
こんにちは、カラビナテクノロジー株式会社の中村です。
これまで10年以上、印刷会社やウェブ広告代理店で多くのEC運営企業様を担当させていただきました。その経験を活かし、現在はWebディレクターとしてシステム開発やECサイト開発に携わっています。

EC事業の担当者様からは、「リピーターが増えない」「業務が属人的で非効率」「アナログ業務が減らせない」「顧客データを活用しきれていない」といった課題のご相談をよくいただきます。これらは今も多くの企業が直面している課題です。
近年、業務効率化やCRM(顧客関係管理)の強化といった課題を解決する手段としてShopifyが注目されています。Shopifyの魅力は、当初「直感的な操作性により、専門知識がなくてもスピーディにECサイトを立ち上げられる」点でした。
現在では、高いカスタマイズ性を活かした構築事例が増え、日本語対応のShopifyアプリも続々とリリースされています。これにより、Shopifyは単なるECのシステムとしてではなく、ビジネス統合管理プラットフォームへと進化してきました。
本記事では、EC運営においてShopifyがどのように業務効率化、CRM強化、さらには売上拡大に貢献できるのか、具体的な課題や事例を交えながら解説します。
中村 祐貴子
カラビナテクノロジー株式会社
新卒で株式会社ゼネラルアサヒへ入社し、ウェブ制作や個人情報のデータ処理を経験。
上級ウェブ解析士を取得後、アンダス株式会社で8年間、ウェブ広告やCRM施策などを通じてマーケティング支援に従事。
現在はカラビナテクノロジーのディレクターとして「システムと人を繋ぎ、社会に良い体験を増やす」をモットーに掲げ、
ウェブ制作やシステム開発に加えて、アクセシビリティ対応の推進にも取り組んでいる。
カラビナテクノロジー株式会社
https://karabiner.tech/
EC運用でよくある課題と背景

業務効率化を妨げる属人化と限られたリソース
EC運用は特定のスタッフの経験や手作業に依存し、EC専任担当者の不足により売上拡大や業務効率化が進まないケースが散見されます。
受注処理、在庫管理、メール対応、販促活動といったEC運用業務は分断され、属人化が進むことで標準化が困難です。限られたリソースでECを運用するためには、属人化に頼らない効率的な仕組みの構築が不可欠です。
顧客データの活用不足
多くの企業が顧客データの活用に課題を抱えています。原因はデータの量、専門知識・ツールの理解不足、施策への落とし込みを行う設計とリソースの不足です。データ活用は顧客満足度向上や売上増加に繋がるため、収集から分析、施策までを体系的に構築し、戦略的投資と位置づけることが不可欠です。
リピート率・LTV向上への壁
新規顧客は獲得できても、継続的な購買にはつながらず、LTV(顧客生涯価値)を高められないと、結果として広告費ばかりがかさむ悪循環に陥ってしまいます。いかに既存顧客のリピート率を高め、LTV向上を図れるかがEC事業における売上拡大のカギです。
Shopifyがもたらす解決アプローチ

Shopifyは、上記の課題に対してさまざまなソリューションを提供しています。
スピード・拡張性・一元管理の強み
ShopifyはいわゆるSaaS(Software as a Service)型であり、サーバーの構築や保守が不要です。テーマやアプリを活用すれば、スピーディかつ柔軟にECサイトを構築・拡張できます。商品管理や売上分析、注文処理なども一元化され、業務の効率化に直結します。
CRMを強化するアプリ連携
Shopifyには豊富なマーケティング支援アプリがあります。例えば、ShopifyアプリのFlowで購入内容に応じたセグメントを自動生成し、ShopifyアプリのEmailなどと連携すれば、顧客の会員属性や購買傾向に基づいたメッセージの配信が可能になります。
自動化とパーソナライズ
サブスクの自動更新、カゴ落ち対策のリマインドメール、自動クーポン発行、顧客別のおすすめ商品表示など、自動化されたパーソナライズ施策を行える機能やアプリも売上拡大を後押ししてくれます。
柔軟なカスタム開発
さらに、Shopify PlusやAPIを積極的に活用することで、今ある業務システムとの連携や新しい機能の追加も柔軟に対応できます。これにより、お客様の事業規模や業種に合わせた最適なシステム設計を実現し、業務効率化に貢献するDX推進を力強く支援します。
事例紹介:「ファンシアター」プロジェクト
実際にShopifyを活用して成果を上げた事例として、株式会社KBC UNIE様(以下、KBC UNIE)が展開する「ファンシアター」プロジェクトをご紹介します。

クライアントの課題とニーズ
KBC UNIE様では、リアルの劇場での体験とECによるチケット販売の融合を目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)とCRMの同時推進が求められていました。
Shopifyによるシステム構築
Shopifyを中核に据え、チケット在庫・売上・顧客データを一元化。実店舗ではWebアプリでShopifyと連携するセミセルフ方式のキオスク端末を設置し、その場で会員認証を行い、チケットや座席の指定から決済までを可能にしたことで、対応に割くスタッフ数の削減を実現しました。あえてセミセルフ方式にすることで、顧客とのつながりを維持しつつ過度な接触を避け、適切なコミュニケーションが取れる接点を残しました。
自動化された業務プロセス
売上データは自動集計され、日次・週次・月次レポートを即座に生成した後、必要な部署や取引先へ自動送信まで完了する仕組みを構築しました。また、Shopifyアプリ連携によりメールやLINEを配信するためのセグメント作成も自動化され、これまでアナログだった会員管理も完全デジタル化に成功。属人性の排除と業務時間の大幅削減を実現しました。

DX化とCRMによるLTV向上
会員証をデジタル化したことで、紛失による再発行手続き業務が削減されました。
顧客データから鑑賞作品に合わせたメッセージ配信を行うことで、顧客の関心が高い作品を案内できるようになりました。その結果、開封率と購入率が向上しています。
さらに、サブスクの有料会員には、入会時やポイント獲得時に自動付与される割引クーポンをメールで通知。これにより顧客のリピート率向上とLTV向上に貢献しています。
成果数値
- 月間業務時間:192時間削減
- メール開封率:平均65.9%(セグメント配信)
- 会員獲得数:導入から半年で3,000人突破

事例から学ぶ、Shopify活用のヒント
この事例からは、業種や規模を問わず活用できる以下のヒントが得られます。
サービス業や実店舗でも有効
Shopifyは、単なるECサイト構築だけでなく、リアル体験を通じて顧客との接点を持つビジネス(飲食業、教育業、観光業など)にも活用できることを示しています。カスタマイズの自由度を活かして、予約管理やPOSシステム連携も実現可能です。
現場起点のDX
システム導入成功のカギは、最新技術や業務プロセス変更だけでなく、「誰の、どのような課題を解決するか」という視点です。「何を変えるか」から始めると、現場や顧客ニーズから乖離した形骸化システムになるリスクがあります。
例えば、非効率なデータ入力といった現場の負担軽減は従業員のモチベーション向上に、顧客問い合わせ対応の迅速化は顧客満足度向上に繋がります。
このように、現場の業務負担軽減や顧客接点での改善といった具体的な課題解決からDXを始めることで、システムは組織に定着し、目的を達成します。技術先行ではなく、「人」を中心とした課題解決の視点が、持続的なDX推進のカギとなります。
CRM設計のポイント
CRMを強化する際は、「誰に(顧客セグメント)」「どこで(チャネル)」「何を(コンテンツ)」届けるか」がカギです。これらはデータに基づいた継続的な改善体制が不可欠です。Shopifyは柔軟な設計により顧客セグメントの自動作成を可能にし、施策への注力を支援します。
データと現場の声の両輪
もちろん数字(データ)だけでなく、スタッフや顧客の“声”も大切なインサイトです。Shopifyではアンケート機能などを通じて、こうした声を蓄積し、施策やシステムの改善につなげられます。
ShopifyをEC戦略の強力なパートナーに
Shopifyは単なるECサイトの構築ツールではなく、「売る」ための仕組みと「つなぐ」ための顧客理解を同時に実現できるプラットフォームです。
特にこれからのEC戦略では、顧客との関係性を深めること(CRM)が重要なテーマになります。すべての施策は「自社の課題をどう整理し、どう解決していくか」から始まります。
KBC UNIE様の事例のように、課題を明確にすれば、自社に合った改善策を見出し、具体的な成果につなげることができます。Shopifyはそのプロセスを支える心強いパートナーとなるでしょう。
まずは、あなたの企業やクライアントがどのような課題を持っているのか、現場の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか?
今後のEC戦略やDX化、施策についてお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
カラビナテクノロジー株式会社
https://karabiner.tech/
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