食品販売業)
・新幹線の高速・安定輸送で、従来の陸送よりも高品質な輸送が可能となった(医療品製造業)
納品先のお客さまからの声
・地方の鮮魚が、その日のうちに都内で販売できることは、消費者に付加価値を提供でき好評(鮮魚小売店)
・「作りたて」が売り場に並ぶことにより、地域の魅力を発信でき、お客さまとのコミュニケーションで売場が活気づいている(地産品販売店)
ネットワーク拡大に向けた大口輸送の取り組み
JR東日本は2025年4月18日より、毎週金曜日に東北新幹線はやぶさ50号(E5系10両編成)の1号車、2号車を荷物専用車両として新青森・東京間の大口輸送を開始する予定です。また、青森県と連携した「地域連携モーダルシフト等促進事業」として、モーダルシフトや共同輸配送等を推進することを目的とした2025年度国土交通省の事業に採択され、協議会を立ち上げて首都圏への新幹線輸送の実証事業を連携して実施中とのことです。
実施期間は2025年10月24日から2026年1月23日までで、協議会事業者には青森県・株式会社ヤマト運輸・株式会社ジェイアール東日本物流・JR東日本が参加しています。

「荷物専用新幹線」の概要
JR東日本は2025年4月から臨時列車の一部客室を使用した大口輸送サービスをすでに開始していますが、より多量の荷物を高頻度で輸送してほしいというニーズに応えるため、E3系新幹線1編成の全号車を荷物専用車両として改造します。
車両センターの活用によりお客さまとの接触を避けることによる安全確保と、カゴ台車のまま一度に多量の荷物を輸送することが可能となります。あわせて、AGV(無人搬送車:Automated Guided Vehicle)の導入により作業効率化を実現し働き方改革も推進するとしています。また、車内電源を活用した冷温管理機器(業務用クーラーボックス等)による冷蔵品の輸送も可能となり、今後は仙台エリアや新潟エリアへの輸送拡大も目指しているとのことです。
輸送概要
・運行日:平日の定期運行 (2026年3月23日(月)~)
・輸送区間:盛岡新幹線車両センターから東京新幹線車両センター
・輸送形態:荷物専用新幹線(1編成7両)
旅客輸送1~10号車・荷物輸送11~17号車
・積載量:最大 17.4t(1,000箱程度)
荷物専用新幹線の走行イメージ
正午前に盛岡新幹線車両センターを発車し、16時頃に東京新幹線車両センターに到着するダイヤを予定しているとのことです。2026年2月9日(月)から受付を開始予定で、運転日は臨時列車運転や車両定期点検等により変更の場合があります。なお、運行時はE5系「やまびこ」と連結し、荷量は荷姿・サイズにより変動します。
輸送の流れ

車両特徴
荷物搭載スペースを確保するため、客室内の座席を全て撤去しています。荷物をカゴ台車に載せたまま車内に搭載するため、床面をフラット化した上で鉄板を敷き、滑り止め加工を施しています。また、車内に設置したベルトで荷崩れを防止する工夫もされています。
改造前の車両内
現在、改造中の車両内(鉄板敷設・滑り止め加工済)
改造後の車両内のイメージ
車両デザイン
「はこビュン」が、JR東日本の鉄道ネットワークを活かし、地域の商品・魅力をお届けするサービスであることを全面に出した特別デザインが施されます。先頭車は代表的な輸送商材を大きくデザインし、中間車の窓にエリア毎の主に輸送実績のある地産品等をデザインしています。


AGV(無人搬送車)の導入
新幹線車両センター内での荷物の搬送について、AGVにより120サイズ(20kg相当)の箱約40個分まで牽引搬送し、車両センター内のスロープや狭小ルートも含め自動搬送を実現します。
AGVの活用による荷扱い業務の省力化(4トントラックの荷物の場合、3~4往復程度で搬送)により、人手不足を考慮した働き方改革も推進していくとのことです。
AGV(無人搬送車)
AGVによる作業イメージ

輸送ネットワーク・輸送サービスの拡大展開
JR東日本は他の事業者との連携を通じて、ネットワークやサービスを拡大し、更なる産業振興や交流人口増加を推進して地方創生、社会課題の解決を目指しているとのことです。
JALグループと連携した新サービス「JAL de はこビュン」
地域から海外までワンストップで輸送する新しい物流サービスを、JALグループと連携して商品化する計画です。新幹線のスピードに加え、新幹線・航空機での輸送及び通関手続きをワンストップで行うことで各地域から目的地まで迅速に荷物をお届けすることにより、日本各地の優れた地産品の更なる海外輸出拡大による地方創生も目指しています。
・サービス名:JAL de はこビュン
・輸送開始時期:2026年1月中旬予定
・輸送対象エリア:シンガポール、クアラルンプール、台北、香港

日本郵政グループとの協業
2024年2月にJR東日本グループと日本郵政グループとの間で「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定を締結しています。その中で、持続可能な物流の実現を掲げており、両社で「物流のリ・デザイン」の実現を目指しているとのことです。
連携イメージ
上野駅「つながる産直市」での活用
2026年春、「Beyond Stations構想」のモデル駅である上野駅において、『文化創造HUB』をコンセプトに、JR東日本駅最大級のゼロカーボンメディアやショールーミングスペースを新たに整備し、「つながる産直市」を開催する予定です。
五感で地域の魅力を体験できる「つながる産直市」では、列車荷物輸送サービス「はこビュン」を活用し、鉄道の「速達性」「高度な輸送品質」「広域ネットワーク」を生かして、地域でしか味わえない朝どれの新鮮な青果や海産物など、"最旬"の品々を上野駅に届ける計画です。
上野駅での地域の豊かな食文化体験の創出を通じて、観光流動の促進、交流人口の拡大につなげ、地域経済の活性化や新たな魅力発掘の共創・循環を創り出すことを目指しているとのことです。

「はこビュン」の主な料金体系
1.「はこビュン」 法人向け輸送(事前に契約締結が必要)

2.「はこビュンQuick」 法人・個人向け輸送(事前予約不要。直接駅カウンター持ち込み)

社会的課題解決への貢献
JR東日本は「はこビュン」を通じて、直面する「物流業界の人手不足問題」や「CO2 排出量削減」、「地方創生」等、社会的課題の解決に貢献していくことを目指しています。

「はこビュン」とは
速達性・定時性に優れ、環境にも優しいという鉄道の強みを活かし、JR東日本グループが展開している荷物の輸送サービスです。鉄道によって地域とモノをつなぐことで、地域の魅力発信を行い、人々の豊かなくらしづくりや社会課題の解決に向けて取り組んでいます。
出典元:東日本旅客鉄道株式会社 プレスリリース












