
LINEヤフー株式会社は、2025年度第2四半期決算を発表。売上収益は5,057億円(前年比+9.4%)、調整後EBITDAは1,254億円(前年比+11.3%)と、いずれも第2四半期として過去最高を記録しました。
検索広告が減速する一方、コマース事業が増収を牽引し、事業ポートフォリオ転換が着実に進んでいます。特にLINEミニアプリによる送客強化と、費用最適化による成長基盤の強化が、コマースの成長を支える主要ドライバーとなりました。
この記事の目次
全社業績:過去最高のQ2、コマースが成長を牽引
LINEヤフー株式会社の2025年度第2四半期(2025年7~9月)は、売上収益と調整後EBITDAがともに第2四半期として過去最高を更新しました。
- 売上収益:5,057億円(+9.4%)
- 調整後EBITDA:1,254億円(+11.3%)
- 調整後EPSも+41.1%と大幅に改善
事業別の動向を見ると、広告を中心とするメディア事業が横ばいとなる一方で、コマース事業と戦略事業(フィンテック)が成長を牽引しました。
- コマース事業:売上収益 2,166億円(+7.2%)
- メディア事業:売上収益 1,798億円(-0.3%)
- 戦略事業:売上収益 1,097億円(+35.0%)
コマースが全社成長の主役となり、LINE・PayPayとの連携を軸としたエコシステムが
収益拡大に寄与し始めていることがわかります。
また、今後の持続的成長に向けて、「AI活用による費用効率化」「事業ポートフォリオ転換(広告からECへ)」といった全社施策も進行中です。広告市場の不透明感が続く中でも、主要事業構造は確実に転換が進んでいます。
コマース事業:EC成長の主軸に、LINEシナジーが本格化
EC全体が拡大、リユースが急伸
コマース事業の売上収益は2,166億円(前年比+7.2%)となり、全社成長の中心となりました。ショッピング(Yahoo!ショッピングなど)やサービスEC(一休.com、Yahoo!トラベルなど)が引き続き堅調に推移したほか、リユース事業が大きく伸長しています。
- ショッピング事業:売上収益202億円(+9.9%)
広い商品ラインアップとキャンペーン施策が奏功しました。
- リユース事業:売上収益144億円(+41.1%)
Yahoo!オークションやYahoo!フリマに加えて、連結対象となったBEENOSが貢献しました。
- サービスEC事業:売上収益117億円(+10.5%)
一休.comや旅行領域が回復基調を維持しました。
また、ZOZOとアスクルはいずれも増収で推移し、安定した収益基盤となっています。一方で、販売促進費・広告宣伝費が前年同期比+41.0%と増加しており、成長投資の負担は残りますが、事業規模の拡大による収益成長がこれを吸収しています。
今後は、Yahoo!ショッピングとLINEの連携強化により、LINEユーザーとの接点拡大がEC成長の新たな推進力となる見通しです。
LINE内コマース強化、ミニアプリが新たな送客エンジンに

コマースの成長をさらに加速させる取り組みとして、LINEアプリ内での購買導線の拡張が進められています。ミニアプリやショッピングタブにより、日常のコミュニケーションからECにつながる“ながら購買”を実現します。
- ミニアプリのMAUが前年同期比+61% と大幅増
友だち登録やID連携を起点に、購買行動にスムーズに移行できる仕組みが浸透しつつあります。大手ブランドを中心に導入が拡大しています。
- ショッピングタブのテストを開始
現在はLINEギフト商品が中心ですが、Yahoo!ショッピングのストア商品も順次掲載予定です。LINEユーザーにフィットする商品ジャンルや見せ方を検証しながら展開を進めており、本格提供時期は引き続き検討中です。
- UXの転換:目的買い → 出会い型買い
Yahoo!ショッピングが検索を起点とする「目的買い中心」である一方、LINEでは新たな発見・提案型のショッピング体験を志向しています。
この相互補完により、Yahoo!ショッピングの商材をLINEユーザーに届ける新しい需要を開拓し、コマース成長の第2のエンジンとして期待されています。
メディア事業:広告構造の転換が進行
2025年第2四半期のメディア事業は、売上収益が前年比0.3%減の1,798億円と横ばいで推移しました。検索広告は、広告予算の抑制や市場環境を背景に、13.2%減と減速しています。
一方で、LINE経由の広告は堅調でした。LINE公式アカウントを中心とする広告収入は16.1%増、ディスプレイ広告も3.9%増と伸長。利用者の日常動線に組み込まれたLINE上での広告配信が、グループ内の広告ポートフォリオを支える形となっています。
費用面では、人件費やインフラ費用の増加により、調整後EBITDAは4.2%減の680億円となりました。
今後は、
- LINE公式アカウントの有償化推進
- ミニアプリ・ショッピングタブ等との連携
- 広告に依存しないSaaS型支援ビジネスの強化
へとシフトする方針です。

また、LINE内の広告接点拡大は、コマースサービスへの送客力向上に直結する施策であり、事業ポートフォリオ転換の中核を担う位置付けとなっています。検索依存から脱却し、LINEを中心とした広告・送客モデルへ転換が進むことで、コマース事業とのシナジー拡大が期待されます。
戦略事業(フィンテック):決済・金融がEC成長を後押し
戦略事業(フィンテック)は、売上収益が 1,097億円(前年比+35.0%) と大きく伸びました。その中核である PayPay連結(PayPay、PayPayカード、PayPay銀行など)は +55.4%と高成長を継続しています。調整後EBITDAも 229億円(+52.1%)と改善し、収益性の向上が進んでいます。
クレジットカード事業の拡大に加え、決済データを活用した信用領域(ローン・資産運用など)が利用者基盤の広がりとともに拡大しており、金融事業全体の規模が着実に増しています。
LINEヤフーは、金融を単体の収益源ではなくコマースの成長を支える基盤として位置づけています。実際、PayPayおよびPayPayカード経由でのEC購買が増えており、購入単価や購入頻度の向上に寄与しているとの説明がありました。
今後は、LINEウォレットタブの刷新や金融サービスの連携強化を通じ、「決済から購買・資産形成まで」一連のユーザー体験の最適化を進める方針です。
海外事業:アジアでの圧倒的ユーザー接点が将来の土台に
LINEヤフーは、日本国内に加え、台湾とタイを中心としたアジア地域でも高いユーザー基盤を持っています。2025年9月末時点では、
- 台湾:2,200万MAU(人口のほぼ全域)
- タイ:5,400万MAU(人口の8割以上)
と、いずれも市場シェアNo.1の地位を維持しています。
海外事業の売上収益は、スタンプ・ゲームなどの課金を中心にYoY +35.0%と引き続き成長しました。まだ取扱高ベースのコマース展開は限定的ですが、広告・決済など国内で成果が出ている領域を展開できるポテンシャルが大きい市場です。
今後は、メッセンジャー基盤の強みを活かし、LINE経済圏の海外拡大によるコマース成長の余地が注目されます。
まとめ:コマースを軸に、事業構造の転換が進展
LINEヤフーの2025年度第2四半期は、コマース事業を中心に成長を継続した四半期となりました。全社売上収益は5,057億円(YoY +9.4%)、調整後EBITDAは1,254億円(YoY +11.3%)と、いずれもQ2として過去最高を更新しています。
コマース事業では、Yahoo!ショッピングを中心に物販系が伸長し、リユース事業も拡大。加えて、ミニアプリやショッピングタブを通じたLINE内での購買導線整備が進み、ユーザー接点から購買までの一体化が具体化しつつあります。
メディア事業では検索広告が前年同期比-13.2%と減速した一方、ディスプレイ広告およびLINE公式アカウント(OA)が成長を維持。広告依存度の高かった検索中心のモデルから、LINE接点を活用した送客モデルへの転換が進んでいます。
戦略事業(フィンテック)は売上+35.0%と高成長を確保し、ECの購入完結率向上を支える基盤としての役割が一段と強化されています。
今後は、
- LINE内コマースの本格展開(ショッピングタブ正式ローンチ時期は検討中)
- OA・ミニアプリの収益化(SaaS導入含む)
- AIエージェント化と費用効率化による成長余地拡大
といった取り組みが、コマース中心の成長シナリオを下支えする方向です。
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