生成AIエージェントの進化と業務変革の現在地【エクスプラザ高橋のAIトレンド探訪記】

本記事ではEC業界で事業を展開する皆様に向けて、生成AIを活用した業務改善や効率化に役立つ情報をお届けします。この連載は、エクスプラザ社の高橋さんとコマースピックの舟本がざっくばらんに話した内容をAIにて加工し、記事にしています。高橋さんの知見や最新のトレンドをわかりやすく解説し、読者の事業成長の一助となれば幸いです。また、EC運営に携わる方からの、「煩雑な日々の業務を生成AIを活用して簡単にできないかな?」といったご連絡をお待ちしています。ちょっとした疑問や質問などを頂けましたら、この連載を通して回答させていただきます。

専門家プロフィール

高橋 一生(Kazuki Takahashi)
株式会社エクスプラザ 代表取締役CEO

複数のスタートアップの共同創業を経て、株式会社メルカリにプロダクトマネージャーとして入社。その後株式会社エクスプラザを創業し、2023年より生成AIの法人導入支援事業「EXPLAZA 生成AI Partner」を開始。2024年6月より、生成AIのPoC開発やAXを支援するパッケージ、同年9月より、コンテンツ作成AI「Mark」を展開中。2025年1月に、株式会社松尾研究所との資本業務提携を発表。

■ 個人
X(旧Twitter):https://x.com/vvxo/
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ECでどう使う?生成AIに関する質問を受付中!!

数々の企業に生成AIの分野で支援をしているエクスプラザ社の高橋さんに、コマースピック読者から生成AIに関する質問を受け付けています。

  • 生成AIってどうやって使えば良い?
  • ChatGPT以外の情報を知りたい!
  • チームで生成AIをうまく使うには?

などなど、本当に些細なことからで結構ですので、お気軽にご連絡ください。

※Googleフォームへ遷移します。

エージェント型AIの分類と導入レベル

エージェント型AIの導入形態を大きく3つに整理しました。

参照:生成AI時代のDX戦略:AIエージェントが鍵を握る理由(NewsPicks)
  • ワークフロー型(マクロ型):あらかじめ定められた手順に沿って処理を進めるタイプ。RPAや定型タスクの自動化に近く、生成AIは一部タスク(例:タイトル生成や情報収集など)で補助的に活用されます。
  • ハイブリッド型:ワークフローの中に例外処理や自律的な意思決定を織り交ぜたスタイル。状況に応じてAIが判断を挿入するような使い方で、ある程度の「考える力」が求められます。
  • 完全エージェント型(自律型):目的だけを伝えれば、AIが構成やプロセスを含めて自ら判断・実行するタイプ。たとえば「このテーマで記事を書いて」と伝えるだけで、構成、情報収集、ドラフトまで完結するスタイルです。

実際のユースケースにおいては、これら3つの型が混在し、目的や業務特性によって使い分けられているのが現状です。

AIエージェント導入ニーズの変化:大手 vs ベンチャー

2024年は個別具体の業務フローのAI化の検証が進み、2025年に入り、「組織全体をAIで最適化したい」という本質的なニーズが台頭しています。

ことエージェントにおいては、特にリテラシーの高いベンチャー企業や、AIを中核に据えた事業を展開するスタートアップからのニーズが高まっていますが、大手企業はまだ様子見の段階で、導入の進捗は業種や内部文化によってバラつきがあるようです。

ただし、今後半年~1年で大手企業からの導入相談も本格化してくる可能性があると思っています。

実務での活用例:記事作成・商品開発・マーケティング支援

生成AIはすでに多くの実務で使われ始めています。たとえば、以下のような業務で導入が進んでいます。

  • 記事作成
    テーマを入力すると構成案を出し、必要な情報を収集、章立てされた記事ドラフトを自動で生成。また、ECサイトの商品説明文やタイトルの最適化などにも活用が進んでいます。
  • 商品開発の初期フェーズ支援
    ターゲット設定や競合調査、アイデア出しなど、発散型のプロセスでAIの力が有効です。
  • マーケティング業務支援
    広告コピーのバリエーション生成、キャンペーンアイデアの提案、画像生成によるLP素材の案出しなどが挙げられます。

現状のAIは内容によっては"収束"が苦手な特性がありますが、“発散”においては大きな可能性を秘めています。こうしたユースケースにAIを活用することで、業務全体の生産性が大きく向上するとみています。

ChatGPTのモデルo3・4.5の進化がもたらす実務インパクト

GPT4.5は、より整理された出力ができるように、o3は特に画像理解や水論的(推論的)な処理が非常に強化されています。

o3の注目ポイント

  • 画像解析力の向上
    写真から人の服装・年齢・職業イメージを推定し、「この人は都内のIT系ベンチャー社員」といった文脈的理解が可能に。ホワイトボードの手書き文字も高精度で読み取り、議事録作成に応用可能です。
  • 推論系機能の進化
    ユーザーの文脈や問いを深く理解し、「なぜそれが必要なのか?」を踏まえて回答を返す性能が上がってきました。
  • 広告クリエイティブ生成支援
    1つのプロンプトから複数パターンの広告画像やコピーを一気に出力し、比較・選定を行うといったワークフローが現実的に。

これにより、「コンセプト段階のアイデア出し」から「具体的なアウトプットの方向性決定」まで、AIを巻き込んだプロセス設計がより柔軟にできるようになってきています。

中間処理を担うAIと“人材構造”の再編成

「AIによる中間処理の代替が進むと、人材はどうなるのか?」という議題を耳にしたことはないでしょうか?「ジュニアクラスのメンバーが、AIによってミドルクラスのスキルセットをすぐに得られる時代が来る。人々は、AIの使い方やプロンプト設計でポテンシャル以上の価値を発揮できるようになる」つまり、今後の人材の成長は「AIを使えるかどうか」によって分岐するでしょう。

AIに頼ることでジュニアクラスが早期にキャッチアップできる一方で、ミドルクラスは“育成や補完のハブ”としてのスキルが問われるようになります。また、AIは体制作りやドラフト設計が得意です。組織運営やプロジェクトの初期設計にも積極的にAIを活用すべきでしょう。

GoogleのAI部門責任者ジェフ・ディーンは24時間365日稼働するジュニアエンジニアレベルのAIが今後「1年くらい」で登場するだろうと述べています。(25:50頃を参照)

商品開発やマーケ企画における「柔軟なエージェント思考」

商品開発やマーケティング企画の初期段階には、そもそも「明確なワークフローが存在しない」ケースも多くあります。このような領域では、自律型エージェントが力を発揮しやすいです。

たとえば、

  • 「この市場向けに新しい商品を考えたい」
  • 「LPを作るのに、まずどんな訴求軸が良いかを洗い出してほしい」

といった曖昧なオーダーを受けて、エージェントが自ら情報を検索し、ターゲットを仮定し、競合やトレンドを踏まえてコンセプトを提示する──こうした一連のプロセスが既に動き出しています。

ただし、「最後の収束=意思決定」は人間の領域。現状、AIは“広げること”が得意だが、“絞ること”は苦手です。このバランスを理解した上で役割分担することが、実務導入における鍵といえるでしょう。

中間処理の自動化で「コンサル領域」にも進出

特に興味深いのは、エージェントが“ファシリテーター”のような存在として会議やリサーチの下支えをするようになっている点です。

ホワイトボードに書いたアイデアをAIが読んでまとめてくれたり、その内容を議題ごとに分解し、スライド作成にまでつなげられたり、まさに会議室に1人、優秀な“まとめ役”がいるような感覚です。

こうした活用は、従来であれば外部のコンサルや調査会社に数十万円払って依頼していた作業を、社内で自動化し、即時性をもって行えることを意味します。実際、GPT4.5やo3の登場以降、情報収集から要点整理、議題の提案までを一貫して担える性能が現実のものとなってきています。

エージェント活用が組織文化・スキル育成に与える影響

強調したいポイントは、「AIは人材を脅かすのではなく、エンパワーする存在であるべきだ」という視点です。

ジュニアクラスの可能性を広げる

  • 新卒や20代でも、AIを使いこなすことで30代レベルのインプット力を獲得
  • 不足するスキルセットをAIが補完することで、成長スピードが加速

ミドルクラスの再定義

  • プロンプト設計やAI操作を通じて、組織内でのサポート役に転換可能
  • 「現場の経験」×「AI出力の咀嚼」という新しいスキルセットが求められる

このように、“人材の階層構造”が再編されつつあるのです。

ChatGPTの年齢別利用率の調査でも、20代・40代が多く、30代が少ないです。中間層がAI導入に乗り遅れないよう、再スキル化が急務であるといえます。

参照:日本のChatGPT利用動向(2024年9月時点)(野村総合研究所)

まとめ:AIは“戦力”から“組織基盤”へ

今回の記事を通して、AIは「業務効率化のツール」から「組織機能の一部」へと進化しつつある実情が明らかになったかと思います。

  • 自律的に考え、柔軟に提案を出すエージェント型AI
  • 画像理解やテキスト解析による議事録・構成補助
  • 人材のスキル育成・補完を前提としたエンパワメント設計
  • プロジェクト単位で履歴と知見を蓄積するプロンプト構造化

これらを組み合わせていくことが、今後の組織運営におけるAI活用の中核となるでしょう。

今日からできる簡単な活用Tips : ChatGPT「プロジェクト機能」による業務効率化

最後に、24年12月に搭載されたChatGPTの「プロジェクト機能」をご紹介します。

赤枠箇所のプロジェクト機能を活用していますか?

特徴

  • クライアントやテーマごとにチャットスレッドを分けて管理
  • それぞれのスレッドに指示(インストラクション)を設定し、継続的に同じ方針で会話可能
  • ミーティング記録や指示内容の要約を蓄積し、再活用が容易になる

たとえば「クライアントAとの議事録はこのスレッドに」「このスレッドでは毎回インフルエンサートレンドをまとめて」といった具合に、業務プロセスを情報単位で整理して効率化できます。

このプロジェクト機能を利用するだけでも、今までの手作業がかなり削減されるはずです。チャットAIの可能性が“単なる応答ツール”を超えて“情報の蓄積と活用の基盤”に進化していることを象徴した機能かと思います。

今後も、実務的な生成AIのトレンドや活用方法を2~3か月ごとに公開していく予定です。現在、EC運営においてお困りなことやもしかしてAI活用によってもっと簡略化できる業務があるのではないかとお悩みの方はお気軽にご連絡をお待ちしております。

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