
EC物流代行(発送代行)サービス「ウルロジ」を展開するディーエムソリューションズ株式会社(本社:東京都武蔵野市、代表取締役社長:花矢卓司)は、全国の20-70代の男女で日常的にECを利用しているECヘビーユーザー1,000名を対象とした「EC・通販の発送に関する消費者意識調査」の結果を発表しています。
同調査では、消費者がECサイトを選ぶ際に「発送」に関して何を重視しているのか、またどのような体験が購入の妨げ(カゴ落ち)につながっているのかを明らかにしています。
この調査結果は、EC事業者が「送料無料」と「配送スピード」の最適なバランスを見極め、コストを最適化しながら顧客満足度を向上させるための、具体的なヒントが得られる内容となっています。
この記事の目次
75%以上が「急がない」。もはや神話だった「翌日配送」へのこだわり
「翌日配送」に対応していない場合、購買意欲がどの程度下がるかという質問に対し、「全く下がらない」(24.4%)、「あまり下がらない」(51.2%)を合わせて、75.6%が「購買意欲は下がらない」と回答しています。

また、AmazonなどのECモールか自社ECサイトかという購入経路による意識の差もほとんど見られませんでした。

大手ECモールが展開する翌日配送サービスによって、消費者の期待値は上がっていると思われがちですが、実際には多くの消費者は翌日配送に固執していないという実態が明らかになりました。これはEC事業者にとって朗報と言えるかもしれません。
調査結果によれば、無理なオペレーションを組んでまで翌日配送に対応するコストや負担よりも、確実な発送予定日を明記し、そのスケジュール通りに届ける「配送の確実性」の方が重要である可能性を示唆しています。特に自社ECサイトにおいては、画一的なスピード競争に巻き込まれるのではなく、例えば「ご注文から3営業日以内に発送」といった明確な基準を設け、それを遵守する誠実な対応こそが顧客の信頼につながるのではないでしょうか。
「土日・祝日発送」は自己満足?約6割のユーザーが「重要でない」
土日・祝日も発送していること(365日発送)の重要度について、「あまり重要ではない」(39.6%)、「全く重要ではない」(16.9%)を合わせると、約6割のユーザーが「重要ではない」と考えていることが分かりました。

週末や祝日を挟むと配送が遅れることに対し、消費者は一定の理解を示しており、カレンダー通りの発送業務でも多くの場合は問題ないと捉えているようです。もちろん、土日も発送することで顧客満足度が向上する側面はありますが、それが必須要件ではないことがこの結果から読み取れます。EC事業者は、365日対応のために人件費や倉庫の稼働コストをかけることが、費用対効果に見合っているかを慎重に検討する必要があります。
特に中小規模の事業者にとっては、無理に365日対応を目指すよりも、平日の受注・発送業務の効率化や確実性を高めることにリソースを集中させる方が、健全な事業運営につながる可能性があるようです。
越えられない「送料の壁」。7割以上が有料であることに強い違和感
送料を払って商品を購入することへの違和感を尋ねたところ、「とても感じる」(25.2%)、「少し感じる」(47.3%)を合わせ、実に72.5%もの消費者が送料の有料化にネガティブな印象を持っていることが判明しました。

EC市場の黎明期から続く「送料無料」の文化が、消費者の心理に深く根付いていることを示す結果です。物流コストが高騰する中、多くの事業者が送料の有料化や値上げを検討していますが、それが消費者の強い抵抗感につながるリスクを十分に認識する必要があるでしょう。
対策としては、ただ有料にするのではなく、「〇〇円以上購入で送料無料」のボーダーラインを消費者が納得しやすい金額(本調査では5,000円以下が8割超)に設定する、あるいは送料が商品価格に含まれていることを丁寧に説明するなど、消費者の不満を和らげる工夫が不可欠だと調査は示しています。

送料設定は、単なるコスト回収の手段ではなく、顧客との重要なコミュニケーションの一部であると捉えるべきでしょう。
ブランドロゴより「開けやすさ」。消費者が本当に求める"感動梱包"とは
どのような梱包だと満足度が高いかという質問では、「過剰すぎない最適サイズ」が55.8%でトップ、次いで「開封・後処理がしやすい」が47.9%でした。一方で、「ブランドイメージが体現されている」は8.1%に留まりました。

消費者は、見た目の美しさやブランドの世界観を表現した豪華な梱包よりも、「届いた段ボールが大きすぎて処分に困る」「テープが頑丈すぎて開けにくい」といった実用面でのストレスがないことを重視している傾向が明確になりました。
これは、EC事業者にとってコスト削減と顧客満足度向上を両立できる大きなヒントとなります。高価なオリジナル資材への投資を見直し、商品のサイズに合った適切な段ボールの選定や、開封しやすい工夫(ミシン目を入れる、剥がしやすいテープを使うなど)に注力することで、より少ないコストで高い満足度を得られる可能性があります。 環境配慮への意識も高まる中、「過剰すぎない」梱包は時代のニーズにも合致した重要な取り組みと言えるでしょう。
送料や遅延の不満もカバー可能?4割が価値を感じる「ひと手間」の力
丁寧な梱包やメッセージカードが、発送の遅さや有料の送料を補うほどの価値があるかと尋ねたところ、「十分価値があると思う」(8.7%)、「ある程度価値があると思う」(34.7%)を合わせ、43.4%が価値を感じると回答しています。

この結果は、物流を単なる「作業」と捉えるのではなく、顧客との関係を深める「CRM施策」の一環として活用できる可能性を示しています。
例えば、繁忙期などでどうしても発送が遅れてしまう場合や、やむを得ず送料をいただく場合に、手書きのメッセージカードを添える、少し丁寧な梱包を心がけるといった「ひと手間」が、顧客の不満を和らげ、むしろブランドへの好意を育むきっかけになり得るようです。全ての顧客に画一的なサービスを提供するのではなく、状況に応じてこうしたアナログなコミュニケーションを取り入れることで、リピート購入につながるロイヤリティの高い顧客を育てることができるかもしれません。
2人に1人が経験。カゴ落ちの最大の原因は「想定外の送料」
購入手続きの最終画面で、想定外の送料やお届け日が表示されたことで購入をやめた経験があるかという質問に対し、「よくある」(13.2%)、「時々ある」(43.7%)を合わせ、54.5%が「カゴ落ち」経験があることが分かりました。

カゴ落ちの具体的な理由としては、「送料が高かった/有料だった」が49.7%で断トツの1位、次いで「お届け日が遅かった」が36.9%でした。
ECサイトにおける最大の離脱ポイントである「カゴ落ち」の主要因が、送料とお届け日の不透明性にあることが明確になりました。

多くのユーザーは、商品を選んでいる段階では表示されていなかった送料が決済画面で初めて加算されたり、想定よりお届けが大幅に遅いことが判明したりすることで、購入意欲を失ってしまうことがわかります。
この調査結果は、いかに早い段階で、正確な送料と配送リードタイムをユーザーに提示できるかが、CVR改善の鍵であることを示唆しています。商品ページやカートの早い段階で送料シミュレーション機能を設ける、郵便番号入力でお届け予定日を明示するなど、UI/UXの改善によって「決済前のサプライズ」をなくすことが、カゴ落ち防止の最も有効な対策と言えるでしょう。
調査概要
調査対象:20-70代の男女 1,000名
調査条件:日常的にECを利用するECヘビーユーザー
調査対象エリア:全国
調査期間:2025年8月29日~9月4日
調査方法:インターネット調査
まとめ
今回の調査では、ECを利用する消費者が「発送」に対して抱くシビアな本音と、事業者が陥りがちな「思い込み」とのギャップが明らかになっています。
「コストをかけて配送スピードを上げたのに、なぜか売上に繋がらない」
「送料を改定したいが、お客様が離れてしまうのが怖い」
このようなお悩みをお持ちのEC事業者様にとって、同調査の結果は、今後の物流戦略を見直す上で非常に価値のあるデータとなるでしょう。レポート本編では、各調査結果に関するより詳細なデータや分析が掲載されているとのことです。
出典元: ディーエムソリューションズ株式会社 プレスリリース