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リコマースとは?
リコマース(recommerce)とは、「re(再生・再利用)」と「commerce(商業・取引)」から成り立つ言葉で、一度消費者の手に渡った商品、いわゆる中古品を取り扱うビジネスモデルのことをいいます。環境意識の高まりや、新品では手がとどかない商品を安価に購入できることから注目を集めているのです。
リコマース市場は、リユース専門店が消費者から中古品や古着を買い取って再販するという従来型のビジネスにとどまらず、次のような取り組みも広がりを見せています。
- オンライン上で行われる個人間の商品売買
例:メルカリ、ヤフオク - ブランドによる自社製品の下取り
例:Apple、オーダースーツSADA - ブランドによる中古商品の販売
例:ZOZOTOWN、無印良品 - レンタルサービスやシェアリングエコノミー
例:Rentio
オンライン上で行われる個人間の商品売買
メルカリやラクマなどのフリマサイトや、ジモティーなどの物々交換サイト、Yahoo!オークションなどのオークションサイトが普及し、自宅からスマホ一台で個人間売買が行えるようになりました。売り手にとっては不用品が金銭に代わり、買い手にとっては新品よりも安価に手に入れられる手段として、手軽にリコマース市場に参入する個人が増加しました。
個人間の売買では金銭面でのメリットに目が行きがちですが、製品が人から人へと渡り、長く使われることで製造や処分時にかかる環境負荷の軽減も期待されます。
ブランドによる自社製品の下取り・中古商品の販売
新型モデルの販売サイクルが短いブランドでは、自社商品の下取りを行うことで、新型モデルへの買い替えを促しています。消費者はこれまで使っていた製品を下取りに出すことで、新しい製品を割引してもらえたり、ギフトカードを得られたりします。一方、ブランドは、下取りした中古品を価格を抑えて販売することで、高額商品には手を出しにくい若年層の獲得へとつなげることができます。
レンタルサービスやシェアリングエコノミー
CD/DVDや冠婚葬祭の着物など、かねてから展開されてきた一時的に利用される商品のレンタルサービスに加えて、家電やカメラ、ファッションアイテムなどを購入前に試してみることを目的としたレンタルサービスが普及してきました。
消費者はレンタルサービスやシェアリングエコノミーを活用することで、購入を検討している商品を実際に使ってみることができるだけでなく、一人暮らし用の家具や家電、ベビー用品など一定期間のみ使用したい商品を、処分や売却の手間なく使用できる使い勝手の良いサービスとなっています。
また、利用者から返却された製品はクリーニングを行った後、次の利用者に提供されるため、製品の製造や処分にかかる資源やエネルギーの消費を抑えることができる点にも注目されています。
※レンタルサービスについては、カメラのレンタルをはじめ、さまざまな商品を取り扱うモノカリ!のサイトも参考にしてみてください。
リコマースが注目されている理由
リコマースが注目される背景には次のような理由があります。
個人間やりとりが仕組み化された
個人間の中古品売買では、商品の不具合や金銭の受け渡しなどトラブルが起きやすいため慎重に行う必要があります。フリマアプリやオークションサイトがやりとりのルールを定め、仕組み化したことで手軽に個人間やりとりを行うことができるようになりました。
トレンドの移り変わりが早い
家電製品やデジタルデバイス、洋服などは1年程度で新型モデルが発売され、トレンドが移り変わっていきます。新たな機能やデザインを搭載した新型モデルは魅力が高く、買い替えを検討する消費者は少なくありません。
一方で買い替えには資金的な負担が発生します。そこで手元の製品を手放し、新型モデルの購入資金に当てることで負担を軽減することができます。個人間で売却する方法の他に、同一ブランドへ買い換えるのであれば下取りに出して割引を得ることも可能です。
環境意識の高まり
大量生産、大量消費社会がもたらす環境問題は世界的な課題となっており、環境負荷を低減させるための取り組みの一つとしてリコマースが選択されています。リコマースを選択することで、1つの製品を長く使い、製品の製造にかかる資源やエネルギー、また処分にあたって発生する廃棄物を抑えられるのです。
リコマースの取り組み事例
リコマースに取り組む企業の事例をご紹介します。
Apple

Appleでは、今使っているデバイスを下取りに出すと新しいデバイスの購入費用が割引になる「Apple Trade In」を行っています。例えばiPhoneを下取りに出すと6,000〜106,000円の割引(2024年6月時点)になります。下取り価格は機種や状態によって変わり、下取りの対象にならなかったApple製のデバイスは無料でリサイクルされます。
ZOZOTOWN

ZOZOTOWNでは、ZOZOTOWNで過去に購入したアイテムを下取りして注文時に割引価格で購入できる「買い替え割」を提供しています。下取りした商品は古着を取り扱うZOZOUSED内で販売されます。
下取りアイテムを回収する際には繰り返し使用できるリユースバッグの使用が推奨されています。リユースバッグはガムテープ等の梱包資材が不要な上、クリーニングして平均5~6回再利用できるようになっており、環境問題に配慮した取り組みと言えるでしょう。
無印良品

無印良品では、無印良品で購入した服を回収し、状態に応じてリユースやリサイクルを行っています。まだ着ることができる服は、藍色・黒などに染めなおし新たな価値を持つ商品に再生させ、古着として再販売します。そのままでは着ることができない服も、手を加えることで衣料品として再生し、廃棄物の削減、資源の循環化に取り組んでいるのです。
参考:ReMUJI
ユニクロ

ユニクロでは店舗に回収ボックスを設置し、ユニクロ・GU・PLSTで販売した商品の回収を行っています。回収された商品は、難民キャンプや被災地への緊急災害支援などに活用されます。そのまま活用できない服は細かく仕分けてリサイクルされ、新たな服の原料として使われたり、服へリサイクルできないものは、断熱材や防音材などの素材として活用されたりしています。
参考:RE.UNIQLO
ヒマラヤ

スポーツ用品を取り扱うヒマラヤでは専門知識を持つヒマラヤスタッフが商品の買い取りを行い、メンテナンスとクリーニングを行ったうえ、ヒマラヤが運営するリユース商品専門のECサイトで販売を行っています。また、商品の買い取り時、現金以外にヒマラヤの会員が利用できるポイントでの受け取りを選択することができ、現金よりも高い還元率となっているとのことです。
参考:ヒマラヤがスポーツ用品の中古買取を強化!レンタルとリユースのサービスで「リコマースビジネス」に本格参入
スノーピーク
スノーピークでは、ライフステージの変化によって使わなくなってしまったアイテムを繰り返し使うことを目指し、スノーピーク公式買取サービスを展開しています。買取対象商品はスノーピークの全商品で、売却申込後に送付される宅配キットを使って発送します。買い取ったアイテムは、メンテナンスを行った後、公式オンラインショップ上で再販売することを予定しています。
おわりに
中古品を再販売するリコマースは、企業の環境問題への取り組みと同時に、消費者が幅広い商品を手に入れやすくする選択肢の一つとして広がりを見せています。買い取った中古品を販売するだけでなく、染め直しやメンテナンスにより価値を高めてから再販する企業もあり、リコマース事業においてもブランド独自の工夫が感じられます。自社で販売した商品がその後どのような経緯を辿るのか、商品を売るだけでなく、長く価値を提供できているのか振り返る機会を設けてみても良いかもしれません。
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