【ゲストスピーカー】
小島 靖久さん
上野アメ横小島屋 三代目店主
ナッツとドライフルーツの専門店「小島屋」
【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)」
この記事の目次
BtoBの取引がモールより自社ドメインのワケ
柳田さん:前半ではモールからなぜ自社ドメインに軸足を移そうと思ったのか伺いました。後半ではBtoBについて伺っていこうかと思います。小島屋さんは元々、実店舗のほうがどちらかと言うと有名でした。その後、楽天市場に軸足を移し、元祖オムニチャネルとして相互送客していたかと思います。今ではBtoBからの引き合いも多いと伺いました。
自社ドメインで産地など商品に関するガイドコンテンツを多彩に発信し、コンテンツが多く並んでいることで、法人が問い合わせをしやすいのかと思っています。
小島さん:自社ドメインで情報を発信していくことで、モールでの販売とは違う流れを感じました。BtoBは自社ドメインをやり始めてから伸びているような感じがします。元々、領収書の発行など法人向けの対応は楽天市場でもしっかりやっていたのでバーやサロンなど小口のBtoBの取引数は増えていました。
自社ドメインの本店を立ち上げてから、モールのお店は、会社概要を見ても信頼感を与えられるような情報がしっかり盛り込まれていることが少ないということに気づいたのです。GOLD(自由にレイアウト可能な楽天市場のページ)で作られたとしても、載っているのは決済情報など決まった情報だけで、お店の歴史のような情報は載っていないんです。
自社ドメインの場合、その点はしっかりと作り込むので、信頼性が上がるんでしょうね。問い合わせはメールで来ることもありますが、意外とお店に直接電話がかかって来ることが多いんです。何トン単位とか大口のお話もありますし、大手企業から連絡が来たのをお店のスタッフから聞かされることも増えています。
柳田さん:そういう動きがあったのは何年ぐらい前からなんですか?
小島さん:きっかけは4年ほど前の2017年頃です。自社ドメインにコンテンツを作り込んで、1~2年後ぐらいから、ちらほらと増えていきました。
自社ドメインが商圏を広げ、卸先が新しい顧客を呼ぶ
柳田さん:ただ自社ドメインを立ち上げただけで反響が出るのなら、6年前から問い合わせがあるはずですが、実際はそうではなかったと。今お取引関係にあって名前が出せる企業はありますか?
小島さん:DEAN&DELUCAさんやペニンシュラホテルさんなど、他にも高級なホテルさんは卸先に多いです。
柳田さん:ホテルへの納品というと、どういう用途になるんでしょうか。
小島さん:室内にあるルームバー用のスナックフードとしてご利用いただいています。
柳田さん:オールインクルーシブだと大体食べますよね。その場で食べなくても持って帰ることもあります。
小島さん:別のホテルの方から、卸先のホテルで見たという問い合わせは多いです。おそらく自分たちの勉強のためにいろんなホテルに行っているのかもしれませんね。
他にはナッツを養蜂場さんとコラボで作ってみたら、それを聞きつけた他の養蜂所さんからアプローチがあるなど、一つの取組みが横に広がることも多いです。
柳田さん:自社ドメインに力入れてなかったときに、大手企業から問い合わせが来ることはありましたか?
小島さん:ないですね。主なBtoBの取引先というと上野近辺にあるバーやパン屋さんとか、近所のお店ばかりでした。
柳田さん:モールに出してからは、地方のバーなどに広がっていき、自社ドメインの影響で、企業からの受注が増えていったと。
小島さん:作り手さんからの引き合いも増えています。養蜂所さんもそこまで大きい会社かわからないですが、弊社のナッツを元に何か商品開発をするんです。商品開発をするときの原料として、こだわったものを主原料に使いたい気持ちから選んでいただくことは増えましたね。
柳田さん:モールだとこだわりのポイントが伝わりづらくなっているのかもしれないですね。昔から出店している方は、多くの情報を盛り込み、縦長のページをたくさん作って来ましたが、良くも悪くも外部検索に引っかかりづらいなど通用しなくなってきている部分があるとは思うんです。危機感を何となく感じ、良いタイミングで自社ドメインを運用できているのが、小島さんの嗅覚なんでしょうね。
モールでは届けづらい情報が自社ドメインで
小島さん:自社ドメインは消去法で手を付けるしかなかった状況でしたけどね。
柳田さん:それでも自社ドメインは運用が大変じゃないですか。モールの良いところは、自社ドメインと比べて少ない手間である程度売れるまでが早いことでしょう。自社ドメインでは自分たちで商品を目立たせ、自分たちで検索順位を上げていかないといけません。なので、先にモールから始めると自社ドメインでうまくやるのがなかなか難しいとは言われています。
小島さん:モールの場合は、法人の方にこの商品が良いなと思ってもらえても、どんな会社なのかとか、その商品以外に他にどんなものを売っているのかとか、横の展開を見られづらい気がするんですよね。でも自社ドメインでは、ページをきちんと作っていると、その企業の情報が見てもらいやすいんです。だからお客様はこんな商品もあるんだ、こんなサービスもあるんだとなり、とりあえず電話してみようとなりやすいのではないかなって気がしますね。
柳田さん:今では、カスタマージャーニーマップのようにお客様の流れをデザインすることが多いかと思います。かれこれ10年ぐらい前から小島さんは何となくそういうのをデザインしていたってことですよね。
小島さん:何となくですけどね。
企業とのコラボレーション
小島さん:ありがたいことに企業コラボのご依頼をいただくことがありますが、あまり面白くないと感じるコラボは忙しいときはお断りしちゃうんです。次の未来が開けそうだなって思えるコラボを選んでいます。
柳田さん:私も良いところと組みたいと思いますが、こちらからプッシュしても、無視されることも多いです。でも依頼が来れば、対等な立場でお付き合いする事ができますよね。
小島さん:そうですね。対等じゃない商売は嫌じゃないですか。BtoBは特に、力関係がすごく出てしまいます。
柳田さん:小島屋さんが対等な立場でコラボできるっていうのは、サイト内にコンテンツがいっぱいあるっていうこともそうですし、安くしなかったっていうことも良かったのかなと。価格もブランディングの一つかと思っていて、小島さんはそのさじ加減が多分非常に絶妙なんだろうと思うんです。
時代の流れに合わせて良い時期に新しいチャレンジを
小島さん:あまり考えていないので戦略的な話は何もできないですけどね。感覚です。オリジナルの変わった商品を作って、店頭だけ売ってみると変わったお客様が足を運んで来てくれるんです。
柳田さん:昔のアメ横だと、特に年末はかなり多くの方が足を運んだんじゃないですか?
小島さん:売ってあげるからというと言い方が悪いですが、そんな感覚になるぐらい、お客様はお札を持って突っ込んでくることがありましたからね。
今では、お店の方はちゃんと「お客様」って言っていますからね。アメ横でお客様が来たときに「お姉さん」とか「お母さん」とか言って接客する姿を見たことがあると思いますが、当時はジジイ、ババア扱いしていたんですよ。
柳田さん:今は、アメ横も流れが変わっちゃいましたよね。ECサイトで面白いもの発信すると、昔は店頭で売れなかったものも、最近はネット評判を見て店舗でも買われやすくなっているかと。
そういう流れが本来あって、それを勘で全てやっているのがすごいと思います。消去法だったとしても、自社ドメインに行って、BtoBの取引を増やすことができています。また、自社ドメインで出したコンテンツをきっかけに、「マツコの知らない世界」に出演されたこともありましたよね。「ドライフルーツやナッツの話を聞くなら、小島さんを呼んじゃいましょう」とは、モールをメインでやっていたらならなかったんじゃないかなって気はしました。
小島さん:小島屋って普通のナッツ屋さんだよねとなっていたかもしれないですね。
柳田さん:モールにお店を出している方が自社ドメインに行くコツみたいなものがあるのかなと思いましたが、前向きに言うならば、会社の規模が大きくないため効率的にやるべきことから、合理的に覚悟を決めてできたのが大きいのかなと。
誰もが真似できることではない話だと思います。自分の商材に自信があって、想いや伝えたいことがある方なら、同じようにしてやればまだまだチャンスあるかもしれません。
小島さん:そうですね。少なくとも自社ドメインにしっかりとしたページを作ることによって、モールとは幅と相手が変わるはずです。
柳田さん:自社ドメインは先行者利益もありますし、簡単に真似できることではない部分が多いです。それでもまずやってみるということが大事なのかなと。
小島さん:環境を変えてみようということですね。
柳田さん:今やっている店舗の状態が良いうちに、ちょっとずつ手をかける時間を移していくことが良いのではないでしょうか。駄目になってから手を付けるのはきついですからね。
小島さん:本当に気持ちがきついと思います。
柳田さん:小島さんは今まで良いときに新しいことやってこられたと思います。ぜひ皆さんに参考にしていただきたいです。
おわりに:モール単体から自社ドメインの強化を考えたくなる取り組み
記事中でも語られているように自社ドメインの強化がなければ小島屋さんはBtoBの販路の拡大や大きな認知をえられることはなかったことかと思います。また、追い込まれたゆえ自社ドメインに力を入れると売上を伸ばすための施策に傾倒しがちになってしまうため、会社として状態が良いうちにコンテンツの作成や情報発信、お客様とのコミュニケーションを醸成できることが拡大の鍵になるかもしれないですね。
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