コマースロボティクスが中小企業向けB2B取引基盤モデル「伊藤モデル」に関する研究論文を発表

株式会社コマースロボティクス(東京都港区、代表取締役:伊藤彰弘)が、EC理論とSCM(サプライチェーンマネジメント)理論を融合したB2B取引基盤モデルに関する研究論文を公表しました。論文タイトルは「EC・SCM理論に基づく中小企業向けERP低コスト構築モデルに関する研究 ― ERP中心思考からEC統合基盤への構造転換 ―」で、全52ページに及ぶ内容となっています。

研究の背景と課題認識

国内の中小企業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展しない構造的な要因について、今回の研究では詳細な分析が行われています。従来型のERP中心DXには限界があることが指摘され、EC理論による取引の標準化とSCM理論による需給の最適化を統合した新たなB2Bデジタル基盤モデルである「伊藤モデル」が提案されました。

この研究の基盤として活用されているOMS・WMS統合型システムは、実際のEC物流の現場において年間およそ6,000万件の出荷処理を実行しているシステムです。理論のみならず実運用での実績に基づいている点が大きな特徴となっています。

中小企業DXの構造的課題

国内では中小企業のDX推進が重要な課題として位置づけられていますが、ERP導入には高額な投資や専門的なIT人材が必要となることから、多くの企業において導入が進んでいない状況があります。その一方で、B2C領域ではECの発展によって、取引データの標準化と自動化が進展し、高度な業務効率化が実現されてきました。

しかしながら、B2B領域、特に中堅・中小企業においては、受発注・契約・在庫・需給管理といった業務が分断されており、企業間取引のデジタル化は十分に進んでいないのが実情です。今回の研究は、こうした課題に対してEC理論とSCM理論を統合することで、企業間取引のデジタル化とサプライチェーン最適化を同時に実現する新しいB2B取引基盤が提示されています。

伊藤モデルの構造と特徴

本研究では、B2B取引基盤として以下のシステム構造が設計されています。

ECベースSCM基盤

OMS→WMS→EOSから構成されており、在庫の全体最適化を実現する仕組みとなっています。

ECデジタル基盤モデル「伊藤モデル」

ECデジタル基盤モデル「伊藤モデル」

コンパクト設計EOS

日次での需要予測・在庫日数計算を実施し、各種発注方式に基づいて発注量を算出します。

需要予測計算に基づく発注システム

需要予測計算に基づく発注システム

電子見積連動型のB2Bカート

取引先各社と合意した電子見積の単価を参照して発注可能なB2Bカートシステムが考案されています。カートから発注後には注文書PDFと発注データが送信される仕組みです。

見積連動型B2Bカート

見積連動型B2Bカート(継続契約DX)

三層構造によるシステム設計

伊藤モデルでは以下の三層構造が採用されています。

取引処理層

電子帳票(個別契約DX)では電子契約理論が応用され、B2Bカート(継続契約DX)では電子見積書連動型B2Bカートが考案されています。コンパクト販売管理はEC型OMS設計理論に基づくコンパクト設計となっており、OMS(受注管理)は上位、下位システムの連携Hubとして定義されています。

実行層

WMS(倉庫管理)としてクラウド型が定義されています。

需給最適化層

EOS(需要予測・在庫最適化)では、簡易的な需要予測理論によるコンパクト設計が採用されています。

この三層構造により、「受発注データ」「在庫データ」「需給予測データ」を統合管理することが可能となります。さらにAIエージェントを統合することで、対話型UIによる業務支援や意思決定支援を行う次世代DXモデルも示されています。

研究のトピックス

ERP中心DXの構造的限界を指摘

従来のERPは企業内部の資源統合を前提としており、中小企業のDX成熟度との構造的なミスマッチが存在することが示されました。

EC×SCM統合による新しいB2B基盤モデル

EC理論による取引標準化とSCM理論による需給最適化を統合した新しい企業システムモデルである「伊藤モデル」が提案されています。

AIエージェントによる次世代DX

AIを操作支援ではなく「業務遂行主体」として位置付け、対話型UIによる新しい基幹システムモデルが提示されています。

今後の展望について

本研究で提示された伊藤モデルは、企業内部の資源管理を中心とする従来ERPとは異なり、企業間取引を起点としたデジタル基盤として設計されているのが特徴です。

今後は「B2B取引の電子化」「サプライチェーン最適化」「AIによるデータ駆動型経営」を実現する企業システムとして、さらなる研究と実証を進めていく方針とのことです。

Abstract(要旨)

国内の多くの中小企業は、受注管理、在庫管理、契約管理といった中核業務プロセスを完全にデジタル化できていません。従来、ERP(基幹業務システム)がこれらの業務プロセスを統合する主要なソリューションと考えられてきました。しかしながら、従来型ERPシステムは大規模な内部資源管理システムとして設計されており、多くの場合、多額の財務投資、専門的なIT人材、複雑なカスタマイズが必要となります。その結果、従来型ERPシステムと中小企業の組織的・資源的制約との間に構造的なミスマッチが存在しています。

一方で、B2Cセクターにおける電子商取引(EC)は、標準化されたデータ構造と自動化された取引プロセスを通じて高い業務効率を達成してきました。ECモデルは取引標準化の可能性を示していますが、主に取引処理に焦点を当てており、B2B環境において重要な需要予測や在庫最適化といったサプライチェーン調整の問題に完全には対応していません。したがって、効果的なB2Bデジタル取引インフラを構築するには、EC理論とSCM理論を統合する必要があります。

本研究の目的は、EC理論とSCM理論を統合することにより、低コストのB2B取引インフラモデルを提案することです。本研究はデザインサイエンスリサーチ(DSR)アプローチが採用されています。ECとSCMの理論分析に基づき、伊藤モデルと呼ばれるB2Bデジタル取引プラットフォームの概念モデルが設計され、その概念的適用可能性が評価されています。

伊藤モデルは、電子文書ベースの契約処理、継続取引のためのB2Bカート、OMSベースのコンパクト販売管理システムから構成される軽量な取引インフラを確立します。この取引層の上に、倉庫管理システム(WMS)と企業最適化システム(EOS)が統合され、需給調整と在庫最適化を支援します。このモデルは、取引処理層とサプライチェーン最適化層で構成される二層アーキテクチャを採用しており、EC理論から派生した取引標準化とSCM理論から派生した需給最適化の統合を可能にします。さらに、このモデルは上位層インターフェースとしてAIエージェントを組み込み、会話型オペレーション、プロセス監視、意思決定支援を支援します。

提案されたモデルの製品ベース企業とサービス指向企業の両方への概念的適用が分析されました。結果は、伊藤モデルが従来のERPシステムと比較して中小企業との構造的適合性が高いことを示唆しています。このモデルは、在庫効率の改善、断片化された業務プロセスの統合、専門的なIT知識への依存の軽減が期待されます。

本研究の主な貢献は、従来のERP中心の内部統合から、SCMおよびAI技術と統合された取引中心のECプラットフォームへと焦点を移す新しいB2Bデジタル取引インフラの提案です。伊藤モデルは、中小企業における段階的なデジタルトランスフォーメーションを可能にする概念的フレームワークを提供し、データ駆動型サプライチェーン管理への潜在的な道筋を提供します。

論文の構成

全52ページの論文は以下の構成となっています。

第1章では「序論 ― なぜ今B2B再設計が必要なのか」として、国内の中堅・中小企業におけるDXの停滞、電子受発注が進まなかった構造的要因、電子受発注の阻害要因調査、メーカー/卸における電子受発注の実態と課題、ERP導入が進まなかった構造的要因、ECの発展とB2Bコマースの可能性、研究目的および仮説、本研究の構成について論じられています。

第2章「DX成熟モデルからみた日本中小企業の構造的位置づけ」では、DX成熟モデルの理論的整理、国内中小企業の成熟度ポジショニング、ERPと成熟段階のミスマッチ、段階的進化モデルの必要性、本研究の位置づけについて説明されています。

第3章「EC理論の整理とその構造」では、ECにおける標準化モデル、データ構造化と取引プロセスの自動化、EC成功要因の抽象化、B2B電子商取引研究、ECモデルの限界(需給最適化の未統合)、B2B取引への応用可能性、EC理論とSCM理論の統合の必要性が述べられています。

第4章「ECモデルの限界とSCM理論の必要性 ― ECサプライチェーン統合モデル(伊藤モデル)の提示 ―」では、ECモデルの構造的限界、B2CとB2Bの取引構造の相違、B2B取引電子化の前工程としての取引DX、ECサプライチェーン統合モデル(伊藤モデル)、伊藤モデルの進化構造、理論的意義が論じられています。

第5章「B2BにおけるEC理論×SCM理論統合モデル― 伊藤モデルの理論的深化 ―」では、取引データと需給データの二層構造、情報歪み抑制モデルとしての伊藤モデル、「One Fact, One Place」原則の理論化、需給連動型ECモデルの定式化、標準化と競争領域の分離理論、プラットフォーム統合理論について説明されています。

第6章「EC理論に基づくB2B低コスト構築モデル ― 実装設計と役務専用ERPモデル ―」では、契約形態×取引形態による再定義、データ構造設計原則、物販モデルの実装設計、役務専用ERPモデルの構築、標準化とカスタマイズの分離設計、段階導入モデル、ERPとの構造比較が論じられています。

第7章「ERPを超える統合モデル― EC×SCM×AI統合基盤への進化 ―」では、ERP単体からEC統合基盤への転換、AIエージェントによる対話型UIへの移行、AIによる需給最適化高度化、知識統合基盤としてのAI、データ駆動型経営への進化、統合モデルの最終形態について述べられています。

第8章「モデル研究 ― 概念実証と適用可能性分析 ―」では、研究目的と仮説設定、物販企業モデル適用、役務・サービス企業適用、AIエージェント統合効果、ERPモデルとの比較分析、DX成熟度向上への影響について検証されています。

第9章「新時代への提言」では、ERP中心思考からの転換、中小企業にとっての構造的機会、競争優位の再定義、データ駆動型経営への進化、産業構造への含意、本研究の限界、今後の研究課題について提言されています。

研究責任者について

研究責任者は伊藤彰弘氏です。株式会社コマースロボティクスの代表取締役を務めており、ロジスティクス経営士(JILS)、ストラテジックSCMコース修了(JILS)の資格を保有しています。

トヨタ自動車および大手商社での技術開発・新規事業開発の経験を経て、株式会社コマースロボティクスを創業しました。EC物流システムやAIサービスの開発を行い、2,000社以上の企業へクラウドサービスを提供しています。

会社概要

会社名は株式会社コマースロボティクスで、所在地は東京都港区です。代表者は代表取締役の伊藤彰弘氏で、2013年に設立されています。

出典元:PR TIMES

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ