電通グループが発表:2026年の世界広告費が初の1兆ドル超えへ - デジタル広告が成長をけん引、テクノロジー分野が10.3%増

電通グループ(ブランド名:dentsu、本社:東京都港区)が、世界56の市場から収集したデータに基づく最新の「世界の広告費成長率予測」を発表しました。この予測では、2025年の見通しが更新されるとともに、2026年の新規予測が初めて公開されています。注目すべき点として、2026年には世界の広告費が史上初めて1兆米ドルを突破する見込みであることが報告されています。

2025年の世界広告費は5.5%増、9,891億米ドルに

同グループの発表によると、2025年の世界広告費は前年比5.5%増の9,891億米ドル(約153兆円)になると予測されています。この成長はデジタル広告の継続的な伸長が主な要因とされています。

地域別の成長率を見ると、日本は3.7%増、米州が5.5%増、EMEA(欧州・中東・アフリカ)が3.8%増、APAC(日本を含むアジア太平洋地域)が6.4%増と、すべての地域でプラス成長を維持する見込みです。

また、デジタル広告費は8.7%増の6,684億米ドル(約103兆円)に達し、全広告費に占める割合は67.6%まで拡大すると予測されています。これはデジタル広告がますます市場の主要部分を占めるようになっていることを示しています。

2026年は広告費が初の1兆米ドル突破へ

2026年については、世界の広告費が5.1%増の約1兆392億米ドル(約161兆円)に到達し、広告業界の歴史上初めて1兆米ドルを超えると予測されています。この成長は、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック、2026 FIFAワールドカップ、米国の中間選挙など、各地域で開催される大型イベントが広告需要を下支えする形で実現すると見られています。注目すべき点として、この成長率は世界経済の成長率見通し3.1%(国際通貨基金による予測)を上回ることが予想されています。

電通グループの予測によれば、2026年はアルゴリズムによる広告配信の高度化が進み、「アルゴリズム時代」が本格的に到来すると見込まれています。さらに、AI(人工知能)をはじめとする新たなソリューションの普及が広告効果を高め、今後の広告市場の成長をさらに促進することが期待されています。

地域別のトレンド:APACと米州が成長をけん引

2026年の地域別広告費成長率予測を詳しく見ると、APAC(日本を含むアジア太平洋地域)が5.4%増の3,764億米ドル(約58兆円)となり、全体の36.2%を占める見込みです。特に中国は6.1%の成長、インドは8.6%という高い成長率が予測されており、アジア市場の重要性が一層高まることが示されています。

米州地域については5.2%増の4,605億米ドル(約71兆円)に達し、世界全体の44.3%を占めると見込まれています。米国では2026 FIFAワールドカップや中間選挙などの大型イベントも追い風となり、5.0%の成長が予測されています。また、ブラジルは9.1%という高い成長率が見込まれており、世界の主要12市場の中で最も高い成長率を示すと予測されています。

EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域は4.2%増の2,023億米ドル(約31兆円)となり、全体の19.5%を占める見通しです。EMEA地域で最も高い成長率を示すのは英国で、5.7%の成長が予測されています。

日本市場については、2025年に3.7%増、2026年には2.9%増と、安定した成長を継続する見通しが示されています。

媒体別のトレンド:デジタル広告が成長の主役に

2026年のデジタル広告費は6.7%増加し、世界の広告費全体に占める割合は68.7%にまで拡大すると予測されています。デジタル広告の中でも特に高い成長が見込まれる分野として、リテールメディア(14.1%増)、オンライン動画(11.5%増)、ソーシャルメディア広告(11.4%増)などが挙げられています。これらの分野が今後のデジタル広告市場をけん引していくと予想されています。

一方、従来型のメディアでは、テレビ広告費が2025年にはマイナス成長となるものの、2026年には2.4%増とやや回復する見込みです。屋外・交通広告(OOH)は4.1%増、映画館広告(シネマ)は2.2%増と予測されています。しかし、新聞・雑誌といった紙媒体は3.0%減と縮小傾向が続くと見られています。

業種別の見通し:テクノロジー分野が最も高成長

業種セクター別では、AIを活用した新製品やサービスの開始、コネクテッドエコシステムへの投資拡大を背景に、テクノロジー分野の広告費が10.3%増と、2026年に最も高い成長率を記録すると予測されています。これに続くのが官公庁・社会・政治・団体(10.1%増)、飲料業界(10.1%増)となっています。これらの分野では、新たな技術やサービスの導入、イベント関連の広告投資などが成長を後押しすると見られています。

調査の概要と方法論

今回の「世界の広告費成長率予測」は、2025年10月までに世界56の市場からデータを収集し、各市場における専門的な知見を取り入れて作成されたものです。対象となる媒体は、デジタル、テレビ、新聞・雑誌、OOH(屋外/交通)、オーディオ、シネマの各媒体となっています。

広告費は、交渉によるディスカウントやエージェンシー・コミッションを差し引いた金額で計算されており、現地通貨建てで提供されたデータを2025年9月の平均為替レートで米ドルに換算しています。この予測は年2回を基本としてアップデートされ、実績値と最新の予測値はすべて恒常為替レートに基づいて修正されています。また、一部地域の高インフレによる調整が過去データにも遡及して適用されていることが報告されています。

なお、同グループの発表では、1米ドルを約155円として換算した金額も併記されています。

世界の広告費上位12市場としては、米国、中国、日本、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、ブラジル、インド、カナダ、イタリア、スペインが挙げられています。これらの市場の動向が世界の広告業界全体に大きな影響を与えることになります。

まとめ:デジタルシフトが加速する広告市場

電通グループの最新予測によれば、世界の広告市場は2025年から2026年にかけて堅調な成長を続け、2026年には初めて1兆米ドルの大台に乗ると見込まれています。この成長は主にデジタル広告の拡大に支えられており、特にリテールメディアやオンライン動画、ソーシャルメディア広告などの新しい形態が注目されています。

また、AIやアルゴリズムの進化によって広告配信の高度化が進み、広告効果の向上が期待されることも市場拡大の要因となっています。業種別ではテクノロジー分野が最も高い成長率を示すと予測されており、デジタルトランスフォーメーションの流れが広告市場にも強く影響していることがうかがえます。

地域別には、アジア太平洋地域と米州が成長をけん引し、特に中国、インド、ブラジルなどの新興市場が高い成長率を示すと予測されています。日本市場も安定した成長を維持すると見込まれています。

こうした予測から、広告業界は今後もデジタルシフトを加速させながら、新たな技術やソリューションを積極的に取り入れていくことが予想されます。特にAIやアルゴリズムを活用した広告配信の高度化が進み、より効果的かつ効率的な広告展開が可能になると期待されています。

出典元:株式会社電通グループ プレスリリース

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