なぜDtoCは失敗するのか?解決策はソーシャルコマース?
この記事の執筆者

我時朗(がじろう)
株式会社コプラス

船井総合研究所というコンサルティングファームにてネットショップの経営コンサルタントチームの責任者としてコンサル期間中に上がった売上は月商7億円以上。同社退職後、全世界40ヵ国に販売するiPhoneケースメーカーの副社長を経て、2016年から台湾のソーシャルコマースに注目し、台湾のソーシャルコマース専門のショッピングカートシステムでシェア№1のアークビズの創業者であるジャスティン氏と共同で株式会社コプラスを設立し同社CEOに就任。

ソーシャルコマース専用システム「コプラス」
https://kolplus.co.jp/

ソーシャルコマースとは?

ソーシャルコマースとは、1番端的に言うのであれば『インフルエンサー経由で売れた売り上げの総称』という言葉がふさわしいです。つまり、ライブコマース経由で売れた売上ももちろん含まれますし、Instagramにて商品を紹介して販売した売り上げもソーシャルコマースと言います。

ではなぜライブコマースという言葉が既に存在するのにその上の概念が今更、注目されているのでしょうか?その答えは、ソーシャルコマースが台湾で発達し台湾のEC流通額のなんと58%にまで成長したからです。そして、台湾ではライブコマースが主流ではないため、ソーシャルコマースという言葉が新たに生まれたという背景があります。

本日は、日本ではインフルエンサー経由の売上がECの全体流通の1%※1にも満たないと言われている中で、なぜ台湾がそんなに発展したのか?どうしてライブコマースではなく別の手法で発展したのか?ソーシャルコマースは日本にも訪れるのか?についてお話していきたいと思います。

※1:正確なエビデンスはないものの、日本に存在するソーシャルコマースの事例の規模や、インフルエンサー専門の広告代理店や芸能事務所の方々にヒアリングした結果、日本ではソーシャルコマースの流通額は現時点で500~1,000億円程度しかないという私の見解です。

DtoCの成功例をほとんど聞いたことがないのが現実

ソーシャルコマースの詳しい説明の前に、タイトルにもあるように私は日本においてDtoC※2の成功例をあまり聞いたことがありません。厳密にいうと聞いたことはあるのですがそのほとんどが、WEBマーケの得意な会社が、OEMなどにてモノ作りをしているように見せてDtoCでの成功例として注目されているだけで、元々モノづくりをしていた会社さんがDtoCにてうまく行くことは非常に稀な例だと思います。

また、そのような稀な事例を詳しく聞いていくと、WEBマーケに詳しい会社に全て丸投げで外注していたり、WEBマーケの得意なコンサルタントを導入したりしているのがほとんどです。純粋に良いモノを一生懸命作ってそれをネットを使って直接消費者の方に届けられている企業となると、一体どれだけの事例が存在するのでしょうか?

なぜ、物づくりの会社はDtoCにてうまく行かないのか?その理由に迫っていきたいと思います。

※2:DtoC=ダイレクトtoコンシューマーの略でモノづくり企業が中間流通を介さずに直接販売することにより、良いモノを安く販売できるので、成功しやすいと注目された手法。

Eコマースとソーシャルコマースの違い

上記で述べたように、モノづくりの会社がDtoCにてうまく行かない大きな理由は、Eコマースとソーシャルコマースの違いにあります。

上記の図で説明しているように、Eコマースにて成功(利益がしっかり残った状態で成長)するには、以下の3つが必要です。

①どれだけ安くアクセスを稼ぐか?
②いかに商品の魅力を伝え、買いやすいホームページを作るか?
③顧客管理の徹底にてリピート強化できるか?

※今から、上記3つの説明をしますが、Eコマースについて既に詳しい方は、『ソーシャルコマースにおいて大切なこと』まで飛ばしてお読みください。

① どれだけ安くアクセスを稼ぐか?

一言で言っても、この答えはその年のトレンドによって大きく変わります。20年前は誰も真剣にSEO対策をしていなかったのでしっかりとそのときに必要なSEO対策を取れば無料で集客ができました。しかし、次第に皆がSEO対策をしだすと、リスティング広告で業績を上げだす企業が出てきたのです。これもまた、他社があまりリスティング広告を利用していなかったので、細かい設定をしていなくても安くアクセスを集めることができました。

このリスティング広告はSEO対策よりさらに手軽にできるので、多くの企業がドンドンと広告を出すようになり、それに伴い1アクセスの獲得単価が上がっていき、次第にSEO経由の無料のアクセスを集めないとリスティング広告経由のアクセスでは利益を残しづらくなって行きました・・・・

上記の話も本日の本題ではないのでだいぶかいつまんでお話しておりますが、つまり、常にトレンドが起こってはそれにより歪みが生じて、それを解決するための新しいトレンドが起こっているので、その歴史的な流れを知ったうえで、次に来るトレンドを予測して、他社より一早く新しい集客方法を採用し、その集客方法での勝ちパターンを見つけ出した企業だけが、最も安くアクセスを稼ぐことができるのです。

これを、これまでモノ作りに全集中していた企業がすぐにできるようになるのは非常に難易度が高いのがおわかりいただけると思います。仮に、詳しい人に「今はTikTok広告が一番安くアクセス集められますよ!」と聞いたとしても、人から聞いている時点で既に遅く、その次に来る集客方法を予測して、着手しないといけないのです。

② いかに商品の魅力を伝え、買いやすいホームページを作るか?

こちらも、集客方法ほどのトレンドはないにしろ、大きなトレンドはあります。

新しい商品の伝え方で他社と差別化しても、ネット上は簡単に他社の商品ページを確認できるので直ぐに真似されて、他の商品と何が違うのかわからなくなってしまいます。

また、それより1番大きな要因は、自分で作ったモノの良さは自分ではよくわからないということです。例えば、フェラーリを自分で1から作り、自分で商品ページを作るなら商品ページの一番初めに馬力や最新の技術などのキャッチコピーを記載してしまう人が多いでしょう。ただ、私ならフェラーリを買えば、女の子にモテそう!と考えてしまうので、私のような人に向けて販売するなら、美女を助手席に乗せて颯爽と走る写真や動画が一番初めにあったほうがその続きを読みたくなります。

このような作り手と実際に購入する人とでは重要とする価値が異なり、うまく訴求できない企業が多いのではないでしょうか?こんな偉そうなことを言っている私も自分が何か作ると同じように本当の価値が見えなくなるので、いろんな人に意見を求めないと迷子になってしまいます。

③ 顧客管理の徹底にてリピート強化できるか?

Eコマースにおいて新規のお客さんを獲得するコストは年々高くなっています。その理由はコスパの良い集客方法はみんな直ぐに真似をするのと、市場自体が成長していること、新規参入の企業が後を絶たないためです。そこで新規にお金をかけて取るのも大切ですが、いかにリピートをしてもらうかが利益を残すのに非常に大切になります。

リピートの得意な企業はCRM(顧客関係管理)を行うために、商品やお客様のデータベースを作りこみ、どの商品を購入した人がどのタイミングで2回目のリピートする確率が高いのか?どういった買い物の仕方をしている人に手厚くフォローするのが一番利益が最大化されるのか?などを分析しPDCAを回しておられます。

『ソーシャルコマースにおいて大切なこととは』

上記のようにEコマースは本当に複雑なことをやり切らないと利益が残りません。

一方で、ソーシャルコマースにおいて大切なことは・・・

『自社の商品を販売してくれるインフルエンサーを見つける』

ただ、これだけなのです。

売る力のあるインフルエンサーなら商品ページが怪しく詐欺サイトのように見えたとしても『この商品ページは私も友達から紹介されたから買ったけど、怪しすぎて買うのを何回もためらったんだけど実際買ってみたら凄く良くてビックリしたから、ぜひ一度騙されたと思って買ってみて!人生変わるから!』なんて言ってドンドン売ってしまうのです。

こんなインフルエンサーを見つけさえすればあとは勝手に売れていきます。顧客管理もインフルエンサーが顧客をグリップしているのでメーカー側がする必要がありません。

つまり、卸先開拓と業務内容は一緒なのです。

インフルエンサーを1つの小売店と見立てて、卸先開拓をするだけなのです。

これなら、これまでの業務と同じなので、モノ作りを主にしている企業でもネット上での販売がうまく行くのもイメージがつくのではないでしょうか?

ソーシャルコマース先進国 台湾はEC流通額の58%がソーシャルコマース経由

台湾のEC流通額の58%がソーシャルコマースと言われておりますが、一体なぜこんなに発展したのでしょうか?ソーシャルコマースが発展するには以下の4つのステップで発展していきました。

① WEB広告の費用対効果の悪化

台湾では広告の費用対効果が5分の1に減ってしまいました。

② 新たな集客方法として、インフルエンサー活用をするが一切売れない。

そこで、常に新しい広告媒体は、利用している企業数が少ないので、費用対効果が合いやすいという傾向があります。多くの企業がインフルエンサー活用をしたのですが、10万人や100万人のフォロワー数を持っていても、全然商品を売ることはできなかったのです。

③ マイクロインフルエンサー(KOL)の登場

フォロワー数が数百人や数千人しかいないインフルエンサーには広告案件が来ないので、一部の人がどうせ広告案件が来ないならと、成果報酬で仕事を受けだしました。しかしただ紹介しても販売できないので成果報酬を受ける人は次第に自分の得意なジャンルを絞り、その専門家としての信用とファンを少しずつ獲得するようになりました。これを台湾ではKOL(Key Opinion Leader)と言います。フォロワー数は100人くらいしかいないけどその人が紹介すれば、10個や30個商品が売れるという人たちが現れたのです。

④ マイクロインフルエンサー(KOL)の成長

上記のKOLが、小手先のノウハウで一気にフォロワー数を増やすのではなく、自分を信用してくれるファンを徐々に増やし次第に数万、数十万のフォロワーを保有するようになったときに、台湾では、成果報酬で広告を受けないということは、売る自信がない証拠としてむしろ広告案件がもらえなくなっていきました。

※もちろん、芸能人や20代前半の綺麗なモデルさんなどは今でもSNSでの投稿は成果報酬ではなく案件でやられています。あくまでインフルエンサー出身の人の話です。

また、台湾では中国ほど人口が多いわけでもないので、ライブコマースだと同時接続の人数が少なく売れないという特徴があり、あまりライブコマースが流行っておりません。そういう意味では日本も中国ではなく台湾の事例に学ぶのが親和性が高いと言えます。

日本のソーシャルコマースの現状

上記で話したソーシャルコマースが発展するまでの4つのステップのうち、日本も3までは全く同じ歩みを進めていると思います。

そして、やっとKOLと言える人が少しずつ出てきたタイミングなので、日本は4つのステップの3~3.5にいると言えるのではないでしょうか?

実際に、チャンネル登録者数2,000人のユーチューバーさんが2つの投稿をするだけで、椅子を4,000万円以上販売したり、革小物の会社さんが新しいブランドを立ち上げ、一人のインフルエンサーさんに告知してもらい、一気に売れ、その姿をみた多くのインフルエンサーさんがぜひ紹介したいと集まり、2年後には売上5億円になったりと成果報酬とインフルエンサーをうまく組み合わせて大きな結果を出されています。

台湾のソーシャルコマース専用のショッピングカートシステムの特長

まず、メーカーさんが商品登録を行います。そして、KOLの方と条件面のすり合わせが完了すれば、そのKOLさん専用の通販サイトを元々商品登録したページを流用して1秒で作れるのです。

売る力のあるKOLさんにはアフィリエイトを嫌がる人が結構います。

その理由は、成果報酬だとメーカー側はリスクがないので1人でも多く取り扱ってもらったほうが良いからです。、メーカーは正直な話、誰に取り扱ってもらっても良いと考えているのです。そうすると、ブランディングをしっかりされている人ほど、誰でも取り扱える商品を取り扱いたくないという気持ちが働きます。

また、アフィリエイトで、メーカーサイトへ誘導すると他の人もその商品ページを見ることになるので値段を少し安くすることなどができません。しかし、KOL専用の通販サイトを作ってしまえば、URLを知っている人しかそこにはアクセスできないため、少々値引きやプレゼントをつけて販売などしても、他のお客さんへの影響もないのです。

さらに、アフィリエイトだと成果の可否判定をメーカー側がしないといけませんが、専用の通販サイトならそこの売上は全てそのKOLの売上になるので、確認の手間がなくなります。またアフィリエイトの成果判定は最終アクセスになるので、せっかくインフルエンサーさんが商品を説明してアクセスさせても、そのときに購入せずに、後日他のアフィリエイターさん経由でアクセスして売れたら最後のアクセスを発生させたアフィリエイターさんに成果(手柄)がつくのです。

実際にあるユーチューバーさんが椅子をアフィリエイトにて販売したときは、再生回数あたり0.1%の成約率で売れたのに対して、自分の通販サイトへ誘導した際は再生回数あたり5%の成約率で販売できました。これは50倍とあまりにも極端な事例でありコンテンツ内容の違いの影響も大きいと思いますが、一般的には実際の成約率の3倍は売れているのではないか?と言われています。

この点でもアフィリエイターさんにとっても、ソーシャルコマース専用の通販サイトで手間なく販売できるのは利点が大きいです。こういった背景から、台湾ではアフィリエイトが発展せずにソーシャルコマースが発展していきました。

また、メーカーがインフルエンサー専門の芸能事務所(広告代理店)経由でKOLと繋がる際もソーシャルコマース専用のショッピングカートなら、売上から、自動的にKOLの取り分と芸能事務所の取り分を分けてお金の支払いをしてくれるので非常に便利です。

そして、台湾にてソーシャルコマース専用のショッピングカートシステムとして、№1のシェアを誇るアークビズの創業者が日本用にカスタマイズして作られたのがコプラス(https://kolplus.co.jp/)なのです。

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